ブランドマネジメントとは?エクイティやリサーチの重要性、成功事例など解説

ブランドマネジメント

企業のブランド戦略を考えるうえで重要となるのが、ブランドマネジメントです。
ブランドマネジメントは、企業が自社のブランド価値を向上させ、ブランド体験を提供し続けるための戦略的な取り組みです。

この記事では、ブランドマネジメントはどのようなことか、ブランドマネジメントを進めて上で重要なブランドエクイティを構成する要素、ブランドマネジメントの成功事例などを紹介します。ブランドマネジメントについて理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

ブランドマネジメントとは

改めて、ブランドマネジメントとはどのようなことかと言うと、企業が戦略的にブランドを活用するため、ブランドの認知度を高め、計画的に自社ブランドを適切に維持・構築する活動です。具体的には、ブランドエクイティ(ブランドが持つ資産価値)を高めるための、マーケティング戦略全般を指します。

ブランドとは

ブランドマネジメントを語る上で、まず理解が必要なのは「ブランド」です。ブランドとは「他社の商品と識別させ、差別化させる名称や言葉、概念など」を指します。その中には、視覚的な要素だけではなく、商品の使命、価値、ストーリーも含まれます。

現代社会において、商品やサービスが豊富に存在しています。顧客は何かしらの商品やサービスを購入しようとすると、類似する商品・サービスと比較し、自身にとって最適なものを選ぶ傾向があります。「◯◯は健康によいので購入したい」「▲▲は安価だけど品質がよい」といったように、他社の商品と差別化され、顧客がその商品を選ぶ理由こそがブランドです。

ブランドは顧客の購買理由であり、高級ブランドに限らず、低価格商品であっても他社と差別化できる何かがあれば、それはブランドとなり得ます。

ブランディングとは

ブランディングとは、認知や価値観などブランドが浸透する活動そのもの、つまりブランドの価値を消費者に浸透させる戦略アプローチのことを言います。

そしてブランドマネジメントは、ブランディングを成功させるための重要な要素となっています。ブランディングには次の4つの領域があり、その1つにブランドマネジメントが含まれています。

  1. ブランドマーケティング…ブランドを作り、強化するためのマーケティング活動全般
  2. ブランドコミュニケーション…顧客に自社のブランド価値を伝え、ブランドの地位向上を図る活動
  3. ブランドアクティベーション…広告以外の手法でブランドの認知度を高め、顧客に行動を促すための活動
  4. ブランドマネジメント…計画的に自社ブランドを適切に維持・構築する活動

ブランドマネジメントが重要な理由

ブランド戦略を取る企業にとって、ブランドマネジメントが重要な理由を3つ解説します。なお、ブランドマネジメントが重要な理由については、以下の記事でも解説しています。

関連記事>><リサーチ相談室>Vol.2 「選ばれ、続いていくブランド」~ブランドマネジメント~

ブランドの価値を維持・向上させるため

ブランドマネジメントの目的は、ブランド価値の維持または向上させることにあります。ブランドは永続的な存在ではなく、適切に管理されなければ衰退してしまいかねません。

企業のブランドイメージを適切に維持し、さらに最大化するためには、ブランドマネジメントによるブランドの管理体制の構築が必要です。

ブランドアイデンティティを確立できるため

ブランドマネジメントの目的は、ブランドアイデンティティを構築することにもあります。ブランドアイデンティティとは「企業側が思う、他社商品と区別して欲しい自社製品の個性」です。

ブランドアイデンティティを確立することで、それ自体が強い購買要因となります。戦略的にブランドマネジメントを実行することは、他社製品への差別化につながります。

社内で一貫したブランド戦略を実行できるため

ブランド戦略が社内で統一されていないと、顧客に提供するブランド価値にもばらつきが出てしまう恐れがあります。

よくあるのは、経営層の思い描くブランドイメージが現場で正しく認識されていないために、意図しない形でブランドが形成されてしまうケースです。社内でブランド戦略を統一させるためには、ブランドマネジメントとして従業員を教育し、顧客に一貫したブランド価値を提供することが重要です。

ブランドマネジメントでは「ブランドエクイティ」を高めることが重要

ブランドエクイティ

ブランドマネジメントの肝は、ブランドエクイティを高めることにあります。

ブランドエクイティとは「ブランドが持つ資産価値」のことで、目に見えない無形のブランド価値を資産として捉える考え方です。(カルフォルニア大学・ハース経営大学院の名誉教授デイビッド・アーカーが提唱)

ブランドエクイティは、次の5つの要素で構成されています。

  1. ブランド認知
  2. ブランド・ロイヤリティ  
  3. 知覚品質
  4. ブランド連想       
  5. その他のブランド資産

各要素について、詳しく解説します。

①ブランド認知

ブランド認知は「ブランドがどれだけ広く知られているか」を表すものであり、同時に「ブランドがどれほど深く認識されているか」を示しています。「柔軟剤なら◯◯社の製品が一番よい」というように、顧客が商品やサービスから想起する企業の度合いが大きいほど、ブランド認知度は高いといえます。

