「新主食」で累計300万食突破。3周年のZENBが語る商品開発・企画の経緯と未来

ミツカングループである株式会社ZENB JAPANは2019年3月に事業を開始し、2020年9月に発売した「ZENB ヌードル」は2022年3月時点で累計300万食を突破しました。

今回は、そのZENB JAPAN様にご協力頂きまして、「新主食」というメッセージとともに、生活者に受け入れられるための商品開発/企画、マーケティング面での工夫にはどのようなものがあったのか、また今後のブランドが目指す未来について、インタビューを行いました。

【会社概要】
株式会社 ZENB JAPAN
(https://zenb.jp/)
事業内容:ミツカングループZENBの通信販売

【お聞きした方】
株式会社 ZENB JAPAN
長岡様

<開発経緯やブランドについて>

お酢を始めとした調味料メーカーである御社がどのような経緯でこの商品の開発に至ったか、お聞かせください。

ミツカンは1804年創業ですが、お酒を造る際に出る酒粕を使って酢を作ったことが始まりです。
それまで捨てられていたものを利用する、そのような創業時の精神を受け継いでいるのが「ZENB」です。

創業215周年を迎えるにあたり10年後、20年後の未来の食生活を見据え、ミツカンという会社がどんな形で貢献していけるかを考え始めました。それが2018年11月に出した『未来ビジョン宣言』です。
『未来ビジョン宣言』は、大きく2つの方向性を打ち出しています。一つが、美味しさと健康の一致です。
体に良くないもの 油や塩分など を積み重ねていくと、味としては美味しく満たされるものになりますが、体に負荷をかけるような生活習慣病のもとになったりします。一方で、サプリメントのような体に良い成分だけ抽出したものを摂るのは体に良いかもしれませんが、美味しさを両立できていない場合も多いです。ミツカンとしては、その両方を満たすことができるものを提供することで、食生活に貢献していきたいという思いがあります。
もう一つが、人と社会と地球の健康です。人の健康だけではなく、環境への配慮など、社会や地球の健康も含めた食生活を考えて提供していきたいという方向性を出しました。

そうした考え方を商品化したのが「ZENB」です。未来ビジョン宣言と並行してZENBブランドを開発していたので、「ZENB」はある意味未来ビジョン宣言の象徴のような存在です。

「ZENB」には、植物を可能な限りまるごと使うというコンセプトがあります。これに関しても未来ビジョン宣言が背景にありますが、50年、100年後を考えると人口増加による、動物性タンパク質の不足や家畜の二酸化炭素排出による温暖化への影響の懸念があります。最近、代替肉などフードテックの動きが広がっていますが、我々も植物性のものでそうした課題が解決できる商品を作れないか、という発想からスタートしました。

そのなかで、加工段階で捨てられてしまっていた本来食物繊維 やポリフェノールなど栄養が多く含まれている植物の芯や皮を使い商品化することで、環境にも優しく未来の食生活に貢献できるのではないかと考えて開発してきました。

なぜ「ZENB」というブランド名になったのでしょうか。

“まるごと使う”ことから、「マルゴト」という案もありましたが、キャッチーでコンセプトが伝わりやすいという理由で「ZENB」が採用されました。Uをつけて「ZENBU」という案もありましたが、当初から海外展開も見据えていたのでこのブランド名になりました。ちなみに海外では「ゼンビー」と呼ばれることが多いようです。

ミツカンというブランドを前に出していないのは理由があるのでしょうか。

このような背景の中で進めてきた商品ですので、ブランドを大切に育てていく必要があります。特にミツカンとの関係性を隠しているわけではないのですが、新しい食文化を作っていくブランドとしてZENBを浸透させていくためにこのような見せ方になっています。

販路を従来のミツカン商品のような小売店展開ではなく、立ち上げ当初からD2Cで行っていることもそうした考えによるものです。
スーパーの棚を見ても「健康によい商品」がコモディティ化している中で、商品の展開やメッセージが届く機会が売上に左右されてしまうことは避けたく、ブランドコンセプトに共感いただける方にしっかりと商品を届けていくことでブランドを育てていきたいと考えています。

<商品展開について>

商品ラインナップとしてはバーやペーストから始まり、現在では「新主食」としてヌードル、マカロニ状の「マメロニ」を提供されていますが、当初からこのような商品展開を想定されていたのでしょうか?

