リサーチャーがおすすめする本10選(リサーチ編)

このメディアを通じて、マーケティングをより身近に、もっと知ってもらいたいという思いがありますが、世の中には多くの知見や経験を持った方がたくさんいます。そこで、弊社のリサーチャーが過去、あるいは現在、どのような本を読んで知見を深めていったか、これは皆さんに読んでほしいと思った本をご紹介できればと思います。

マーケティングリサーチはあまり馴染みのない方も興味を引いた本があれば、ぜひともご一読頂き、少しでもマーケティングリサーチを身近に感じて頂き、ビジネスなどに役立てて頂ければと思います。

マーケティングリサーチに関する本

まずはマーケティングリサーチに関する本(マーケティングに関する本も含め)をご紹介します。

たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング


「たった一人の顧客を分析する」というシンプルな手法を起点として、商品・サービスの開発とマーケティング全般について明確な道筋を示してくれる本です。この本を読めば、「アイディアの発見」から、「課題の抽出」、「マーケティング戦略の構築」を通して、見込み客をロイヤル顧客へと導いてゆくために取り組むべき全体像がくっきりと見えてきます。著者自身の成功事例についても要所が活きいきと描かれており、「こうすればいいんだ!」というのがはっきりとわかる快感が何度も喚起されます。商品・サービス開発に携わるあらゆる方々が明日からのお仕事に希望を持って臨めるようになる実践的良書です。

マーケティング論理と技法

古くからリサーチ界では知られた本である。最新版が2010年で少し古いが、リサーチの手法などが広く解説されておりマーケティングリサーチの教科書のような本と思います。以前は新入社員に渡していた企業も多かったと聞いています。

主な手法や調査の計画から報告書作成がひと通り解説されているため、マーケティングリサーチを勉強したい方、大学で初めて勉強したい方には、特に参考になると思います。また実務で携わっている方でも参考書としてお手元においておくのはよいかと思います。

マーケティング入門

この本はリサーチに特化した(手法そのものを解説しているような)内容ではなく、「価格」「コミュニケーション」「ブランド」などをテーマにしたマーケティング戦略を解説した本です。日本の企業の事例を上げていることもあり、理解しやすいかと思います。

また、マーケティング領域全般書かれているので、リサーチを含めたマーケティングの実践を知りたいという方におすすめできる本です。気になる点は、少し古いことと、かなり分厚いので、持ち運んで空き時間に読むことには不向きかと思います。

デザイン思考が世界を変える

イノベーションを起こすには、「人間中心」の思考が重要であると繰り返し述べられています。消費者の行動を観察・洞察し、選択肢を増やす「発散的思考」と、複数のアイデアを照らし合わせて検証して選択肢を絞り込んでいく「収束的思考」を行き来することで、よりよいアイデアが手に入る。手法としては「観察」「ブレインストーミング」「プロトタイピング」など、調査に携わる方ならば利用したことがあるかも知れませんが、本書で書かれている「how might we(どうすれば)」を意識することで、より深い消費者理解、製品以外の周辺環境を含めたプロブレム解決策を練るうえでのヒントになると思います。

売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則

マーケティングを少しでもかじったことがある人なら知っているアル・ライズとジャックトラウトが著者です。1994年発刊でかなり古い本ではありますが、有名な本なので知っている方も多いかと思います。基本的なことが書かれているので、現在でも参考になることが多いと感じます。内容はマーティングの法則が22個あるという内容であり、一例を挙げると、知覚の法則(商品の戦いではなく、知覚の戦い)では、「コーラについて、当時味覚調査で一番まずいと判定されたクラシックコーラが一番売れていた」など事例を取り上げて書かれてます。
内容も読みやすいため、マーケティングに関わっている人(特にブランド関連の方)にはぜひ一度読んで頂きたいと思います。

課題解決!マーケティング・リサーチ入門

この本の著者は田中洋教授(中央大学大学院)といくつかのリサーチ会社の方が書かれた本です。リサーチの手法や内容から入るのではなく、マーケティングの課題を例にあげて、それに対する進め方や手法が書かれてます。私どもが現場で行っている業務内容をそのまま、取りまとめたような内容になっているため、私どももとても参考になります。リサーチに携わっている方には読んだ方が良いと思いますし、実際にリサーチを発注するメーカーやサービスの担当者もぜひ読んで頂ければと思います。細かい内容までは理解しなくても良いと思いますが、このような課題ではこのような手法があるのか、などと感じられると思います。

マーケティングリサーチの実践に関する本

ここからは、リサーチ関連の手法や考え方についての解説している本を紹介します。

ユーザビリティエンジニアリング


この本を読めば誰でもユーザビリティテストができると感じるくらいわかりやすく書かれている本です。ユーザビリティらしくできる限りわかりやすく書いたことが伝わってきます。

ユーザビリティのことをあまり馴染みのない方にとっても、単なる使いやすさということではなく『ユーザ中心設計』という概念がわかると思います。

また、ユーザビリティがテーマですが、『師匠と弟子』のインタビュー法は、デプスインタビューにも参考になると思いますので、リサーチに関わる方にはぜひとも読んで頂きたいと思います。

究極の質問


顧客満足度調査(CS調査)を行おうとした場合、NPS®(Net Promoter Score)という言葉が出てくると思います。これはベインアンドカンパニー社のフレッドライクヘルド氏が作った顧客満足度(顧客ロイヤルティを測る)の指標のことで、その内容を書いたのが本書です。顧客満足度調査の重要性や11指標の意図がわかります。

日本でも多く企業やサービスの調査結果がこの指標を採用しているのを見かけますが、よく理解せずに11指標を取り入れてしまうこともあるのではないかと思います。この指標の本質をより理解できると思いますので、サービス業など顧客満足度調査を担当する方やブランド担当されている方には読んでほしいと思います。

統計学に関する本

マーケティングリサーチには統計学が必要不可欠ですが、なかなか馴染めない方も多いかと思います。ここでは、わかりやすいものをご紹介したいと思います。

完全独習 統計学入門

統計学は知っておきたいけど何を学んだらよいかわからない方には、まずはこの本を読むとよいと思います。これからリサーチ業界に入る方、大学等でマーケティングリサーチを学ぶ方にお薦めしたい本です。入門書という本がよく見かけるが全く入門になっていない本は多くあるが、この本は本当に入門書と感じました。業務で全く数字に関わることがない人でも、この内容を理解していれば何かと役に立つと思います。標準偏差って何?平均値で捉えていいだっけ?という概念がわかります。一方、過去に統計学を学んだことがあるような人に物足りなさを感じるのでそのような人には不向きかもしれません。

購買心理を読み解く統計学

書名だけを見ると、堅苦しく感じてしまうかもしれませんが、決してそんなことはないです。具体的な事例を使って一つ一つの手法が説明され、「このような課題においてはこのような分析方法がある」ということがわかりやすく書かれています。学者ではなく大学院生が書いた文章なのでわかりやすいということもあると思います。2006年発刊で新しくはないのですが、今でもリサーチ実務上で使う因子分析やコレスポンデンス分析などメジャーな手法が多く掲載されています。(すでに理解されている方には読む必要がないかもしれません。)リサーチの分析手法を知りたい、これから統計学を学びたいなど、あまり統計に馴染みがない人にも合う本と思います。

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(digmar編集部)