定性調査とは(定量調査との違いと実施するポイント)

定性調査とは、調査対象者から得た数値化しにくい情報を活用する調査・分析手法です。具体的な手法には1対1のインタビューやグループインタビューなどがあり、調査対象者の言葉や表情、行動など、心理的、視覚的な情報を分析対象にします。定性調査は顕在化されていない消費者心理やニーズの発見につながるため、市場調査(マーケティングリサーチ)において有効な手法の1つです。この記事では、定性調査の概要、定量調査との相違点、定性調査の主な手法、定性調査を実施する手順などを紹介します。

定性調査について知っておくポイント

ここでは、定性調査の特徴、定性調査と定量調査はどう違うのか、定性調査と定量調査をどう使い分けるべきか、定性調査のメリットとデメリットについて紹介します。

定性調査とは

調査対象者(モニター)の発言内容や感情的・心理的要素、表情やしぐさ、行動に表れるビジュアル要素など質的要素を調査分析する手法が定性調査です。定性調査の主な手法として、インタビュアーとモニターが1対1で行うデプスインタビュー、複数のモニターを同時に調査するグループインタビュー、エスノグラフィ(行動観察調査)などがあります。定性調査の主な目的は、数値化や言語化が難しい消費者の潜在心理やニーズの発見です。

定量調査との違い・使い分け

定量調査とは、インターネット調査や会場調査などで観測・測定した結果を数値データとして集計し、数や割合といった数量で分析する調査・分析手法です。客観的に分析できることが定量調査の特徴であり、結論を導くための検証に適している手法といえます。それに対し、定性調査ではそれほど多くない人数の調査対象者と調査専門スタッフの主観が分析に反映されます。定性調査は、少数の調査対象者から得られる情報を深掘りすることにより、暫定的な仮説を抽出したい場合などに向く調査手法です。  

定性調査のメリット

定性調査では、前述したように数値化が難しい消費者感情や潜在意識、言語化しにくい漠然としたイメージなどの抽出が可能です。インタビューの場合、モデレーター(進行役)は調査対象者の言葉や反応を観察しながら臨機応変な質問ができるため、消費者を深く理解できます。例えば、調査対象者の回答に対して「なぜそう思うのか」と問いかけるなど、一歩踏み込んだ調査が可能です。また、観察法では調査対象者自身が自分では気づいていない潜在的な心理や行動を把握することができます。

定性調査のデメリット

サンプル数が限定される定性調査の結果は主観性が強いことに加え、調査結果の分析にも分析者の分析能力が影響します。そのため、定性調査で得た仮説について客観的な根拠を与えることが困難であり、これらから得られた結果が全体を反映しているとは言い難く、それを検証するものではないです。また、それらを導き出すためのモデレーターの資質も問われることになります。

定性調査の主な5つの手法と特徴

定性調査の手法は、古くからある基本的な手法からインターネットを活用した新しい手法まで、多岐にわたります。以下で主要な手法5つを紹介します。

デプスインタビュー(深層面接法)

デプスインタビュー(depth interview/深層面接法)とは、調査専門スタッフと調査対象者が1対1で向かい合うインタビュー手法です。深層面接法なら調査対象者が周囲の視線や意見を気にすることなく、個人的な経験や感想、意見を出してくれます。深層面接法は、消費者の本音や潜在意識を深掘りしやすい調査手法といえるでしょう。

グループインタビュー(集団面接法)

グループインタビューとは、4~10人程度の調査対象者を一堂に集め、調査専門スタッフ(モデレーター)の司会進行のもと、テーマに関する意見・感想を求める調査手法です。FGI(Focus Group Interview)とも呼ばれているこの手法の最大のメリットは、グループダイナミックスの効果が期待できるということです。座談会の形式で調査対象者同士が発言し合うことによって、アイディアが生まれたり、本人が意識していなかったことが思い出すことができるような効果が期待できます。また、調査専門スタッフがその場での共感度を観察できる点もメリットです。

>>グループインタビューについて詳細を知りたい方はこちら

エスノグラフィ(行動観察調査)

エスノグラフィ(行動観察調査)とは、製品やサービスを実際に使用している消費者の様子を、調査スタッフが詳細に観察する手法です。現場でリアルタイムの観察を行う手法の他、近年ではモバイル端末を活用したモバイルエスノグラフィも一般化しています。行動観察調査に似た調査手法には、調査スタッフが調査対象者の自宅を訪問し、生活の実態や製品を使用している様子を観察する「訪問観察調査(ホームビジット)」もあります。

>>エスノグラフィについて詳細を知りたい方はこちら

MROC(エムロック)

MROC(エムロック/Marketing Research Online Communities)とは、インターネット上に設けたコミュニティで登録者にテーマに沿った回答や意見交換をしてもらい、その結果を集計・分析する調査手法です。SNSに似ていますが、登録者のみが発言・閲覧できるクローズドなコミュニティである点が異なります。生活者の素朴なニーズ・悩みや製品への率直な疑問・感想といったインサイトを発見しやすいこともMROCの特徴です。

