「N1分析」を自社に取り込み、効果を出すには?カギとなる定性調査

「N1分析」というキーワードが注目されたのは2019年、P&Gやロート製薬、スマートニュースなどでマーケティングを担当した西口一希氏が著書「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」で紹介したことがきっかけでした。
BtoB、BtoC問わずさまざまな商材に展開しやすいフレームワークから顧客セグメントを可視化し、そのなかに属する顧客を徹底的に分析する手法です。
本で紹介されている事例などと同じように、自社商品でこの方法を活用して調査⇒分析を行っていきたいという方もいらっしゃると思います。

この記事では、「N1分析」について改めて振り返りつつ「どのように進めればよいか」「どのような点に注意すればよいか」など、抑えておきたいポイントも解説していきます。

著書:西口一希 氏

たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング

*『リサーチャーがおすすめする本10選(リサーチ編)』でも紹介しています。詳しくはこちら

N1分析とは

N1分析とは、商品の顧客の中から特定の1人を深く分析し、理解し、そこから生まれたアイデアを事業や施策などに反映していく顧客起点の発想をもとに考えられた分析・調査手法です。

ユーザ分析の方法としては「ペルソナ」という考え方がありますが、ペルソナが顧客群のなかの共通項を洗い出して人物を形成していくのに対し、N1分析は実在する一人の人物に焦点を当てます。ペルソナの懸念点として、集団を分析しようとすると平均化されて特徴がぼやけてしまいがちということがありますが、具体的な人物を想定するN1分析はそうしたことが起きず、関係者全体がイメージを共有しやすい、という利点があります。

重要なのは分析対象を定めるための定量調査とセグメント構築

N1分析を実施する上で重要なのは「何を目的にどのような状態の顧客を分析するか」にあります。商品に対しての顧客の状態をいくつかの状態にカテゴライズし、状況を可視化した中から商品が抱える課題の仮説を生み出し、それを検証するために特定のセグメントから1人を分析していきます。
西口氏の著書の中では、このセグメント作りのためにの2つのフレームワークが紹介されており、非常に汎用性が高いものになっています。
それぞれについて解説していきます。

5セグマップについて

まず1つ目が「5セグマップ」です。
調査対象者に対して認知・購買経験・頻度を聞く定量調査を行い、下記の5つの属性にわけていきます。

https://markezine.jp/article/detail/30846より引用

この5つの割合を洗い出すことで、商品が市場に対してどのような状況にあるかを可視化することができ、アプローチすべき=深堀りすべき対象を明確にすることができます。

また、全く同様のことを自社商品に限らず競合商材でも行うことで、競合に対する自社商品の状況(ポジショニング)を知ることができます。

例えば、自社商品が競合商品に比べて認知・未購買顧客の割合が多い場合、「なぜトライアルが起きないのか」を知る必要が出てきます。
その場合、ロイヤル顧客が回答した商品の利点や使っている理由を認知・未購買顧客に伝え、「それであれば使ってみたい」という反応が起きれば、「そもそも商品のメリットや良さが伝わっていない」ということが把握でき、メッセージ戦略の変更を検討する必要があるなど対策を考えることができます。

9セグマップについて

先述の顧客ピラミッド(5つのセグメント)に、さらに購買意向=ブランド選好という観点を追加し、分解したものが9セグマップです。このマップは、顧客ピラミッドの上位4層に「次回も同じブランドを買いたいか」という質問を行い、ブランドに対して積極的なのか消極的なのかを判定します。未認知顧客はそのまま区分します。

https://markezine.jp/article/detail/30846より引用

「次も買いたい」と思ってくれる顧客を増やし、マップを「左から右」「下から上」に遷移させるために、それぞれのセグメントの顧客にどんな施策を行えば良いかを検証することがよりわかりやすくなります。

例えば、積極一般顧客に購買意向が高まった理由や商品を使う理由を聞くことで、消極一般顧客や積極離反顧客を積極一般顧客に育てることができるかもしれません。

定量調査と定性調査の組み合わせを正しい相手に適切に、質高く行うことが重要

西口氏の著書の中で紹介されている内容は、手法としては真新しいことをしているわけではなく、「定量調査の結果より正しくセグメントされた顧客層の中から、適切に定性調査を行う」ことの重要性を解説しています。

N1分析の考え方は、多くの人を調査するということではなく、1人へのヒアリングを多く行う(深堀りをする)ということです。その人を誰にするか適切に抽出しなければなりません。それがセグマップにつながっていきます。

定量調査を用いて5セグマップ、9セグマップを作成し、顧客のセグメントをマッピング・可視化し、適正な人を抽出します。そして、深堀りすべき内容に沿った定性調査を行うことで効果的な結果を得ることができるということになるのです。

定量調査は仮説の絞り込みや効果検証には有効だが、行動変革に直結するような強いアイデアは出にくく、N1に着目することで独自性と便益を持つアイデアを生み出せるのです。大量の人数を抽出して調査を行えばその分アイデアが生まれるという考え方は間違いです。

定性調査の重要性

改めて、定性調査のメリットをまとめますと、数量化で表すことが難しい、感情、潜在意識、漠然としたイメージなどの把握することが可能という特徴を持っています。それらを把握するためには、単に調査対象者の表面的な言葉や行動をそのまま受け取るだけでは不十分です。言動の背景や潜在心理を顕在化する必要であり、複数の要因が影響し合ってインサイトを形成している場合があるため、その構造を解明することが大切となります。

また、正しい手順で定性調査を行えば”発見がある、アイデアが生まれる”ということではないのです。先述したように、心理等を引き出すためには知識や知見が必要となってくるのです。

*定性調査について詳しく知りたい方はこちら

まとめ

解説したとおり、「N1分析」という手法自体は特殊なものではなく、適切なターゲットを抽出し、その対象に行うこと、正しい知識を持つことで、有意義な結果となります。

このような分析を検討したい、相談したいなどございましたら、お気軽にご相談ください。

(digmar編集部)