リブランド(リブランディング)とは?実施するタイミングや事例など解説

リブランディング

企業ではしばしば、既存のブランドを見直し、新たにブランドを再構築する「リブランド(リブランディング)」を実施します。リブランディングは、主に低迷した売上を回復させる目的で行われます。

この記事では、リブランディングの内容や実施するタイミング、進め方、事例を紹介します。リブランディングを検討している企業は、ぜひ参考にしてみてください。

リブランディングとは

リブランディングとは、企業がもつ既存ブランドを再構築して、魅力や訴求を復活させることです。低迷した売上を回復させるため、急激な市場変化への対応するためなどの目的のもとに行われます。また、会社の方針転換をきっかけに行われることもあります。

一口にリブランディングといっても、その対象は多岐にわたります。例えば、社名や商品名、企業や商品のロゴ、商品のパッケージデザイン、顧客とのコミュニケーション方法などがリブランディングの対象です。

売上の低迷やトレンド性などを失ったとき、企業ではリブランディングが検討されますが、実施にはリスクを伴います。タイミングや正しい手順でリブランディングを実施しなければ、既存ブランドをさらに毀損してしまう恐れもあるのです。

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リブランディングを行うタイミング

通常、リブランディングは既存ブランドに何かしらの課題を感じた際に実施されます。ここからは、リブランディングが実施される主なタイミングを5つ紹介します。

売上が伸び悩んでいるとき

企業がリブランディングを検討する最大の目的は、伸び悩んだ売上を回復させるためです。製品リリース時よりも売上が低迷し、右肩下がりになっているときに、リブランディングが検討されます。

既存製品の売上が低迷している理由の1つに、市場の変化についていけず、顧客のニーズと自社製品の提供価値が合致していないことが挙げられます。

「売上=ブランドが市場に適している度合い」と捉えられるため、売上が低迷したときはリブランディングの最適なタイミングと考えられます。

市場環境が変わったとき

リブランディングは、市場環境が急激に変化したときに実施されることもあります。リブランディングが検討される急激な市場環境の変化とは、例えば次のようなケースが考えられます。

  • スタートアップ企業が画期的な製品を開発し、市場に投入した
  • 資本力のある大企業が、市場に新規参入した
  • 顧客のニーズが急激に変化した(例:顧客がDVDレンタルから、オンラインの動画配信サービスで映画などを視聴するようになった) など

市場の変化のスピードが著しい現代社会では、既存ブランドのままで順調に売上を上げられていたとしても、急激な市場の変化によってブランド力が一気に低迷する恐れもあります。

市場環境に明確な変化が生まれた際は、自社ブランドを見つめ直すよい機会と捉えられます。

自社製品がトレンド性を失っているとき

既存のブランドイメージが古いままで更新されていない場合も、リブランディングを検討するタイミングです。既存の古い製品ブランドを維持したままトレンド性を失うと、市場に画期的な製品が投入されてシェアを奪われたり、新たな顧客を開拓できなかったりするリスクがあります。

今のトレンドに合わせるため、場合によっては既存のターゲット層から、新たなターゲット層にアプローチする方法も有効です。

ただし、古くから受け継がれている、昔ながらの商品コンセプトやロゴ、デザインが顧客から愛されている場合もあります。そのため、現代のトレンドにアップデートし続けることが、必ずしも正しいとは言い切れません。

この場合、自社製品に対する顧客からの評価や、リブランディングして新しいポジションを獲得した場合に既存顧客を大きく失わないか、といった点を見極めることが必要です。

事業の方向転換

リブランディングは、企業の方向性が変わったときに実施されることもあります。具体的には、買収や合併、会社分割など、企業の体制が大きく変わるケースです。

こうした大きな組織体制の変更では、会社の戦略が変わることも多く、売上の低迷やトレンド性などにかかわらずリブランディングが実施されます。

ブランドの回復

必ずしもポジティブな理由で、リブランディングが実施されるとは限りません。リコールや不祥事などでブランドが損なわれ、悪い企業イメージから脱却を図りたいときに、リブランディングを実施する場合もあります。

SNSが発達した現代社会では、企業イメージがそのまま売上に直結しやすい理由もあり、毀損したブランドを回復する目的でリブランディングを実施するケースは増えていると考えられます。

リブランディングの進め方

リブランディングには「既存顧客を失う可能性がある」といったリスクがあり、正しい手順で進める必要があります。ここからは、リブランディングの進め方について解説します。

目的を明確にし、課題を洗い出す

まずは「なぜ、自社製品がリブランディングをする必要があるのか」という点を見極めることから始めます。既存顧客を失うリスクがある以上、本当に実施すべきタイミングでリブランディングを行うことが何よりも重要です。

目的や課題が曖昧なままリブランディングを実施したことで失敗し、実施以前よりも状況がひどくなった事例もあります。

次のようにリブランディングを実施する目的と課題を洗い出し、本当に実施すべきかを分析、検討します。

自社製品の課題リブランディングの目的
● 売上がピーク時の半分しかなく、12か月連続で低下している
● ただ、市場全体で見れば一定数の需要を獲得できている状態であり、減少してはいるが根強い自社製品のファンがいることを確認している
● 自社製品のデザインやロゴを、今の市場で求められるものに更新できれば、売上を回復できる可能性が高い
● 最新のトレンドに合った商品イメージを獲得したい(ロゴや商品パッケージを変更予定)
● 顧客とのコミュニケーションを、最新の方法にアップデートしたい(SNS導入を検討)
● 一定の既存顧客はいるので、商品内容は大きく変更せずにリブランディングを実施したい

