オンラインインタビュー(オンライン定性調査)の特徴やメリット

オンラインインタビューとは、オンラインで実施する定性調査の手法の1つです。対面調査が難しい状況下でも行えることから、注目を集めています。加えてオンラインインタビューをはじめとしたオンライン定性調査には、地理的な制約がない、スピーディに実施できる、コストを削減できるなどさまざまなメリットがあります。本記事では、オンラインインタビュー(オンライン定性調査)の概要やメリット、主な手法、実施手順・流れや成功ポイントを紹介します。

目次

オンラインインタビュー(オンライン定性調査)とは

まずはオンラインインタビューをはじめとしたオンライン定性調査の特徴や一般的な定性調査との違い、オンライン定性調査が今注目されている背景について解説します。

オンラインインタビューの特徴

オンラインインタビューとは、オンライン上で調査対象者(モニター)にインタビューを行う調査手法です。パソコンやスマートフォン、タブレットといったICT端末を使用して行います。インターネットにつながった端末があればどこでも実施することができ、自宅にいる対象者にインタビューすることも可能です。つまり、場所の制約を受けることなくインタビューなどの定性調査が実施できるのです。

一般的な定性調査とオンラインとの違い

オンラインインタビューはオンライン定性調査の手法の1つです。オンライン定性調査にはさまざまな種類があります。

オンライン定性調査も一般的な定性調査と同様に、言葉、心理、ビジュアルなどを用いた調査・分析手法であることに変わりはありません。違うのは、まさに「オンライン」(インターネット)を介して調査を行うことです。通常対面で行うデプスインタビューや家庭訪問調査(ホームビジット)を、パソコンなどを活用してオンラインで実現します。

オンラインが注目される背景

オンライン定性調査が注目される大きな背景としては、IT技術の発達が挙げられます。従来はオンライン定性調査に動画・音声を活用するには、ハードやネットワーク等の環境が整備されておらず、実施が難しい状況でした。しかし、近年は機器の性能が飛躍的に進化し、ネットワーク技術も発達する中、ZoomやTeamsに代表されるようなオンライン用のツールも普及したことでオンラインインタビューなどを実施する環境が整備されたのです。

そして、さらにオンライン定性調査が急速に拡大するようになったのは、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大です。コロナ禍で、対面調査や調査対象者を一箇所に集める会場調査(会場テスト、CLT)の実施が難しくなりました。感染リスクを抑えて市場調査(マーケティングリサーチ)を実施する方法として、対面を避けたオンライン定性調査は高い関心を集めています。

オンラインインタビューのメリット

オンラインインタビューには、オンラインで行うからこその、さまざまなメリットがあります。そのメリットをまとめました。

場所の制約を受けない

前段でも少し触れましたが、インターネットに接続された環境があればどこでも実施できるため、場所の制約を受けません。会場までの移動時間や費用を考慮する必要がなく、幅広い居住エリアの対象者にインタビューを行えます。対面では探し出せない条件の対象者も、オンラインなら探し出せる可能性が高まります。

日時の調整が容易

オンラインなので移動する必要がないため、調査対象者は日時を合わせやすくなります。また、会場スケジュールを確保する必要もなく、調査スタッフの日時調整も容易です。夜間や早朝を含めるなど、インタビュー可能な時間帯を比較的柔軟に設定することもできます。

信頼度の高い情報を得やすい

オンラインインタビューの場合、調査対象者は自宅でインタビューに応じることが多いです。リラックスできる環境では、本音を引き出しやすくなります。また、ビデオ通話を利用することで、部屋の雰囲気など調査対象者の生活の様子や、商品やサービスのリアルな利用実態まで観察することができます。

コストが削減できる

会場の予約・設営、調査対象者の移動費、調査スタッフの労力・人件費など、さまざまな時間的・経済的コストを削減できます。1度の調査にかかるコストを抑えられるため、より多くの調査を行うことも可能です。

