効果的なPRにつながる調査リリースとは?
~3つの事例と調査のプロから見たリサーチPRの落とし穴を紹介~
企業のPRにとって重要な役割を果たすプレスリリース。さまざまなやり方がある中で、有効な手段として多くの企業に用いられているのが、自社調査の結果を掲載し、自社プロダクトの訴求に繋げるいわゆる「リサーチPR(調査リリース)」です。
このリサーチPRは市場やメディアのニーズを捉え、注目を集めることができれば非常に費用対効果の高い施策となりますが、その反面、自社ブランド毀損につながるリスクもある施策です。
今回はリサーチPRのメリットや事例、注意すべきポイントを、リサーチのプロの視点からご紹介します。
目次
リサーチPRとは?
「リサーチPR」(調査PR)とは、”マーケティングリサーチ”で得られた結果を元に、プレスリリースするPR手法です。
自社サービスや商品などをテーマとしてアンケートなどのリサーチを行い、その調査結果をプレスリリースすることで、多くのメディアに取り上げられ、認知度の向上やリード獲得につなげる施策(PR戦略)です。
この手法は重要なPR施策として多くの企業で用いられていますが、その理由は何なのでしょうか?
リサーチPRが重要視される理由とメリット
リサーチPRが重要視される理由とメリットには下記のようなものがあります。
● 成功すれば費用対効果が高い
● 特定テーマでのブランディングが可能
● 自社商品・サービスのストーリー作りに有効
成功すれば費用対効果が高い
リリース展開の大きな目的は「できる限り多くのメディアで取り上げられること」です。成功すれば広告出稿に比べて低いコストと工数で企業名や商品・サービスの露出効果となり、認知度の拡大やリードの獲得につながります。
シンプルな商品訴求に比べて、説得力、有用性のある調査データがあればメディアに取り上げられる可能性は大幅に広がるため、手法として非常に有効なものと言えます。
またそれだけではなく、広告や自社HP、営業の資料での活用など、ビジネスのあらゆる顧客接点で活用ができるデータであれば、その効果は非常に多岐に渡るものになります。
特定テーマでのブランディングが可能
リサーチPRを出すことでのブランディング効果も重要なポイントです。自社に関連した、メディアの関心が高い話題についての調査リリースを上手く展開でき、ニュース番組などで「〇〇社の調査によると〜」などの表現で調査データが紹介されることで、その話題に対する企業としての権威性をアピールすることができます。
自社商品・サービスのストーリー作りに有効
リリースの最終目的はもちろん自社商品・サービスの認知度が上がり、売り上げに貢献することです。調査と合わせて自社商品・サービスを訴求する大きなメリットは、調査によってその存在意義や価値の説得力を担保できることです。
例えば、全ての商品・サービスには前提となる顧客の課題が存在しますが、ユーザー調査でそれを可視化することで、自社商品・サービスがその課題を解決するために意義のあるものだということを、より実感を持って伝えることができます。
リサーチPRの注意点と落とし穴
このようにメリットの多い「リサーチPR」ですが、施策を行う上で注意すべきポイントが何点か存在します。下記のようなポイントを抑えておかなければ、効果が出ないばかりか逆にブランド毀損に繋がってしまうので注意が必要です。
● データの有効性の確保や設問の設計
● NO.1表記に対する配慮
● 調査内容の客観性と自社PRとのバランス
データの有効性の確保や設問の設計
大前提として、当然ですが、データは調査として有効なものでなければなりません。調査対象や回答母数、実施方法に、データの有効性が疑われる要素があってはなりませんし、設問の設計もそうした観点で注意が必要です。
主にこの業務を行うのは広報部門ですが、言うならばリサーチは全く別の専門領域であり、もし内製で行うのであればクオリティの部分での注意が必要ですし、不安な点があれば専門家への相談を検討すべきでしょう。
NO.1表記に対する配慮
近頃大きな問題となっているのが「NO.1表記」の扱いについてです。
さまざまな広告やPRで「〇〇部門NO.1!」などの表記が多数見られていますが、限定的・恣意的な実施要件や分析方法によって、自社に有利で公正さを欠いたものも多く存在していることも事実です。