市場調査によって、現在とリブランディング後のポジションを明確にする

リブランディングの目的と課題が明らかになれば、次はどこに自社製品のポジションを置くかを考える工程です。このとき、市場調査によって「現時点で獲得しているポジション」と「リブランディング後に獲得したいポジション」の2つを分析します。

リブランディングにかかわる市場分析を行う際、主に次の3つの内容を分析します。

  • 市場規模…業界全体の売上高、市場での大手企業や競合他社など
  • 市場の動向…市場で起きていること、売れている商品、トレンドなど
  • 顧客のニーズや課題…市場で顧客が求めていること、今の市場では解決できていない顧客の課題など

市場調査によって、現在の自社製品のポジション、およびリブランディング後に狙うべきポジションを明確にすることで、具体的な効果を検証できます。市場調査を実施することで、リブランディング後に十分なポジションを獲得できない場合、リブランディンを実施しないという選択肢も取ることができます。

リブランディングを浸透させる

売上が増える効果を期待できる場合、リブランディングを実施し、市場に浸透させていきます。このとき、先ほどの「現時点で獲得しているポジション」と「リブランディング後に獲得したいポジション」の差分が、具体的にリブランディングを実施する内容です。

次のようにして、リブランディングを浸透させます。

現時点で獲得しているポジションリブランディング後に獲得したいポジション具体的な浸透戦略
贈答品用普段食べる用商品名やロゴ、パッケージの変更
ターゲット層が50~60代20~30代チラシ広告→SNSを活用
「和菓子」のリブランディング例

リブランディングの事例

ここからは、実際にリブランディングを行った企業の事例を3つ紹介します。

生ノースマン

札幌千秋庵が昭和49年に発売した「ノースマン」は、北海道産の小豆あんをパイで包んだ銘菓です。ノースマンの購買層は60代以上で、若い年齢層の方にも親しんでほしいという想いからリブランディングを行い、2022年10月に「生ノースマン」が生まれました。

生ノースマンは、ノースマンに生クリームを加えたお菓子です。ただ、生クリームを加えることでノースマン特有のパイ生地の食感が損なわれるため、パイ生地の配合を変えるかどうかで壁にぶつかることになります。

当時、パイ生地の配合を変えてもよいのか議論になったようですが、「伝統」よりも「おいしさ」を優先して、パイ生地の配合を変えることに踏み切りました。

顧客第一の姿勢を重視し、デザインも刷新してリブランディングした結果、札幌千秋庵の業績はV字回復。2023年9月までの約1年間で約120万個を販売し(日経クロストレンド11月24日『創業102年目で「ノースマン」再ブレイク 老舗ブランド刷新全過程』より)、販売店では売り切れが出るほどの人気ぶりを見せています。

参考記事>>:生クリームで売上2倍!「ノースマン」昭和49年生まれの北海道銘菓その大胆なリブランディング(CHANTO WEB)

リプトン

森永乳業は「リプトンミルクティー」の終売を決定し、2022年3月、新たに「リプトンロイヤルミルクティー」を発売しました。しかし、終売決定後に、リプトンミルクティー復活の声を求める667件の消費者の声が寄せられました。

これらの意見をもとに、森永乳業はリプトンミルクティーを復活させることを決定。そのプロセスと顧客の声を中心に据えたWeb動画アニメ「667通のラブレター」を制作、公開したことで、SNS上で大きな反響を呼びました。

顧客の声を直接商品戦略に反映させ、その過程を、メディアを通じて積極的にアピールすることで、森永乳業はリプトンミルクティーというブランドの新たな価値を創出しています。

消費者との関係性を強化するとともに、ブランドのイメージを刷新し市場におけるポジションを再定義した、リブランディングの典型的な事例といえます。

参考記事>>:森永乳業リプトンミルクティーV字回復 「ご意見」の熱量が生んだSNSマーケティング | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議

SHIRO

2019年、コスメティックブランド「シロ(SHIRO)」は、ロゴの変更やパッケージのリニューアルを含むリブランディングに着手しました。「世界で戦えるブランド」になるため、そして自社の良質な製品を世界中の人々に使ってもらいたいという願いから、リブランディングが始まりました。

しかし、SHIROのリブランディングは簡単には進まず、その過程でSNSでのネガティブな意見に直面します。

その最中でも、素材へのこだわりを追求し、製品の品質をさらに高めることに注力。例えば、フレグランスシリーズではスキンケア同様に自然由来の高品質な原料を使用し、顔を知っている生産者から最良のものを選んでいます。

リブランディングの結果、SHIROはリニューアル前よりも多くの人に認知される存在となり、売上は前年同月比で170%前後に伸びました。また、メイクアップアイテムの売上が伸び、ブランド全体の売上構成比でメイクアップアイテムが2.5倍に広がるまでに成長しました。

SHIROは、ネガティブな意見の中にあっても商品の質を重視した結果、多くの顧客に愛される商品へと成長した事例の1つです。

参考記事>>:ネガティブな意見も受けとめ前進 「シロ」の「世界で戦えるブランドに」という想いの源泉 (PR) – WWDJAPAN

成功するリブランディングは市場調査から

リブランディングとは、企業がもつ既存ブランドを再構築して、魅力や訴求を復活させることです。低迷した売上を回復させるほか、急激な市場変化への対応や、会社の方針転換などで実施されるものです。

リブランディングには既存の顧客を失うなどのリスクがある以上、正しい手順で進めることが重要です。

リブランディングをはじめ、ブランディングに関することで、何か不明点や弊社でご支援できることがございましたら、ぜひともお問い合わせください。

(digmar編集部)