*料金について、対象者の条件や人数、実施時間などにより変わってきます。もし料金を知りたい場合はお気軽にお問い合わせください。

記録を残すのが容易になる

市場調査において効果的な分析を行うためには、いかに調査の記録を残すかも大切なポイントです。その点オンラインインタビューの場合、調査の記録を映像・音声データとして容易に残すことができます。

特にスマホ・タブレットなどのモバイル端末を使って調査対象者の行動実態を観察するモバイルエスノグラフィの場合は、写真、音声、テキストなどあらゆる形式で細かく記録することができます。

短期間での実施が可能

オンラインインタビューは、通常の定性調査に比べて、実査(調査の実施)、集計までの期間が短く済むというメリットもあります。タイミングを逃すことなく、迅速に実施できます。

オンラインインタビューのデメリット(注意点)

ITリテラシーの問題(ツールの利用)

オンラインで実施する場合は、ZoomやTeamsなどのオンライン用のツールを使って実施します。実施主催側(企業側)と被験者をオンラインでつなぐ必要があり、被験者側は被験者自身が設定をしなければなりません。事前に説明書を作るのがよいでしょう。また、不慣れ人やリテラシーが低い人に対しては、レクチャーをしなければならない場合も出てきます。
また、画面の設定やPC、カメラなどの環境により、被験者が見えにくい(表情が見えない)場合もあるので、十分注意が必要です。実施する前にテストを行う必要があります。 使い方がわからない、接続がうまく行かない場合などが発生した場合は、メールや電話でフォローします。

グループダイナミックスの効果が出ないリスク

オンラインの場合、一人が意見を言うと他の人はその発言者の話が終わるまで待っている状況になるため、対面でのグループインタビューよりも被験者同士の会話が続きにくくなる場合があります。インタビュアーが状況を汲み取りながら、進行する必要があります。

オンライン定性調査の主な4つの手法と特徴

オンラインインタビューをはじめとした、オンラインで行う主な定性調査の手法を4つ紹介します。

オンラインインタビュー(オンラインデプスインタビュー)

オンラインデプスインタビューとは、調査スタッフと調査対象者のみの1対1形式のデプスインタビュー(深層面接法)を、パソコンやタブレット端末などのビデオ通話機能で行う手法です。本音を探りやすく、センシティブな内容を扱う際にも有効です。

オンライングループインタビュー

オンライングループインタビューとは、1つの会場に調査対象者を何名か集めて司会者(モデレーター)のもとテーマについての意見・感想を求めるグループインタビュー(集団面接法)をオンラインで行う手法です。対象者の集合拠点と調査スタッフの2カ所をつなぐ場合と、ビデオ会議のようにそれぞれの端末をつなぐ場合があります。

対面では4~6名で実施することが多いですが、オンラインは一度に発言がしにくいため、人数を抑えるケースが多いです。(弊社事例はこちら)

オンライン掲示板・チャット

オンライン掲示板やオンラインチャットなどのコミュニティを通じて、参加者同士で意見を交わしてもらったり、アンケートに回答してもらったりする調査手法です。特に、調査を目的とした専用のクローズドなコミュニティを用意する手法をMROCと呼びます。

エスノグラフィ(モバイルエスノグラフィ)

オンラインエスノグラフィ(モバイルエスノグラフィ)とは、モバイル端末を通して、調査対象者の生活実態をオンラインで観察する調査手法です。例えばオンラインダイアリーにもとづく調査や、対象者にライブストリーミングで自宅での生活実態を紹介してもらうオンライン家庭訪問調査などがあります。(詳細はこちら

オンラインインタビューを実施する手順・流れ

オンラインインタビューを実施する4つのステップ(全体の流れ)を解説します。

オンラインインタビューの企画設定

現状の課題から調査の目的を明確化し、調査すべき内容を整理します。

オンラインインタビューの調査票(スクリーナー)の作成

次は、調査票(スクリーナー)の作成です。オンラインインタビューを実施する際は、調査の候補者の中から、条件に合致した調査対象者を抽出するために予備的なアンケート(スクリーニング調査)を実施する必要があります。そこで、アンケートで質問する項目をまとめたものが調査票です。インターネットで募集することが多く、調査票を作成した後にアンケート画面を作成してから調査対象者を募集します。

