アンケート調査の種類・方法・作り方を徹底解説!実例も交えて紹介

アンケート調査

近年、Googleフォームやその他アンケートツールなどにより、平易な場合には調査会社に依頼せずに自社でアンケートを実施することもできるようになりました。そのため、アンケート調査そのものを手軽で容易にできると思っている方もいるかもしれません。

しかし、アンケート調査は非常に奥深いものです。進め方次第では意図した回答が得られなかったり、結果を分析しても効果的な施策につながらなかったりする可能性があります。

そこでこの記事では、アンケート調査の種類や実施手順、調査票の作り方などを解説します。アンケート調査を効果的に行いたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

アンケート調査とは

アンケート調査とは、あらかじめ設定した質問に対して、対象者から回答を得る調査手法です。

アンケート調査の特徴は、同一の質問に対して大勢から回答を得ることによって、回答結果を量的に分析できる点です。商品・サービスを使用した感想や自社に対するブランドイメージなど、母数が多く幅広い属性の回答者から情報を得ることで、より正確な実態を把握しやすくなります。

アンケート調査の手法

アンケート調査の手法は、大きく「定量調査」と「定性調査」の2つに分類できます。それぞれ得られる効果が異なるため、調査したい内容に応じて適切に選択することが重要です。

日本においては、「アンケート調査」というと一般的に定量調査のことを指すことが多いです。以降、本内容においても、定量調査を中心に進めていきます。

定量調査

定量調査とは、収集したデータを数値化することを前提とした調査です。例えば「この◯◯(商品)を使ったことがありますか?」という質問に対し「はい」「いいえ」で答えられるアンケート調査があるとしましょう。このとき、調査結果から「はいと答えたのは◯◯%」「いいえと答えたのは▲▲%」と、結果が明確に数値化されます。

数値化することで、自社の主観を排除した客観的な答えを得ることが可能です。答えが明確に数字になって表れるので、施策を比較したり原因を特定したりと、決定的に答えを出したいケースに適しています。

>>関連記事|定量調査とは(定性調査との違いと手順・ポイント)

定性調査

定性調査とは、数値化できないデータを収集する調査です。文章や言葉などが調査結果として表れます。例えば、次のようなデータの収集は、定性調査に該当します。

  • 顧客の性格や趣味、嗜好
  • 顧客の日常生活
  • 商品を利用した感想
  • 商品の改善希望点
  • 企業に対するブランドイメージ など

定性調査は、数値化が難しい消費者感情や潜在意識などを明らかにすることに長けています。また、定量調査よりも自由に回答を設定できるため「なぜ?」「どのように?」といった理由や動向を掘り下げて分析したい場合に適しています。

>>関連記事|定性調査とは(定量調査との違いと実施するポイント)

アンケート調査の主な種類

アンケート調査の代表的な種類を6つ紹介します。

顧客満足度調査(CS調査)

顧客満足度調査とは、「自社の商品・サービスの購入者(利用者)がどのくらい満足/不満足しているか」について、任意の度合いを用いてアンケート調査を実施し、顧客の評価を可視化・分析する調査です。顧客が商品購入前の期待に対し、実際はどうだったか、またどれだけ応えられているかを測る指標こそが顧客満足度です。

顧客満足度調査は、定期的に調査することで効果を発揮します。定点調査によって、顧客のニーズを把握したり、自社商品のサービス向上・低下を計測したりすることが可能です。

>>関連記事|顧客満足度調査(CS調査)とは?

使用実態調査

使用実態調査とは、商品の使用状況や顧客の意識を把握する調査です。

また、使用実態調査は「どのような顧客が自社製品を利用しているか」が明らかになるので、課題の発見につながり、商品改良や経営課題の特定にも効果的です。

使用実態調査を実施するタイミングは、市場参入前と後の2段階です。市場参入前には実際に商品のニーズがあるのかを調査し、市場参入後は定点的に顧客が自社製品をどのように使用しているかを把握するために行います。

コンセプト調査

コンセプト調査とは、商品のコンセプトが顧客にどれほど受け入れられているかを検証する調査です。商品開発の段階で行われる調査で、顧客の反応を見ながら商品のニーズを把握し、商品の開発や改善のための調査手法です。

コンセプト調査は「この商品なら市場に受け入れられるだろう」という仮説を構築し、それを実際に検証するフェーズで実施します。「自社の認識」と「市場のニーズ」をすり合わせてマッチさせることがコンセプト調査であり、商品に対する受容性を検証できます。

広告効果測定調査

広告効果測定調査とは、広告の目的がどれほど達成されたかを測る調査です。広告配信後に行われる調査で、広告の浸透状況を追跡し、どれほど効果を与えているか、費用対効果がどうだったかを検証する調査手法となっています。

広告効果測定調査は、出稿前と出稿後の数値を比較するのがポイントです。広告の効果を正確に把握することで、広告がその商品の宣伝に適した媒体かを分析したり、広告がより購入に直結するように次回の施策の改善に役立てられます。

ブランド調査

ブランド調査とは、ブランドの認知度やイメージなどを把握する調査です。顧客が自社のブランドに対してどのようなイメージを抱いており、それが顧客行動にどのように影響を与えているかを分析します。