主食のような商品展開の構想はブランド名がつく前からありました。糖質制限やグリテンフリー、ダイエットなどを目的に最近主食を取らなくなってきているので、そのような人に対して、我慢せずに主食を食べてもらえるような商品を作りたいと考えていました。ブランド全体としてミツカンが持つ従来の製造技術を生かしつつ、構想に合わせて試行錯誤を行いながら開発を進めており、ヌードルの開発には構想から3年くらいかかりました。
今は麺ですが、今後違った形の主食も考えていきたいと思っています。

ヌードルの発売当初については、まずは生活習慣が気になる人などがターゲットだったと思いますが、300万食以上が販売されている現在、どのような人が購入されていますか?
また、発売前に想定されていた層と実際の購入者層の違いがありますか?

もともとはエシカルな食生活を送りたい人、健康・安心を意識するような人を想定していたのですが、ヌードルについてはそれ以上に幅広い層向けの”取りやすい商品”になっています。

食物繊維やたんぱく質が多いので、当初は健康志向の商品を少々値段が高くても進んで買う人が購入すると想定していました。それに加えて現在は、グルテンフリーの生活を送っている人にも使っていただいています。

今までグルテンフリーと言うと、「美味しくないもの」というイメージがありがちでしたが、「この商品なら食べられる」というお声もいただき、美味しさを評価いただくことで美容やダイエット、健康を意識する人たちが購入しています。イメージとのギャップということで言えば、「美味しさ」を求めているグリテンフリーの方々が顕在化しているというのは意識していなかった部分ではあります。

おっしゃられた通り、普通の麺と変わらない美味しさに驚きのある商品ですが、「美味しさ」の訴求について課題や考えられていることはありますか?

もちろん従来どおり美容や健康も強く訴求していきたいですが、美味しさを感じてもらうのはすごく大事だと思っています。
さきほど構想から3年かかりましたと言いましたが、実はそのうち現在の「黄えんどう豆」で開発することに決まってから発売まで2年ぐらいかかっています。麺そのものを開発するまでは割と早かったのですが、普段なら捨てる薄皮までまるごと豆を活用しながら、麺好きな日本人に受け入れられ、食べ続けてもらえる、かつ量産化できる美味しい麺にすることに非常に苦労し時間がかかりました。シェフやお客様の意見を聞きながら開発にこだわってきました。

そうしたこだわりから生まれた美味しさの魅力については、どうしても言葉や広告などで表現しきれない部分もあるので、やはり体験をしてもらうようなことが有効になります。リアルのコミュニケーションや外食などの接点を大事にしていかなくてはいけないと思っています。
実際、食べていただいた方からも「こんなに美味しいと思わなかった」のような感想は多くあり、「期待してなかった」とか「美味しくなさそうに見えた」のような事前のイメージとのギャップがあることもわかっています。いかに多くの方に食べていただき、こうした感想のような体験をしてもらうかが課題であると感じています。

ユーザーとの接点はどのように作られていますか?

今は外食とのコラボレーションや、イベントなどに出店しています。また、トライアルのハードルを下げるために、初回購入では価格を下げての提供も行っています。

認知が広がってきていることもあり、業務用の提供についても引き合いが強くなってきています。

販路の広げ方とユーザーへの伝え方について、今後の方向性について教えてください。

販路については、短期的にはイベントやキャンペーン時に小売店に置いてもらうことはあるかと思いますが、基本的には変わらずD2Cを軸として、一般の小売店に積極的に広げていくことは現状考えていません。

ユーザーに対しては、今はヌードルのイメージが強いかもしれないですが、今後はもっと他の商品も発売していこうと思っています。もともと「おいしく、体にも良く、環境にもやさしい、新しい未来の食生活を提案していこう」という思いで、365日6食、一年間で1日3食プラス間食にも食べてもらえるものを開発していこうというところからスタートしています。もっと商品を揃えて「ZENB」として「こういう食生活を提案できるブランドなんだ」と知ってもらうことを重視していきたいです。

そのメッセージについてですが、「新主食」という表現と、「健康によい商品」という即時的な機能との両方をバランスを取りつつ訴求することが難しいような印象を受けます。そのあたりはどのようにお考えですか?

そこは悩みどころでもあります。「グルテンフリーの麺」ということだけでなく、ZENBヌードルという商品の背景にある、ZENBが持つコンセプトに共感していただくことが重要ですので、そうしたことを意識して伝えていかなくてはいけないとは思っていますし、今後色々な商品を出していく中で、より理解をいただけるブランドを育てたいと考えています。

<リサーチについて>

どういった形式やタイミングで、データや消費者へ声を収集しているのでしょうか?

