競合分析のやり方を解説!競合他社の決め方やフレームワークなども紹介

競合分析

マーケティング戦略や事業計画を立案する際に、ライバル企業の商品や戦略などを分析する「競合分析」は欠かせません。この競合分析はどのような方法で進めるのか、具体的にどのような会社を競合会社と定めるべきなのでしょうか。

この記事では、競合分析のやり方や競合会社の決め方、他社に競合優位性を発揮する方法などを解説します。

競合分析とは

競合分析とは、自社にとって直接的または間接的にライバルとなる会社を分析し、自社の強みや弱みを明らかにすることをいいます。

競争の激しい日本市場において、自社製品でシェアを獲得していくためには「いかにして競合他社との競争に勝つか」を突き詰めることが必須です。競合企業と同じ土俵だけで勝負するのではなく、異なる領域に事業を集中したり、他社よりも低価格で提供したりして優位性を発揮するといった方法があります。

どのような方法にしろ、自社が市場で優位性を発揮していくには、まずは敵を知ることが必要です。そこで、自社がどのようにポジションを置くかを決めるために、競合分析をするのが有効となります。

競合分析のやり方

ここでは、競合分析のやり方について順を追って解説します。

①競合分析の目的を明確にする

まず、競合分析をするうえですべきは「競合分析の目的を明確にすること」です。一口に競合分析といっても、目的は多岐に渡ります。

  • 新規参入する市場の競合会社を知りたい
  • 既存事業で新たに脅威となりそうな競合会社を把握しておきたい
  • 商品改善のために外部環境を分析したい

ゴールが明確になれば、分析に必要な調査手法や、分析対象となる競合会社などを定めやすくなります。決して次のステップである「②分析対象となる競合会社を決める」から始めるのではなく、まずは目的を決めましょう。

②分析対象となる競合会社を決める

競合分析の目的を決めたら、分析対象となる競合会社を決めます。基本的には「業界内の競合他社」から競合会社を選びつつ、新規参入事業者や代替品を販売する企業も分析対象に含めます。

また、競合会社は大企業だけでなく、スタートアップも含めるようにしましょう。あらゆる企業を分析対象とすることで、分析の幅が広くなります。

競合会社を決めたあとは、次のような企業概要を一覧化します。

  • シェア率
  • 企業規模
  • 売上、利益 など

競合会社の数を何社にするかに基準はありませんが、あまりにも多すぎると分析に多くの時間や工数を割かなくてはなりません。そのため、5〜10社程度を目安にしましょう。

③競合他社の商品・サービスを調査する

競合会社を一覧にまとめたあとは、競合他社の商品・サービスの競合調査を行います。

競合分析は商品・サービスを軸に分析するのが基本のため、まずは②で決定した競合他社の商品・サービスを分析します。この調査は非常に奥深く、あらゆる項目を調査し始めると終わりがありません。そのため最低限の項目として、次の内容は分析しておきましょう。

  • 主力の商品・サービス
  • 価格
  • 品質
  • 流通方法
  • アフターサービスの有無・内容

企業や業界によっては、競合企業を直接調査することは難しい場合があります。その場合は、調査会社に依頼して覆面調査を行ったり、インタビューやアンケートなどで顧客に調査してもらったりする方法がおすすめです。自社で競合調査を行うよりもより実態に即した形で、効果的に競合製品をリサーチできます。

④競合他社の商品・サービス以外の部分を調査する

競合分析の対象は商品・サービスに限らず、多くの分析項目があります。こちらも分析し始めると終わりがない作業ですが、最低限以下3つの項目は調査しておくとよいでしょう。

販売力接客力や広告の種類、顧客とのコミュニケーション方法などから販売力を分析する。販売力は売上に直結する項目なので、競合調査の中でも重要度が高い。
生産体制生産体制を分析することで、コストや受注の特徴などを明らかにし、よい点は自社に採り入れることも可能。ただし、外部から分析するのは難しいので、分析項目は「建築費用」や「電気・ガスなどの維持コスト」などある程度に絞り、あとは仮説として捉える。
組織体制組織体制を分析することは、事業戦略を見極めることにつながる。例えば、商品企画部の人材が増えているとわかれば、新商品開発に力を入れていると推測できる。

商品以外の部分を調査するには一定の調査力が必要になり、自社で行うには限界があります。調査会社やコンサルタントの場合、これらの調査にも対応しているケースがあるので、必要に応じて活用してみてください。