ブランド調査によって「顧客が自社の商品を購入するときに何を重視しているのか」を把握でき、商品設計や経営課題を改善するのに役立ちます。また、定点的にブランド調査を実施することで、自社のポジションの変化を把握できたり、競合への優位性を分析できたりするのがメリットです。

アンケート調査の手順

ここでは、アンケート調査の進め方を4つの手順に分類して紹介します。

①計画の立案

アンケート調査は、まず計画立案から始めましょう。計画の内容については、主に次のような項目について決めます。

  • アンケートを実施する目的
  • アンケート実施方法
  • 実施スケジュール
  • 調査対象者の選定
  • 発送数や回答数
  • 謝礼の有無、金額

アンケート調査の計画を立てることで、どのような結果を得たいのかを具体的にイメージできます。また、調査課題の解決に適した調査手法や、質問内容の方向性の決定にもつながります。そのため計画立案は、アンケート調査において重要な手順となります。

②調査票を作成する

計画を立案したら「調査票」を作成します。質問の仕方や選択肢の作り方によって結果が大きく左右されるため、設計には細心の注意を払うことが必要です。

調査票の作成で重要なポイントは、後ほど詳しく解説します。

③アンケートを実施する

②で設計した調査票をもとに、アンケートを実施します。アンケートの実施には、次のような方法があります。

  • インターネット調査
  • 郵送調査
  • 電話調査

郵送調査を自社で行う場合、1,000通単位のアンケートを印刷すれば数日を要しますし、電話調査も日数を要します。計画通りに進めるためにある程度余裕を持った計画が必要です。

④回収したアンケートを分析する

回収したアンケートは、自社が得たい結果に基づいて分析します。インターネット調査の場合はデータで抽出されるため、人為的に結果を入力する作業はありません。そのため、矛盾のある回答や不適当な回答を排除するのが主な作業となります。

郵送調査や電話調査の場合、得られたデータを入力する作業があります。1人で作業するとミスを見逃す可能性があるため、極力2人以上でダブルチェックをすることが重要です。

得られた結果は可視化できるように、グラフ化します。また、得られたデータから多変量解析などを用いることにより、自社製品の販売傾向や顧客の心理などを明らかにできます。

>>関連記事|多変量解析とは?マーケティングにおける目的や主な分析手法を解説!

「調査票」の作り方

調査票を作るうえで、特に押さえておきたいポイントを6つ紹介します。

アンケート調査の目的と課題を整理する

アンケート調査の結果を価値あるものにするためには、アンケートの調査目的と、調査課題を整理することが重要となります。調査目的とは、そのアンケートを「何のために」実施するのか、アンケートで得た結果をどのように活用するのか、といった実施目的のことです。

また、調査課題とは、調査目的の達成のために「どのような情報を得る必要があるのか」といった「アンケートによって明らかにすべき事項」のことです。

調査目的と調査課題を整理しないままアンケートを行ってしまうと、得られたアンケート結果をどのように分析したらいいかがわからず、何も知見が得られないということに陥ってしまう可能性があるため、この2点については調査票の作成に取り掛かる前に必ず明確に整理をしておく必要があります。

仮説を構築する

アンケート調査は、仮説を検証するために行うものです。ただ漠然と「アンケートを実施すれば何かしらの発見があるだろう」と考えて実施するのではなく、社内で立てた仮説をもとにして設問を作成します。

その仮説を構築するにはまず、現状の課題を明確化させましょう。例えばホテルの口コミサイトにおいて、サービスや立地、食事などの顧客満足度は高いものの、設備に対しての評価が芳しくなかったとします。このケースでは、「ホテル内の設備改善」が課題となります。

その課題から「ベッドが固すぎると感じている人もいるのでは?」という仮説を構築し、設問に落とし込みます。実際にアンケート調査の回答から「ベッドが固く寝心地がわるいと感じている人がいる」という回答を得られれば、マットレスを現状より柔らかめのものに変更するなどの改善策が考えられます。

適切な質問の順番にする

アンケート調査では、質問の順序に配慮することも重要です。設問の順序は、アンケートの回答結果に大きく影響を与えるため、適切に順番を組み立てていくことが重要です。

設問の順序は、次のように「回答のしやすさ」や「バイアス」「質問の重要度」などを考慮して決めていきます。

  • 回答のしやすさ…「時系列で聴取」「認知→経験→現在」「事実→意識」など、回答者が回答しやすい順番で設計する
  • バイアス…前の情報が強く作用する「アンカリング」や、過去の記憶が曖昧になる「テレスコーピング」などを考慮して、設問順を設計する
  • 質問の重要度…重要な質問ほど、なるべく前のほうで聞く