顧客は馴染みのある商品やサービスを選ぶ傾向にあるため、ブランド認知度を向上させることは、売上に直結すると考えられます。

ブランド認知度は、大きく「ブランドの再認」と「ブランドの再生」の2つに分けられます。

  • ブランド再認…ブランドの要素(ブランド名やロゴなど)に接した際に、ブランドを思い浮かべること。「看板の”M”のロゴを見てマクドナルドを思い浮かべる」など。
  • ブランド再生…ニーズが生まれた時に、そのブランドを思い出すこと。「ジュースが飲みたいと思ったときにコカ・コーラを思い浮かべる」など。

ブランド認知度を向上させるためには、「ブランド再認」よりも「ブランド再生」を高めるための施策が重要です。

なお、自社製品のブランド認知度を測るには、調査会社によるアンケートやインタビューを行うのが一般的な手法です。

②ブランド・ロイヤリティ

ブランド・ロイヤリティとは、顧客が特定の商品やサービスに対して持つ忠誠心のことです。「やっぱり、炭酸飲料は◯◯社のものがよい」というような、他の代替ブランドがあるにもかかわらず、その商品・サービスを選ぶ心理を指します。

ブランド・ロイヤリティが高いほど、リピート購入につながります。つまり、ブランド・ロイヤリティを高めることは、新規顧客獲得コストの削減にも直結するのです。

③知覚品質

知覚品質とは、特定の商品・サービスを他社製品と比較して、顧客が認知している品質や優位性のことです。「他の飲食店よりも◯◯のほうがおいしい」といったように、他の代替ブランドと比較して、品質の優位性を顧客が感じている状態を指します。

知覚品質を高めることは、価格競争からの脱却につながります。「値段は高くても質がよいから買おう」と顧客が考える状態を作り出せれば、価格を下げることによって競合優位性を発揮する必要がなくなります。

④ブランド連想

ブランド連想とは、特定のブランドに関連付けられる情報やイメージのことです。顧客がブランドに対して持つ知識や経験、感情などに基づいて形成されるもので、広告やマーケティング活動、また個人的な経験などが影響します。

このブランド連想は、顧客の購買意欲やブランド・ロイヤリティにも関与します。すなわち、顧客が特定のブランドにポジティブなイメージを持つことにより、ブランドへの関心が高まったり、購買行動が促されたりする可能性が高まるのです。

⑤その他のブランド資産

その他のブランド資産とは、先に挙げた要素以外の、ブランド価値を支える要素のことをいいます。例えば、次のようなものが該当します。

  • 商標権や著作権、特許などの知的財産
  • 取引先や顧客との関係性
  • ノウハウや独自技術 など

これらもブランドエクイティの要素として重要です。こうしたブランド資産を高めることも、競合優位性を確立することに寄与します。

ブランドマネジメントには定点観測(リサーチ)が必要

ブランド定点観測

ブランドを適切に維持・構築するには、常に現状を把握することが重要です。もしリサーチ結果が本来の想定したものと異なる場合に、直ぐに対処する必要があります。そのまま放置してしまうとブランドが損なわる可能性があります。

ここからは、主なブランドリサーチの内容を3つ紹介します。

ブランド認知度の調査

1つ目は、ブランド認知度調査です。自社ブランドが市場内でどの程度浸透しているのかを調査します。年代別のブランド認知率や、ブランドの課題、そしてその要因などを明らかにすることが可能です。

代表的な例だと、ブランド認知度調査では「想起率」が調査項目となります。想起率には、次の2種類があります。

  • 純粋想起率…特定の市場で思い浮かぶブランド名の中に、自社ブランドが含まれる確率。例えば「ペットボトルの茶系飲料といえば何か?」といった設問で調査される
  • 助成想起率…特定のブランドが認知されている割合。例えば「あなたが知っている茶系飲料のブランドを選んでください」といった設問で調査される

ブランド認知度を測ることで、商品・サービスの品質改善やPR戦略の立案などに役立てることができます。

顧客ニーズとブランドとの関係性の調査

2つ目は、顧客が重視する点(ニーズ)とブランドの関係に関する調査です。顧客が購入時に重視する点と、それに合致するブランドを聴取します。その結果を顧客がどのような要素を重視して購入しているのか、自社および競合製品をどのような点を重視して購入しているのかを、自社および競合ブランドと比較し、分析します。

例えば「ファミリーレストラン」を例にすると、それぞれの店舗が何を重視して来店されたかを聴取し、さらに「料理のおいしさ」「内装デザインのよさ」「価格の安さ」など、さまざまな設問項目を聴取し、来店要因(購入要因)を分析します。

