リキッド消費とは?|「モノを持たず、変化の早い」新たな消費の特徴や、効果的なマーケティングリサーチを解説

リキッド消費とは

近年、サブスクリプションサービスやシェアリングサービスなどの普及によって、「リキッド消費」という消費者行動が注目されています。

リキッド消費は、Z世代を中心に広がっている、物の所有にこだわらない新たな消費者行動の概念です。

今回は、そのようなリキッド消費の概要や特徴、リキッド消費に対応するために効果的なマーケティングリサーチなどを解説します。
マーケティングや商品開発をおこなううえで、このような特徴的な消費者行動を把握することは重要なので、ぜひ本記事で理解を深めてください。

リキッド消費とは

リキッド消費とは前述の通り、物の長期的な所有を前提とせず、その時のニーズや好みなどによって柔軟に商品やサービスを利用する消費者行動を指します。この概念はマーケティング学者のバルディとエクハルトによって提唱されたもので、「液体(リキッド)」のように常に変化して掴みどころがないという特徴から、「リキッド消費」と名付けられました。

リキッド消費の代表的な例としては、シェアリングサービスやサブスクリプションサービスなどが挙げられます。

リキッド消費に対するソリッド消費とは

リキッド消費の対の概念として「ソリッド消費」というものも存在します。

ソリッド消費とは、物理的な商品や資産を所有することを重視する消費者行動を指します。具体的には、家や車、家電製品などの耐久消費財を購入し、所有することが例として挙げられます。ソリッド消費は、リキッド消費とは反対に「永続的」、「所有ベース」、「物質的」であることが特徴です。

リキッド消費の主な3つの特徴

バルディとエクハルトは、リキッド消費には以下の3つの特徴があると定義しています。

①短命性:ニーズが次々と変化し、場当たり的に消費をする

リキッド消費の1つ目の特徴は短命性です。これは、消費者が商品やサービスに対して価値を感じる場面が一時的で、次々と価値を感じるものが変化するという傾向を指します。

ニーズを感じた時に商品やサービスを利用し、ニーズが満たされたらすぐにそれを手放すといった、場当たり的な消費がリキッド消費の特徴の一つです。

②アクセスベース:所有せずに、一時的な利用で価値を得る

リキッド消費の2つ目の特徴はアクセスベースです。アクセスベースの消費とは、商品やサービスを所有するのではなく、一時的に利用して価値を得ることを指します。例えばホテルや電車は、「宿泊」や「移動」という価値を一時的に利用するため、アクセスベースの消費です。

近年はサブスクリプションサービスやシェアリングサービスの拡大により、様々なものがアクセスベースで消費できるようになりました。そのため、「所有しなくても、その価値を利用できればいい」という意識が強くなっていると考えられています。

③脱物質:モノを所有することを重視しない

リキッド消費の第三の特徴は脱物質です。これは、モノを持つことに対するこだわりが薄くなっていることを指します。例えば、車を所有せずにレンタカーを使う、紙の本ではなく電子書籍を読むなど、「実物を所有しなくてもいい」という考え方です。

また、近年は電子マネーやNFTなど、様々なもののデジタル化によって、脱物質の意識もより強くなっていると考えられています。

リキッド消費が拡大している背景

リキッド消費が拡大している背景として、以下のような要因が考えられています。

デジタル化で瞬時にデータで得られるようになった

リキッド消費が拡大している背景には、インターネット通信の速度の高速化が大きな要因として挙げられます。これにより、例えば動画、音声といったコンテンツはCDやBDなどを購入しなくても、デジタルデータで手軽かつ瞬時に楽しむことができるようになりました。こういった技術の進化によって、短命でアクセスベースで脱物質的な消費者行動が広がっていったと考えられています。

技術の進化によって、プロダクトライフサイクル(製品ライフサイクル)が短くなっている

プロダクトライフサイクル(製品ライフサイクル)とは、商品やサービスが市場に導入されてから、衰退するまでのプロセスのことです。

技術の進化によって、商品開発の速度が速くなり、SNSなどで商品が広まる速度も速くなったことで、製品の導入から衰退までのサイクルは年々短くなっています。数多くの新商品や新サービスが次々と生まれてくるため、消費者も特定の商品にこだわらず、常に欲しいものが変化する短命な消費へと変わっていったと考えられています。

モノ消費よりコト消費を重視する人が増えている

モノ消費からコト消費への消費意識の変化もリキッド消費拡大の要因として挙げられます。

モノ消費とは、ブランド品や車など、物を所有することを重視する消費者行動を指します。一方、コト消費とは、商品の購入やサービスの提供により得られる体験や経験を重視する消費者行動です。

経済的な成長により、多くの人々はそれなりに物質的に満たされてきたため、物を所有すること自体の価値が以前よりも低下し、代わりに体験や経験に価値を見出すコト消費の傾向が強まっています。