このような点を考慮して、回答結果に意図しない影響が出てしまわないように、細心の注意を払って質問の順序を設計することが必要です。

質問タイプ(回答形式)を使い分ける

調査票では、質問の内容や目的に応じて適切な回答形式を設定しなければいけません。アンケート調査で用いられる主な回答形式は、次の通りです。

  • 単一回答(SA)…1つの質問に対して回答を1つだけ選択してもらう回答形式。回答が1つに絞られるような質問で用いる。
  • 複数回答(MA)…1つの質問に対してあてはまるものを複数選択してもらう回答形式。あてはまるものを全て選択してもらう場合が多いが、回答個数を制限して選択してもらう場合もある。
  • 自由記入欄(OA・FA)…回答を文章や単語で自由に記述してもらう回答形式。回答者の意見や感想を広く募りたいときに用いる。

想定した分析が可能な回答形式になっているか、単一回答なのに答えを1つに絞ることができない質問内容になっていないか、など実際の回答をイメージして適切な回答形式を使い分ける必要があります。

設問数はなるべく少なめ・質問内容はシンプルに

調査票の設問数はできるだけ簡潔にした方がよいです。設問数が多くなりすぎると、回答者の疲弊を招き、回答の精度が落ちてしまいかねません。

まずは、目標とする設問数を設定し、聞きたい質問を一覧化します。そうすると、重複した質問や、優先度の低いものが表面化され、目標とする設問数まで絞り込みやすくなります。

また、質問内容は一度読んだだけですぐにわかるよう、シンプルに作ることが重要です。例えば、「この紅茶はおいしくて、香りがよかったですか?」という質問文だと、1つの文章に「味」と「香り」についての質問が2つ入っています。

これはいわゆる「ダブルバーレル」と呼ばれる質問形式で、2つの事柄のどちらのことを指しているのかわからず、回答者の混乱を招いてしまいます。それにより、味に対しての回答しか得られないなど、調査結果の信憑性が欠けてしまうのです。アンケート調査の質問内容は、できるだけシンプルに作ることが重要です。

解釈がぶれない質問を設定する

解釈がぶれる質問内容は、回答者を迷わせる要因となります。回答者によって解釈が異ならないよう、質問文は具体的に作成する必要があります。

例えば「最近、海外旅行に行きましたか?」という設問の「最近」は、回答者によっては「半年以内」と考える方もいれば「2~3年以内」と解釈する回答者もいるかもしれません。

そのため、回答者全員が同じ解釈ができるような質問を設計することが重要です。先ほどの質問例であれば、「過去6ヶ月以内に海外旅行へ行きましたか?」というように、具体的な範囲(期間)を用いるなどして、誰が見ても解釈が統一されるように質問文を作る必要があります。

アンケート調査の質問例

最後に、アンケート調査の質問例を紹介します。自社でアンケート調査を実施する際の参考にしてみてください。

顧客満足度

顧客満足度調査は、調査を通じて得られる指標を明確にする必要があります。また、全体の顧客満足度と同時に、項目別の細かな満足度の調査も意識することがポイントです。

【質問例】
Q.あなたは◯◯(商品)について、どの程度満足していますか?次の中から選んでください。
Q.あなたは◯◯(商品)の味について、どの程度満足していますか?次の中から選んでください。
A.満足/やや満足/普通/やや不満/不満

新商品・サービスのニーズ

新商品・サービスを開発する際、そのニーズについて調査するため、アンケート調査を用いることがあります。新商品・サービスに対するニーズは幅広くあることが予想されるため、ニーズに対する仮説を立て、予想される回答を網羅した選択肢を作ることが重要です。

Q.自社の新しい商品・サービスに、何を求めますか?
A.高い品質/手頃な価格/使いやすさ/オンラインでの利用のしやすさ/カスタマーサービスの充実さ/環境への優しさ/ユニークさ

Q.新しい商品・サービスの価格帯について、どの程度までなら納得できると考えますか?
A.1,000円以下/1,000~3,000円/3,000円~5,000円/5,000~10,000円/10,000円以上

イベント来場者

イベント来場者に対してアンケートを実施する目的は、次回以降のイベント満足度をより向上させるためです。主催者側が満足できるイベントであっても、目に見えない場所で来場者が不満を感じているケースもあります。

イベント来場者には感想や理由といったように質問する内容が多いため、複数回答が使いやすいです。

Q.あなたがこのイベントを知ったきっかけは何ですか?次の中から選んでください(複数回答)。
Q.このイベントで満足したコンテンツは何ですか?次の中から選んでください(複数回答)。

まとめ:アンケート調査は事前の設計が重要

アンケート調査は、企業が市場や顧客を知るうえで、非常に効果的な調査です。特に調査票をうまく作成できれば、自社が求める形で理想の回答を得られます。

実際にアンケート調査を行う前に、1度社内の人に回答してもらうなどして、設問数や質問内容、回答のしやすさについてフィードバックをもらうとよいです。アンケート調査は、回答者にとって最後まで気持ちよく回答できるのが理想の形です。

一方で、アンケート調査の質問設計や分析は専門性を要することが多く、自社で実施すると精度の高い回答を得られないケースもよくあります。本メディアを運営する株式会社マーケティング・リサーチ・サービスは、インターネット調査や会場調査、パーソナルインタビューなどを得意とするリサーチ会社です。

経験豊富なリサーチャーが、お客様の望む形でアンケートを実施・分析しますので、精度の高いアンケート調査を実施したいと考えている企業様は、ぜひ弊社までご相談ください。

(digmar編集部)