弊社も属している市場調査会社の業界団体である日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が2022年1月に抗議の意を示し、「NO.1表記」には厳しい目が向けられつつあります。調査結果が、顧客側に不信感を抱かせないよう、慎重に調査を行うことが必要です。
調査内容の客観性と自社PRとのバランス
先ほどメリットの部分で「自社商品・サービスのストーリー作りに有効」と述べましたが、当然ながらそこには「調査内容が客観的で信頼のおけるものである」ことが前提条件として存在します。自社のPRにつながることに力点を置きすぎてしまい、データの可視化や精緻な分析が不完全であることは避けるべきことですが、「PRである」ことがどうしてもそういった観点をぼやけさせてしまいます。
これを避けるためには、客観的にデータを判断できる第三者のチェックが有効な打ち手として考えられます。
リサーチPRの事例3選
上記のようなポイントをしっかり押さえ、注目度の高いリサーチPRを実施している事例を3つご紹介いたします。
● ロート製薬「子どもの生活と目に関する調査」
● ミドリ安全「災害時の情報取得方法やフェイクニュースへの接触実態に関しての実態調査」
● サッポロビール「父の日アンケート調査」
ロート製薬「子どもの生活と目に関する調査」
ロート製薬株式会社が10月10日の「目の愛護デー」に際し、全国の小学生、中学生の子どもを持つ親を対象に調査したものです。
親は子供の目の健康を気をしてはいるが、ケアについては何もできていない、という結果や、正しいアイケアへの認知の低さを訴求し、目の健康への関心を訴える内容となっています。
リリース文面には同社の目薬などのプロダクトの言及は一切ありませんが、「アイケアのリーディングカンパニー」という表現と共に、企業としての思いとして、目の健康への関心と正しい行動の必要性を訴求するリリースとなっており、教育系ICT系、ママ世代向けのメディアに数多く取り上げられています。
>>詳しい調査内容はこちら
ミドリ安全「災害時の情報取得方法やフェイクニュースへの接触実態に関しての実態調査」
安全靴や作業着等の製造メーカーであるミドリ安全株式会社が9月1日の防災の日に向けて実施した「災害時の情報取得方法やフェイクニュースへの接触実態に関しての実態調査」のリリースです。
災害時においても問題になっているフェイクニュースをフックに、世代ごとの防災意識を取り上げたこの調査。災害時における注意喚起と共に、現代ならではの問題から防災意識の向上を訴えており、キャッチーなテーマとして大手IT系メディアを始めとして多くのメディアで掲載がありました。
>>詳しい調査内容はこちら
サッポロビール「父の日アンケート調査」
サッポロビール株式会社が実施したお父さんの父の日に対する意識やお酒飲用実態調査。
調査の中では親子で飲みたいお酒は何か、という質問に対して「プレミアムビール」が最も多い、という回答結果もありましたが、リリースで強調されたのは『お父さんが欲しいものは「物」ではなく、「子どもたちや家族と過ごす時間」』であること。
話題としてのキャッチーさだけでなく、高価格帯のアルコール飲料に必要とされるシーンでの訴求、いわゆる「コト訴求」とも沿うイメージで、PRだけでなく、販促メッセージとしても有効なリリースの事例です。
>>詳しい調査内容はこちら
まとめ:成功するリリースを作るためには「質の高い」リサーチが不可欠
ここまで「リサーチPR」の重要性やメリット、注目事例と共にリサーチのプロから見た注意すべきポイントについてご紹介してきました。
3つの事例のように、しっかりと設計された価値のある調査を元にした質の高いマーケティングリサーチを用いた調査リリースは、ブランディング・認知向上などあらゆる効果が期待できます。しかし反面、ご紹介したような「落とし穴」にハマってしまうと逆効果であることを理解した上で、リサーチPRと向き合うことが必要です。
しかしながら、どうしても専門性が必要とされる領域ですので、客観的な判断や専門家のアドバイスに頼るべき場合もあるでしょう。
弊社マーケティング・リサーチ・サービスでは、そうしたご相談を随時受け付けております。もちろんご相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせくださいませ。
(digmar編集部)