⑤自社分析をする

競合分析は、ただ競合企業を分析して終わりではありません。競合相手を知ったうえで、客観的に自社を分析することも重要です。改めて競合企業と比較することで、自社の強みや弱みが明らかになることも多々あります。

自社を分析するには、3C分析やSWOT分析などのフレームワークが役に立ちます。これらのフレームワークの詳細については後述するので、ぜひ参考にしてみてください。

⑥自社と競合をマッピングする

自社と競合の立ち位置を把握するために、ポジショニングマップを作成します。ポジショニングマップは「縦軸」×「横軸」のシンプルな2次元図です。

軸の取り方は分析内容によってさまざまですが、「KBF(重要購買要因)」に基づいて決めるのが基本です。ここではKBFを基にした、代表的な軸の決め方を4つ紹介します。

  1. 価格・品質による軸
  2. 商品の機能や特性による軸(端末の処理速度や稼働時間など)
  3. 顧客へのベネフィットによる軸(ホテルの立地や顧客体験など)
  4. 商品の用途による軸(自動車向けや半導体向けの部品など)

ポジショニングマップを作成することで、競合企業と差別化し、優位性を発揮できる自社のポジションを明確にできます。

⑦自社の強み・弱みを活かした戦略を策定・実行する

これまでの手順で明らかになった自社の強みや弱み、競合優位性を発揮できるポジションを基にして、戦略を策定・実行します。

策定する戦略は、ポジショニングマップを参考に決めるとスムーズです。一例として、競合優位性を意識した戦略を紹介します。

  • 価格競争が激しい市場だからこそ、あえて品質やアフターサービスに力を入れて差別化を図る
  • 今の市場では汲み取れていない商品の使用用途に着目し、新商品を開発する
  • 競合の少ないポジションを狙う

このような戦略を事業計画に反映したり、新商品の開発、既存商品の改善などに活用したりすることができます。

競合分析に使えるフレームワーク

競合分析では、無数の分析対象をある程度絞るために、フレームワークを用いるのが基本です。競合分析でよく用いられる5つのフレームワークを紹介します。

①SWOT分析

SWOT分析とは、内部環境と外部環境を「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの項目から分析するフレームワークです。自社が置かれている状況を内部環境と外部環境の2つに分け、それぞれのプラス要因とマイナス要因を明らかにすることで、自社事業を取り巻く環境を整理します。

  • Strength(強み)→内部環境 × プラス要因
  • Weakness(弱み)→内部環境 × マイナス要因
  • Opportunity(機会)→外部環境 × プラス要因
  • Threat(脅威)→外部環境 × マイナス要因

内部環境とは、社内でコントロールできる領域で、主に経営資源を指します。一方で、外部環境とは社内でコントロールできない領域で、市場や競合会社の動向などが該当します。競合分析の内容をSWOT分析に活用するためにも、内部環境は「競合会社と比較して明らかになった強み・弱み」、外部環境は「競合他社の動向」を基に作成しましょう。

さらに、SWOT分析の結果を掛け合わせた「クロスSWOT分析」で、より精密に自社を分析できます。

  • 強み × 機会(積極的攻勢)→自社の強みを活かして、新たな機会を探る
  • 強み × 脅威(差別化)→自社の強みを活かして、脅威を回避する
  • 弱み × 機会(段階的施策)→機会を逃がさないために、現状維持を図りつつ、自社の弱みを克服する
  • 弱み × 脅威(専守防衛または撤退)→自社の弱みを正しく評価し、現状維持もしくは撤退する

②3C分析

3C分析とは、マーケティングにおける環境分析の手法です。戦略の大まかな方向性を決める際に役立ちます。3C分析では、次の3つのCを分析します。

  • Customer(顧客・市場)
  • Competitor(競合)
  • Company(自社)

3C分析は外部環境や、事業成功に必要な要素「KSF(重要成功要因)」を明らかにすることに長けています。市場を正確に分析することで、競合に対して優位性を発揮できる成功要因を特定します。

>>関連記事|3C分析とは?必要性や手順、フレームワーク、具体例などを解説

③4P分析

4P分析は、具体的なマーケティング戦略や商品の施策を決める際に用いるフレームワークです。3C分析が戦略の大まかな方向性を決めるのに対し、4P分析は具体的な内容を決定するために利用されます。以下4つの視点から分析を行います。