ブランド名については自社内で独自に検討しましたし、事業を始める前に商品の需要調査を行いはしましたが、お話した通り先々を見据えて立ち上げたブランドですので、その時点ではあまり調査データを重視してはいなかったです。

お客様も増えてきた最近では、購入いただいた方に対してアンケートを行い、どのような人が買っているのか、どのようなところが気に入って購入しているか、どのような使い方をしているのか、といったものを定量的に取っています。また、お客様に直接アプローチをして、毎月オンラインインタビューも行っています。実際にZENBスティックは過去2回ほどリニューアルをしていますが、インタビューの意見を参考にしていますし、最近発売のリッチテイストの商品は、5人のお客様と一緒に開発した商品です。

こういった取り組みは購入者のデータが取れるD2Cでこそやりやすいと感じています。

おもにどのような方を対象に意見を聞いているのでしょうか?

いろいろな立場の方から聞くことが大事だと思っています。ヘビー層にも行いますし、購入を止めてしまった人にもインタビューします。ヘビー層の意見が一番参考にはなりますが、やはり、止めてしまった人やあまり使わない人もその差ってなんだろう?と、気になりますので意見も聞くようにしています。

離脱した原因としてはどのようなところが見えていますか?

離脱要因は価格が一番になります。あとは、普段から乾麺をあまり食べていない人が購入すると、使いきれず止めてしまうケースです。ZENBヌードルが評価をいただいているポイントとして、パスタ、ラーメン、焼きそばなど色々な用途、味付けで使える点があるので、そうしたポイントもきちんと伝えていくことで離脱を防いでいきたいと考えています。

<今後について>

立ち上げから3年が経ち、ヌードルだけでなくブランド全体に共感している人が増えているように感じます。

当たり前なのかもしれないですが、やはりZENBブランドへの理解が深い方ほど使ってくれていますし、ヌードルだけではなくスティックやペーストなども使いこなしている人も多いです。そうした方をより増やしていきたいですね。

ファン化の促進の観点ですと、ユーザーコミュニティのような展開はされていますか?

個別のインタビューはオンラインで定期的に実施していますが、ファンミーティング的なものはご時世もあり、過去に企画したこともありましたが実施できていません。今後オンライン、オフラインでの実施を計画中です。

現在3周年を迎えられましたが、想定していたロードマップどおりに進展していますか?

商品開発という面では計画からのギャップもあるのですが、ブランド・商品の受け入れられ方については、着実に広がってきているという実感はあります。

これからさらにブランドを拡大させるために、乗り越えなくてはならない課題はありますか?

繰り返しになりますが、ヌードルだけではなく他の商品も発売しながら、ZENBが未来の食生活を提案するブランドだということを、きちんと知ってもらうということが大事だと思います。魅力のある商品とともに、そうしたコンセプトの訴求を継続的に行っていく必要がありますね。

もっと狙っていきたい、使ってほしいユーザー層はありますか?

全体的にまだまだ知られてないのが現状です。美容・健康に関心がある方など今主に購入していただいている方を中心に、認知の底上げを行うことがまずは必要だと考えています。そこから、年齢関係なく、ZENBの提案する食生活に共感してくれる人の輪を広げていきたいと思います。

最後に、今後の商品の方向性について教えて下さい

主食を中心にしながら、食生活における多くのシーンで使えるような商品展開を考えています。例えば、昨年発売したマメロニという商品も、主食としてだけでなくおかずに使ったり、炒めものに使ったり、色々なシーンで使うことができます。ヌードルは食べないけどマメロニなら食べる、といった方もすでにいたりしますし、今度も生活の中でのさまざまなニーズに応える商品を提供していくことが大事だと感じています。

ZENBは今後も、植物を可能な限りまるごと使った食品で、より多くの方に「おいしくてカラダによく地球にもやさしい新しい食生活」が気軽に実践できる品揃えを増やしていきたいと思います。

<インタビューを終えて>

私たちは仕事柄、商品の開発やブランド意識など消費者側を分析することが多いです。また企業のマーケティング担当者ともお話しをする機会はございますが、今回のように、立ち上げから商品開発、そして現在に至るまでの一連の話を聞ける機会はほとんどなく、とても貴重なを機会を頂いたと感じます。
会社名にも由来している「植物を可能な限りまるごと使う」というコンセプトをもとに、商品開発の経緯や販売展開、今後についてもお話頂き、同社がどのようなマーケティング活動しているかがよくわかり、その中で特に印象に残っているのが「言葉や広告などで表現しきれない部分もあるので体験が必要」というところです。体験をしてもらえれば良さを理解してもらえるという自信のある一方で、どのようにしたら体験してもらえるかという訴求や販売の難しさが伝わってきました。
今後もマーケティングリサーチという側面だけではなく、各企業様のマーケティング活動を取り上げていきたいと思います。
改めまして、貴重な機会を頂いたことにZENB JAPAN様には深く御礼申し上げます。

取材協力:株式会社ZENB JAPAN

(digmar編集部)