コスパ・タイパ・スぺパを重視する意識が高まっている

消費者のコストパフォーマンス(コスパ)、タイムパフォーマンス(タイパ)、スペースパフォーマンス(スぺパ)を重視する意識が高まっていることも要因として挙げられます。

購入するよりもレンタルした方が安い、物が増えると自宅のスペースが占有されてしまう、など、消費をする時の負担や効率を重視する意識が強くなっていることから、シェアリングサービスやサブスクリプションサービスなどを利用したリキッド消費の傾向も強くなっていると考えられます。

リキッド消費の代表的なサービスの例

リキッド消費の特徴に適したサービスとしては、以下のようなものが挙げられます。

サブスクリプションサービス

サブスクリプションサービスは、消費者は一定の料金を支払うことで、定期的に商品やサービスを利用することができるサービスです。サブスクリプションの大きな利点は、利用開始時にかかるコストが購入するよりも安いことが多い点です。例えば、音楽ストリーミングサービスや動画配信サービスでは、月額料金を支払うことで膨大なコンテンツにアクセスできるため、個別に購入するよりも経済的です。

さらに、サブスクリプションサービスは必要ではなくなった時に解約をすることができるため、消費者にとってリスクが少ないです。この柔軟性は、短命性とアクセスベースを重視するリキッド消費に適しています。消費者は必要な期間だけサービスを利用し、不要になったら簡単に解約できるため、無駄な支出を避けることができます。

<サブスクリプションサービスの例>

  • Netflix(動画配信サービス)
  • KINTO(車のサブスクリプションサービス)

シェアリングサービス

シェアリングサービスは、物や場所などをサービス利用者間で共有しあうサービスです。このサービスは、物を購入して所有する必要がなく、必要なときだけ利用することで価値を享受することができます。

例えば、カーシェアリングやシェアサイクル、ブランド品のシェアリングなどが挙げられます。これらのサービスは、特定の場所や場面で商品やサービスを利用したいというニーズに応えるもので、所有することによるコストを重視するリキッド消費に対応したサービスです。

<シェアリングサービスの例>

  • Airbnb(民宿プラットフォーム)
  • airCloset(洋服のレンタルサービス)

フリマアプリ、買取サービスなどのリユースサービス

リキッド消費の代表的なサービスの一つに、フリマアプリや買取サービスなどのリユースサービスがあります。これらのサービスは、新品を購入するよりも中古品を安く手に入れることができる点や、不要になったアイテムを手軽に売却できる点などが、コスパを重視し、消費サイクルの早いリキッド消費に適しています。

<リユースサービスの例>

  • メルカリ(フリマアプリ)
  • トレファク(買取サービス)

リキッド消費に対応するために効果的なマーケティングリサーチ

リキッド消費の特徴で述べたように、リキッド消費は商品やサービスの消費サイクルが早く、ニーズの変化が速いため、特定の商品やブランドに対するこだわりが薄い傾向があります。つまりマーケティングをおこなううえで、ブランドロイヤルティが形成されにくいという問題点が考えられます。

そのような問題点に対応したマーケティング施策や商品開発をおこなうためには、マーケティングリサーチを活用して、消費者や自社ブランドについての現状を素早く把握することが求められます。具体的には以下のような調査が有効です。

リキッド消費に対応するための調査手法①:定量調査

定量調査とは観測・測定結果を数値データとして集計し、数や割合など数量で分析する手法です。具体的には、webアンケートなどの調査手法を指します。

変化の早いリキッド消費に対応するためには、消費者の実態や自社ブランドの想起率やポジショニングを定量調査によって把握することが重要です。

さらに、このような実態調査を単発ではなく定期的に実施していくことで、実態の変化を捉えることができるため、リキッド消費に対応したマーケティングが効果的に実施できるようになります。

定量調査の詳しい解説はこちら:定量調査とは(定性調査との違いと手順・ポイント)

リキッド消費に対応するための調査手法②:定性調査

定性調査とは、調査対象者の言葉や表情、行動など、心理的、視覚的な情報など、数値化しにくい情報を活用する調査・分析手法です。具体的にはインタビュー調査や観察調査などを指します。

インタビュー調査などを活用して、アンケートでは把握しにくい消費者の潜在ニーズや心理を掘り下げていくことで、リキッド消費に対するインサイトを得ることができると考えられます。

定性調査の詳しい解説はこちら:定性調査とは(定量調査との違いと実施するポイント)

まとめ:デジタル化によって今後も拡大するリキッド消費

リキッド消費は今後、Z世代に限らず幅広い世代にも広がっていく可能性が考えられます。
物を持たず、常にニーズが変化する消費者に対応したマーケティングを実施していくために、リサーチを活用して消費者理解を深めていくことが重要です。

(digmar編集部)