マーケティング心理学5選!最低限知っておきたいマーケティングに使える心理学を紹介(前編)

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マーケティングでは、人の深層心理にアプローチするさまざまな心理学が用いられています。人の心の動きを読みマーケティング活動を行うことで、同じ商品・サービスでも、より顧客に販売しやすくなることがあります。

この記事では、最低限知っておきたいマーケティング心理学を5つについて解説していきます。

最低限知っておきたいマーケティング心理学5選

マーケティングに携わる方が最低限知っておきたい心理学は、次の5つです。

  1. アンカリング効果
  2. カリギュラ効果
  3. バーナム効果
  4. バンドワゴン効果(スノップ効果)
  5. フレーミング効果

アンカリング効果

アンカリング効果とは、意思決定する際に、最初に提示された数字や条件に影響を受けて、その情報を参考にして判断をするような心理効果のことです。

アンカリング(Anchoring)とは、錨(いかり、アンカー)を打ち込むという意味です。最初に見たり聞いたりした数字や条件に思考が引っ張られてしまう様子が、まるで海にアンカーを下ろした船のようであることから「アンカリング効果」と名付けられました。

例えば、予算300万円でディーラーに車の購入を検討しているとします。ディーラーの担当者から「この車は元々600万円でしたが、今なら特別に400万円でお売りできます!」と言われたとします。そうすると「600万円もする車が400万円で手に入るならお得」と思えてしまうのです。客観的にみると、本来の予算よりも100万円オーバーしているのですが、そのことが忘却されています。

このように、最初に提示されたアンカー(600万円という金額)が強く印象に残り、その後に正常な判断がしにくくなってしまうのが、アンカリング効果の特徴です。

ただし、この効果を利用して、二重価格を設定することは消費者を欺くことになり、法律でも禁止されていますので注意が必要です。

カリギュラ効果

カリギュラ効果とは、禁止されたことにかえって興味が湧き、逆の行動をとってしまう心理効果のことです。

カリギュラ効果は、1980年にアメリカで公開された映画「カリギュラ」に由来しています。この映画は古代ローマの皇帝カリグラを題材にしており、その内容は過激で物議を醸しました。そのため、ボストン市では映画の上映を禁止する決定が下されました。

ところが、この禁止措置がかえって市民の興味をかき立ててしまい、多くの人々がボストン近郊まで足を運んでカリギュラを鑑賞するようになりました。結果として、カリギュラは大ヒット作品となったのです。

マーケティングの場面では、例えば、化粧品のキャッチコピーに「本気で美肌を手に入れたい人以外は買わないでください!」と禁止の言葉を組み込むことで、それを目にした消費者は「それほど質にこだわったよい商品なのか?」と、逆にその化粧品が気になってしまうようなといった形で利用することができます。

バーナム効果

バーナム効果とは、誰にでも当てはまる内容であるにもかかわらず、自分のことを指しているように感じる心理効果です。バーナム効果は、P・T・バーナムが残した「We’ve got something for everyone.(好みが違えど、誰にとってもいいと思われるものがある)」という言葉に由来しています。

バーナム効果の最も顕著な例が、血液型による性格診断です。「A型は几帳面」「B型は自己中心的」などとよく言われますが、ほとんどの研究で「血液型と性格に関連性はない」という結論が出ています。しかし、一般的で幅広く当てはまる性格特性が「あなたの性格です」と言われると、人はそれを自身に当てはめてしまう傾向があるのです。

マーケティングの場面では、例えば、資産運用の広告で「将来の生活に漠然とした不安を抱えていませんか?」というキャッチコピーを打ち出すとします。実際、現代社会で生きる多くの人が、将来に漠然とした不安を感じているものです。それを利用し、多くの人に「自分のことだ!」と思ってもらい、購買につなげていくことができるのです。

バンドワゴン効果(スノッブ効果)

バンドワゴン効果とは、多くの人が支持している事柄がより魅力的に見え、一層支持を集めやすくなる心理効果です。

バンドワゴンとは、パレードの先頭にいる音楽隊を乗せた楽隊車のことです。そのバンドワゴンの後ろに車や人が行列となって続く様子が転じて、「人々が優勢な勢力につく動き」を指すようになりました。

バンドワゴン効果は、セールストークやキャッチコピーなどでよく用いられます。例えば、営業の際に「業界最大手の◯◯社に導入いただいております」と訴求したり、キャッチコピーに「業界売上No.1の商品です!」と記載することで、自社製品が多くの企業や顧客に支持されているように映ります。

バンドワゴン効果を活用することで、「大勢の人が利用している=信頼がある・人気がある」という考え方につながり、その結果、商品やサービスがより売れやすくなるのです。

また、バンドワゴン効果とは逆の心理効果として「スノッブ効果」があります。スノッブ効果は、多くの人が支持している商品に対して「自分は嫌だ」と感じ、「ほかの人と違うものが欲しい」というような逆に働く心理効果のことです。

スノッブ効果では、他者の消費が増えると需要が減少する傾向にありますが、この効果を逆手に取って希少性を強調することでマーケティングにも活用できます。例えば「◯◯の地域で限定販売」といった商品は入手できる人が限られるため、特別感が生まれるのです。また、特にイノベーターやアーリーアダプターを狙う場合に適しています。

バンドワゴン効果は一般的な商品や流行品に適していますが、スノッブ効果は価格の高い商品やサービスに適しています。

フレーミング効果

フレーミング効果とは、同じ意味を持つ情報であっても、表現方法によって伝わり方が変わる、あるいは見方の確度が違うだけで同じものだと認識しない心理現象です。

「フレーミング」の「frame(フレーム)」とは、枠組みや額縁を意味します。実際の絵画でも、額縁の違いによって印象が異なることがあります。このように、情報の表現方法が印象の変化に影響を与えることから「フレーミング効果」と呼ばれているのです。

例えば、「ご満足いただけなかったのは5%のお客様だけでした」というよりも、「90%のお客様にご満足いただいています」と伝えるほうが、よりポジティブな印象を与えることができます。これをポジティブフレーミングと言います。(一方、ネガティブな要素を表現することをネガティブフレーミングと言います)

フレーミング効果を活用した例は他にも多くありますが、その一つがサブスクリプションサービスです。例えば、次のようなキャッチフレーズがあるとします。

A:年間36,500円で動画が見放題です。
B:1日100円、およそ缶コーヒー1杯分のお金で動画が見放題です。

AとBの支払総額は、どちらも同じ金額を指しています。しかしながら、Bのほうがリーズナブルに感じられるのではないでしょうか。

他にも、フレーミング効果を活用して以下のように表記することで、よりお得に見せることができます。

  • 栄養ドリンクの「ビタミンC:1g」よりも「ビタミンC:1,000mg」のほうが、ビタミンCが多く含まれているように見える(1g=1,000mgなのでどちらも含有量は同じ)
  • 「3,000円の服を2枚購入すれば、総額から50%OFF!」よりも「3,000円の服を2枚購入すれば、1枚無料!」のほうが、“無料”という言葉によってよりインパクトを与えやすい(実際の支払い金額は同じ)

このように、同じ数字を指していても、表現方法を少し工夫するだけで顧客に購入してもらいやすくなるのです。

まとめ

マーケティングでは、心理学を用いて消費者の深層心理にまでアプローチし、上手に商品を売る企業が多く存在しています。同じ商品を販売するにしても、営業のセールストークやキャッチコピーの表現を工夫することで、スムーズに顧客に販売しやすくなるのです。

続いて、後編では「知っておくと役立つマーケティング心理学」をご紹介致します。

(digmar編集部)