各項目において顧客が重視している要素を明らかにし、競合店と比較することで、商品やサービスの改善すべき点が明確になります。

イメージポジショニングの調査

3つ目は、イメージポジショニングの調査です。この調査では、自社および競合ブランドの相対的なイメージを調査します。それにより、競合と比較した自社製品のポジションがわかります。そのため、差別化可能なブランドポジショニングを把握して、ビジネス戦略を検討したり実施したりすることが可能です。

イメージポジショニングの調査は定量調査で行われ、多変量解析の1つであるコレスポンデンス分析を用いて分析することが多いです。

例えば、対象ブランドごとに「価格の安さ」「カスタマーサービスの充実度」など、顧客が持つイメージを5段階で評価してもらいます。この調査結果をコレスポンデンス分析を用いて散布図に反映させることで、自社および競合ブランドのポジショニングを視覚化できます。

>>コレスポンデンス分析については知りたい方はこちらをご覧ください
多変量解析とは?マーケティングにおける目的や主な分析手法を解説!

ブランド力は組織管理から生まれる

組織管理

ブランド力が強い企業は、組織体制や仕組みを通じて、ブランドを適切に管理しています。ブランド力を管理する組織体制が充実している企業の例として、ソニー株式会社があります。

ソニーは社内に「ブランド戦略部」を置き、広告メディア効果の効率向上やメディア購買スキームの運営、コミュニケーション最適化などを行っています。さらに、グローバル視点から時代に合った方法で最適な広告を出し、日本企業でトップレベルともいえるブランディングを行っています。

このようなブランドマネジメントの施策が功を奏し、日本のブランド価値ランキング「Best Japan Brands 2023 Rankings」で3位を受賞しました。

参考:Japan’s Best Brands 2023 | インターブランドジャパン

ブランドマネジメントの成功例

Best Japan Brands 2023 Rankingsで受賞した企業を基に、ブランドマネジメントの成功例を3社紹介します。

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、Best Japan Brands 2023 Rankingsで1位を受賞した企業です。世界の自動車業界を牽引するトヨタ自動車は、次のようなブランドマネジメントを実行しています。

  • 常に品質や耐久性などを向上させることを優先し、顧客満足度を向上させることで信頼を獲得している
  • 水素で走る燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」や、電気とモーターで走れる電気自動車「C+pod(シーポッド)」など、環境に優しい車づくりに注力することで、ブランドイメージの向上を図っている
  • デジタル広告やスポンサーシップなどを活用し、自社のブランドイメージを顧客に的確に伝えることで、ブランド認知の向上を図っている

任天堂

任天堂は、Best Japan Brands 2023 Rankingsで5位を受賞した企業です。世界に誇る日本最大のゲームメーカーである任天堂は、次のようなブランドマネジメントを実行しています。

  • 「マリオ」や「ポケモン」、「ゼルダの伝説」など、世界的に知られる任天堂オリジナルのキャラクターを積極的に活用することで、継続的にブランドイメージの向上を図っている
  • 家族や友人とゲームをプレイすることを重視しており、テレビCMやデジタル広告を使ってその価値観を共有することで、任天堂が考えるブランドイメージを適切に伝えている
  • 長年築きあげてきた任天堂ブランドを保護するため、徹底した不正出願対策により、商標権や特許など知的財産侵害を防止している

野村総合研究所(NRI)

野村総合研究所(NRI)は、今回初めて83位にランクインした企業です。コンサルティング事業や金融ITソリューションなどを手掛ける野村総合研究所では、次のようなブランドマネジメントを実行しています。

  • 未来創発フォーラムを開催するトップ自らが顧客や社会に向けたメッセージの発信を行うという、強いコミットメントの姿勢により、伝えたいブランドイメージが明確になっている
  • 金融ITや産業IT、IT基盤など、ITに関連した分野で優れた専門知識とノウハウを有しており、顧客に価値を提供することで信頼を獲得している
  • 研究機関としての正確な市場リサーチや分析によって得た客観的な情報とともにクライアントに提言することで、信頼を獲得している

まとめ:ブランドマネジメントはあらゆる企業で実行できる

ブランドマネジメントとは、企業が戦略的にブランドを活用するため、自社ブランドを適切に維持・構築することです。ブランドマネジメントでは基本的に、ブランドエクイティを高めるための施策を実行することになります。

また、正しくブランドマネジメントを進めるためには、現状を把握するブランドリサーチが欠かせません。本メディアを運営する株式会社マーケティング・リサーチ・サービスは、新規ブランド立ち上げやブランドポジショニングの確認など、場面に合ったリサーチで、クライアントの課題を解決する会社です。ブランド戦略の一環で市場や顧客を分析したい企業様は、ぜひ弊社へお問い合わせください。

参考:ダイバーシティ・マネジメントとは?日本の現状やメリット・デメリット、企業事例を徹底解説!|digireka!HR

(digmar編集部)