  • Product(製品)
  • Price(価格)
  • Place(流通)
  • Promotion(販売促進)

4P分析は、競合優位性を考えるうえで、自社が持つ独自の強みである「USP(Unique Selling Proposition)」を特定するのに適しています。企業視点で自社製品を分析することで「競合他社と比較してどのような強みを持つのか」を明確にすることができます。

④4C分析

4C分析とは、4P分析と同じく、具体的なマーケティング戦略や商品の施策を決める際に用いられるフレームワークです。4P分析は企業視点なのに対し、4C分析は顧客視点で分析するのが特徴です。4C分析では、以下4つの視点から分析します。

  • Customer Value(顧客価値)
  • Cost(コスト)
  • Convenience(利便性)
  • Communication(コミュニケーション)

4C分析は単体で用いるフレームワークではなく、4P分析と併用することで初めて効果を発揮します。企業・顧客の両視点からマーケティング戦略や商品設計を分析し、競合相手よりも優位性を発揮する施策を決め、実行するのに有用です。

⑤PEST分析

PEST分析とは、マクロ環境を分析するフレームワークです。ミクロ環境とは異なり、マクロ環境は自社の力ではコントロールできません。このマクロ環境を分析することで、自社に与える影響を読み解きます。以下4つの要素を分析対象としています。

  • Politics(政治)
  • Economy(経済)
  • Society(社会)
  • Technology(技術)

PEST分析で世の中の動向を分析することにより、市場の将来性や変化を捉えることが可能です。

3C分析の前にPEST分析を行うことで、競合や顧客といったミクロ環境分析の精度が高くなります。3C分析はミクロ環境を分析するのに長けていますが、視野が狭くなってしまいがちなので、外部要因による想定外の影響を把握しきれません。PEST分析、3C分析という順でマクロ環境からミクロ環境に落とし込むことで、分析の精度がより高いものになります。

競合相手をミクロ分析できるフレームワーク「5F分析」

自社が属している業界の構造を知るのに便利なフレームワークが「5F(ファイブ・フォース)分析」です。ミクロ視点で競合相手を分析する際に、競合会社を決める5F分析が役立ちます。

ファイブ・フォースは、アメリカの経営学者であるマイケル・E・ポーターが提唱したもので、日本語で「5つの脅威」と訳されます。このモデルでは、企業が市場で直面する脅威として、次の5つを挙げています。

  1. 業界内の競合他社
  2. 新規参入事業者
  3. 代替品
  4. 交渉力の強い買い手企業  
  5. 交渉力の強い売り手企業

この5F分析は競合分析において非常に重要なフレームワークなので、5つの脅威について、次から詳しく解説します。

①業界内の競合他社

1つ目の脅威は、同業界にいる競合他社です。ビール業界であれば「サントリーホールディングス株式会社」「キリンホールディングス株式会社」「アサヒグループホールディングス」「サッポロホールディングス株式会社」は、お互いが同じ業界内の競合他社となります。

ただし注意が必要なのは、同業界にいる会社が、必ずしも競合になるとは限らない点です。例えば産業廃棄物処理業界のように、地域によって担当する企業の棲み分けが明確に決まっているような業界では、同業界内にいる会社が競合相手とはならないことも往々にしてあります。

②新規参入事業者

2つ目の脅威は、同業界への新規参入事業者です。例えばキャッシュレス決済市場においては、それまで主体であったクレジットカードや電子マネーを差し置いて、2018年頃からPayPayを筆頭としたQRコード決済事業が台頭しました。

新規参入事業者であるPayPay株式会社は、創業からわずか約3年で、国内トップの決済サービス事業者にまで急成長しています。市場の変化が激しい現代においては、新規参入事業者の脅威はますます大きくなっているといえるでしょう。

③代替品

3つ目の脅威は、自社商品の代替品となり得る商品です。自社と同様の商品でなくても、代替品を提供する企業は競合会社となり得ます。これは同業界に限らず、異業種にも共通する要素です。

例えば、家庭用のゲーム機器の代替品には、同じくアプリでゲームをプレイできるスマホやタブレットが該当します。

④交渉力の強い買い手企業

4つ目の脅威は、交渉力の強い買い手企業(顧客)です。違和感を覚えるかもしれませんが、実は買い手企業も自社の競合会社と捉えることもできます。

よくあるケースは、BtoBで顧客が大手企業の場合です。BtoCと異なり、BtoBではよく価格交渉がされます。大手企業は購入においての交渉力が強いので、売り手に対して値下げ交渉をするケースがあります。売り手がやむを得ず応じることになれば、結果的に自社の利益が損なわれることになるのです。