オンラインインタビューのリクルーティング(調査対象者の募集・選定)

企画テーマに合う調査対象者を募集します。自社で調査を行う場合は顧客リストを活用する方法が主になりますが、調査を調査会社等に相談して行う場合には、調査会社等が保有するモニターが活用でき、難易度の高い(出現率の低い)調査対象者を探すこともできます。

インタビュー参加に対する謝礼は、デジタルのギフト券(Amazonギフトなど)を活用すると便利です。

オンラインインタビューの実施

調査対象者と日時を調整し、実査を行います。最近では、ZoomやGoogle Meetや やTeamsといったビデオ通話ツールを活用することが一般的です。(実施前にはできる限りテストを実施した方が良いです。)

実査の完了後は、調査対象者の発言内容をまとめ、レポーティングを行います。また、オブザーブやデブリーフィングもオンラインで行うことができるので、調査依頼者にとっても場所の制約がないのがメリットとなります。

また、オンラインでも対面の時と同様、同意書(個人情報の取り扱い、 撮影し録画(録音)場合にはその旨、第三者提供についてなど)を取ることは必要です。

*インタビューのやり方やコツを知りたい方はこちらをご覧ください。

オンラインインタビューの実施で成功するポイント

オンラインインタビューには、通常の定性調査とは違う条件も加わります。そのため、オンラインインタビューの実施を成功に導くポイントを押さえておくことはとても重要です。ここでは3つのポイントを紹介します。

オンラインインタビューの最適なツール・手法を選ぶ

オンライン定性調査には、先述の通りさまざまな手法があります。対象者の条件やサンプルサイズを含めて、テーマに合う最適な手法を選ぶことが重要です。

また、何のツールを使うのか、端末やシステムを選定する必要があります。ビデオ通話ツールを選ぶ場合、一般的に普及しており操作が簡単なツールを選ぶ方が調査がスムーズです。インタビューに参加する人に対して、あらかじめどのようなツールなら使えるかヒアリングしておくといった配慮も欠かせません。

オンラインインタビューの課題に対処する

事前に通信環境や設備について念入りに動作チェックを行います。通信環境や機器の状態が悪ければ、音声や映像が途切れたり、通話が中断したりしてしまうのはオンラインならではの弱点です。インタビュー中にこういったトラブルがあると、そちらに気が取られてしまい本来の意見が聞き出せなかったり、復旧に時間を要した場合は、その間の意見を聞くことができないなどの問題が発生したりします。

そこで、映像や音声が問題なく作動するかを実施前に必ずテストをしてください。インタビューに参加者とテストすることも不可欠です。 また、調査テーマによって、同一条件でインタビューしたいといった場合、対象者の保有デバイスをリクル-ト条件に入れたり、調査会社で同じデバイスを準備したりして実施することもできます。

できる限り専門家に相談する

調査対象者の募集や手法選択、実査などあらゆる局面で、専門スタッフの経験・知見が役立ちます。オンラインインタビューの可能性を引き出し、調査を成功に導くためには、調査会社に相談することをおすすめいたします。

まとめ

オンラインインタビューをはじめとするオンライン定性調査は、対面型調査の代替手段として利用されています。コロナ禍のような状況では対面調査が難しいですが、オンラインであればマスクを着用せずにインタビューできる点が利点です。オンラインの良さと対面の良さを比較し、調査課題に合わせた選択をおすすめします。

弊社はオンラインインタビューにも対応しており、経験豊富な調査スタッフが的確に意見を引き出します。オンラインの調査を実施する際は、ぜひ弊社までご相談ください。

(digmar編集部)