オンラインインタビュー

オンラインインタビューとは、デプスインタビューやグループインタビューを、カメラとマイクの付いたパソコンやスマートフォンなどのICT端末を使ってオンラインで行う調査手法です。主に、ZoomやGoogle Meet、Teamsなど、ビデオ通話システムを活用します。遠隔地の調査対象者もリクルーティングが可能である他、会場確保や移動の必要がないので調査側・調査対象者側の双方に負担が少ない手法であり、コロナ禍においても安全に実施できるとして注目されています。

>>オンラインインタビューについて詳細を知りたい方はこちら

定性調査を実施する手順

定性調査を実施する手順として、「調査内容の整理」、「対象者のリクルート」、「実施と集計分析」を、順を追って解説します。

調査内容を整理する

あらかじめ、調査を実施する目的を明確にする必要があります。例えば、「製品の受容性を調べたい」、「他社ブランドと選好度を比較したい」などです。それから、調査目的にもとづいて必要な調査項目を作成し絞り込むなど、調査内容を整理します。

対象者をリクルートする

調査テーマに沿って、年齢・性別・居住地など、適切な属性を持つ調査対象者を絞り込みます。調査対象者を募集する主な方法は、インターネットモニターサイトから募集を行ったり、調査会社の調査員経由で参加者(機縁法)を探す方法があります。

調査の実施

調査を実行、つまり実査を行います。グループインタビューなど専用会場を借りる場合は、その会場の予約などの事前準備を行っておきます。インタビュー参加者が、日程を忘れていたり、時間や場所を間違わないように、事前連絡(リマインド)を行うことも大切です。

報告書の作成

調査が終了したら集計し、分析を行います。調査で確認・発見できた事項や発言内容から抽出したキーワードなどをまとめることから、結論や提言を盛り込んでレポーティング(報告)を行います。

定性調査の実施で成功するポイント

定性調査を実施する際のポイントとして、「対象の深掘り」、「定量調査との組み合わせ」、「専門家の知見を活用」の3つを紹介します。

内容の深掘り

定性調査では、調査対象者の表面的な言葉や行動をそのまま受け取るだけでは不十分であり、言動の背景や潜在心理を顕在化する必要があります。調査対象者の発言に対し、「なぜそう思うのか?」と深掘りする質問を繰り返し、調査対象者自身も意識していない要因を引き出すようにしましょう。複数の要因が影響し合ってインサイトを形成している場合があるため、その構造を解明することが大切です。また、調査スタッフ・分析者が多様な価値観を持つと、調査対象者の言動から優れた発見をしやすくなるでしょう。インタビュー者のスキルも問われることになるので、経験豊富な人やその調査内容に熟知しているかなどを見極めて選定することも重要です。

他の調査手法と組み合わせる

定性調査を行うときは、デプスインタビューやグループインタビューなど、課題やテーマを見極めて選定することが大切です。加えて、インターネット調査や訪問調査、会場調査(CLT)など、定量的な調査手法との組み合わせも効果的です。定量調査との組み合わせによって定性調査の「客観的な根拠を数字で示せない」という弱点を補足でき、ビジネス上の意思決定に応用しやすい結論を導きやすくなります。

専門家の知見を活用する

定性調査には、さまざまな調査・分析手法があり、それぞれに異なる知識・テクニックが要求されます。例えば、デプスインタビューのモデレーターには、調査対象者をリラックスさせ、自然に本音を引き出せる質問テクニックが必要です。また、手法を選ぶ際は、レパートリーグリッド法、ブルズアイ、コラージュ、TAT法、プロトコル分析法、エクスペリエンスジャーニー、エモーショナルカーブなど、数あるインタビュー手法の中から、テーマや目的に応じて適切なものを用いる必要があります。定性調査を自前で行うとすれば、上記のような人的リソースと資金的なリソースの確保も欠かせません。調査の専門会社を利用すれば、こういった問題がスピーディーに解決できるだけでなく、有用なアウトプットが得られます。またインタビュー手法として、レパートリーグリッド法、ブルズアイ、コラージュ、TAT法、プロトコル分析法、エクスペリエンスジャーニー、エモーショナルカーブなどテーマ・目的に応じてそれらの手法を用います。

まとめ

定性調査とは数値化・言語化しにくい消費者の言葉や行動を深掘りし、潜在的なニーズなどを発見するための調査手法です。定性調査のポイントには、調査目的の明確化や定量調査との組み合わせ、消費者の潜在的な本心を引き出すインタビュースキル、多様な価値観による調査結果の分析などがあります。調査専門会社を活用すれば人的・資金的リソースの不足を解決でき、有意義なアウトプットを獲得しやすいです。
定性調査を検討されている方、実例を知りたいという方などがいらっしゃいましたら、ぜひともお気軽にお問い合わせください。

(digmar 編集部)