このようなケースにおいては「買い手が、売り手にとって利益を奪い合う競合会社」と捉えられます。

⑤交渉力の強い売り手企業

5つ目の脅威は、交渉力の強い売り手企業(仕入先)です。買い手と同じく、交渉力の強い売り手企業も競合会社と捉えられます。例えば、自社製品の仕入先が、市場で1社のみだとしましょう。この1社は強い交渉力を持つため、独占禁止法に抵触しない範囲で、高い価格で販売することが可能です。

買い手は簡単に販売価格を下げられないので、仕入価格が高くなれば自社の利益は損なわれてしまいます。結果、「売り手が、買い手にとって利益を奪い合う競合会社」と捉えられます。

競合他社に優位性を発揮する3つの方法

競合他社より優位に立つには、具体的にはどのようにすればよいのでしょうか。競合優位性を発揮するための方法を3つ解説します。

①低コスト化による低価格での提供

競合優位性を発揮する方法としてよく考えられるのは「低コスト化による低価格での提供」です。顧客には「同等の商品を手に入れるなら安いほうがいい」という心理があるので、単純に価格が安くなれば顧客は増えます。競合優位性を発揮する方法としては、もっともシンプルといえるでしょう。

しかし、価格競争はコストを切り詰めることになります。短期的には売上を作れる可能性がありますが、中長期的に見れば企業体質を疲弊させるため、あまりよい方法とはいえません。

競合分析の本質は、競合にはない自社の強み、いわゆる「バリュープロポジション」を作ることにあります。価格を下げることは有効な手段の一つではありますが、まずは別の方法を検討してみましょう。

②他社にはない独自性のある商品・サービスを持つ

他社にはない独自性のある商品・サービスを持つことは、競合優位性を発揮する方法として強力です。いわゆる「ブランド力」と呼ばれるもので、競合にはない、自社唯一の価値を提供できます。

株式会社ファーストリテイリングが運営するファストファッションブランド「ユニクロ」を例に考えてみましょう。以前は機能性よりもファッション性を重視していたアパレル業界において、ユニクロはあえて機能性を重視する戦略を取りました。機能性を追求することで「着心地」に重点を置いたことによって、老若男女、年齢を問わず親しまれるトップブランドにまで成長を遂げています。

さらに、企画から製造、販売までを一貫して自社で行うSPAによって低価格で提供できている点においても、他社に追随を許さないブランディング化に成功しているといえます。

ただし、独自性のある商品を展開することは容易ではありません。たとえ競合ブランドにはない商品を開発できたとしても、他社が追随することが多く、競合に優位性を発揮するには相当な企業努力を重ねる必要があるでしょう。

③特定の市場や製品などに集中する

中小企業や零細企業などでよく取られている手法として「特定の市場や製品などに集中する方法」があります。量的経営資源が市場のトップ企業より劣る場合においても、競合に優位性を発揮できる有効な手段です。

特定の市場への集中戦略の成功例としてよく挙げられるのは、自動車販売を行う「スズキ株式会社」です。スズキ株式会社は、トヨタ自動車や日産自動車などの強力な競合がいる自動車業界で、経営資源を「軽自動車」に集中しました。大手企業に真っ向から対抗せず、競合が力を入れなかった軽自動車に絞って注力することで、結果として「軽自動車といえばスズキ」というポジションを確立しました。

特定の市場や製品に集中することは価格競争からの脱却にもつながるため、低コスト化に疲弊する企業にも適した戦略です。

まとめ:競合分析で自社の強み・弱みを正確に把握する

競争の激しい日本市場において、競合分析は必須のタスクです。競合に優位性を発揮する方法を考えるのは、企業にとって半永久的な課題といえます。競合分析にあたって、正しく自社のポジションを確立するには、下地となる市場調査や顧客分析が不可欠となります。

当メディアを運営する株式会社マーケティング・リサーチ・サービスは、お客様の課題を解決するリサーチ会社です。自社や競合の製品の利用状況を調査するためのインターネット調査や訪問調査、会場調査などを得意としております。新規事業や既存商品の改善などのために競合分析をしたい企業様は、ぜひ弊社までお問い合わせください。

(digmar編集部)