ID-POSリサーチとは?メリットや活用例などを解説

ID-POSリサーチとは、消費者の購買履歴であるPOSデータと、消費者情報であるIDが紐づいた「ID-POSデータ」と、アンケートなどの「リサーチ」を組み合わせた市場調査(マーケティングリサーチ)の手法です。販売実態だけでは把握できない購買動機などもリサーチに よって補足できるため、消費者行動を深く調査することができます。本記事では、ID-POSリサーチの手法やメリット、活用例や注意点を紹介します。

ID-POSリサーチの基礎知識

ID-POSリサーチとはどのようなものなのか、知る上で欠かせないID-POSについても触れながら、ID-POSリサーチの意味、手法について解説します。

ID-POSとは

『ID-POS』とは、登録された購買情報などの顧客情報であるIDとPOSデータを組み合わせデータです。(POSとは、「Point of Sales」の略で、小売店のPOSレジにおける販売履歴を記録・管理するシステム、あるいはそのデータを指します。)
具体的には、POSデータの「いつ、何の商品が、何個、何円で売れたのか」という購買情報のデータと、ポイントカードの属性情報(居住地、性別、年代)データを組み合わせたデータがID-POSであり、「どのような人が、いつ、何の商品を、何個、何円で買ったのか」という購買行動を詳細に分析できるようになります。

ID-POSリサーチの意味

ID-POSリサーチとは、前述したID-POSデータと、その他のリサーチ手法を組み合わせる調査・分析手法です。ある個人の購買情報と、アンケートなどのリサーチ手法を組み合わせることで、より深い消費者理解が可能になります。

ID-POSを活用するリサーチ手法

ID-POSリサーチでは、ID-POSデータ分析とあわせてリサーチを実施します。その手法はインターネットリサーチが一般的です 。ID-POSデータの中から調査対象者(モニター)となるIDを抽出し 、なおかつ登録されているメールアドレスからアンケートの案内ができるため、手間なくアプローチできます。アンケート以外のリサーチ手法では、1対1のデプスインタビューやグループインタビューなどの定性調査もよく行われます。

ID-POSリサーチのメリット

ID-POSリサーチには、さまざまなメリットがあります。そのメリットを4つにまとめ、解説します。

ID-POSデータの補完になる

ID-POSデータだけでは、「誰が、いつ、何を、いくつ、いくらで買ったか」といった、日時や商品などの販売情報と個人の購買動向は把握できるものの、購買動機や購買心理までは把握することができません。しかしID-POSリサーチでは、ID-POSデータにアンケートなどのリサーチを組み合わせることによって 、購買の背景・ニーズや購買後の感想・意見などを深く理解することができます。

POS分析を併用することで”深い調査”となる

IDによって調査対象者を特定できるため、ある消費者の行動がどのように変化したのか、時系列のPOSデータを組み合わせたリサーチが可能です。例えば、調査対象者をID-POSデータで商品購入の継続者と離反者に振り分け、それぞれの行動の背景をリサーチしたり、キャンペーン期間の購入点数をデータ分析しキャンペーンの効果検証をすることができます。

ID-POSデータ分析を組み合わせることで調査精度が向上する

市場調査では、テーマに合った調査対象者を絞り込めるかどうかが、調査結果の質を左右します。一般的な市場調査では、例えば対象商品の購入者に対して調査を実施したい場合、アンケートの回答状況などの自己申告によって、購入者かどうか特定します。一方、ID-POSリサーチでは、ID-POSデータという正確な購買データによって調査対象者を抽出できるため、調査の精度が高くなります。

ID-POSデータ分析から対象者を抽出するため出現率が低くても調査ができる

前述したように、商品の購入経験がある人に対象を絞って調査を実施したい場合があります。しかし、新商品の発売直後や、該当商品が浸透していないエリアで調査を行うなどの場合、購入者数が少ない、いわゆる「出現率が低い」状態のため、調査対象者探しに苦労することがあります。その点、ID-POSリサーチなら、ID-POSデータを元に該当する人物を特定 できるため、出現率が低い状況であっても、実施できるようになります。

ID-POSリサーチ・分析の活用例

ID-POSリサーチの活用例について、具体的な場面を挙げて、活用方法を解説します。

競合他社とポジショニング比較に利用

実際の商品購入者を特定し対象にできるので、競合他社の商品購入者との比較ができます。アンケート結果を、クロス集計から散布図で視覚的に表す「コレスポンデンス分析」などを活用し、自社商品と競合他社商品の違い(イメージや購入理由、使用評価など)をマッピングすることで、統計表よりわかりやすくその違いを分析することができます。

TVCMやキャンペーン効果検証に利用

TVCMやキャンペーンの効果測定も効果的です。例えば、ある商品の購入者をID-POSデータから特定してアンケートを実施します。そのアンケートの中でTVCMの認知の項目を設けて認知状況を把握します。そうすることで、購入者での認知と非認知者を推計することができ、その差分がTVCMによる効果と判断することができます。

販売価格の受容性検証に利用

実際に商品購入経験がある人を対象に価格受容調査を実施することで、より精緻な結果を得ることができます。よくPSM分析(Price Sensitivity Measurement)を 活用することが多いのですが、商品価格に対する4つの感度(「高すぎる」「高い」「安い」「安すぎる」)をアンケートによって聴取します。その時に、自社や他社商品の購入経験がある人を正確に絞り込んで価格に対する実感を集計できるため、高い精度で分析することができます。

ID-POSリサーチで意識すべき注意点

ID-POSリサーチの実施において意識すべき注意点を2つ解説します。

実施可能性を調べる

前述したようにID-POSリサーチでは購買経験者を対象に調査することが可能となりますが、多く の会員登録者や一定数の購買者がいることが条件となります。リサーチを実施する前に、サンプル数とその中身を検討するなど、調査の実施可能性、つまりフィジビリティを確認しなければなりません。

提携先の多い調査会社を活用する

ID-POSリサーチを行う際、調査会社によって提携している会員基盤が違うため、すべての販売店の購買履歴を活用できるわけではありません。コンビニ、スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンターなどさまざまなチャネルがありますが、どのような販売データを用いてリサーチできるかは調査会社によってそれぞれ異なりますので、事前に調べておくことが必要です。

当社マーケティングリサーチサービスは、コンビニ、スーパー、ドラッグストアなどの会員基盤を持つ企業と提携しており、多種のカテゴリーでID-POSリサーチを実施することができます。

余談ですが、POSデータではなく、消費者のレシート情報から分析する「IDレシート」を活用した方法もございます。詳しくはこちら

ID-POSリサーチのまとめ

ID-POSリサーチは、ID-POSデータとリサーチを組み合わせた調査・分析方法です。POSデータから取得できる個人の購買動向にとどまらず、リサーチすることで購買理由など、消費者の背景まで深く理解することができます。また、実際の購買データから購入者をセグメントできる正確性、新商品の発売直後など出現率の低い場合でも購入者にアプローチ可能な迅速性も大きな特徴です。ID-POSリサーチの実施においては、フィジビリティを確認すること、提携チャネルの多い調査会社を活用することを意識すべきです。もしID-POSリサーチを実施したいと考えている方は、多くのチャネルと提携している当社までご相談ください。また、質問などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

<おすすめ本>
書名:ID-POSマーケティング――顧客ID付き購買データで商品・ブランド・売り場を伸ばす
著者:本藤 貴康 , 奥島 晶子

ID-POSについて学びたい人はこちらの本をおすすめします。ID-POSマーケティングについて、マーケティング理論からID-POSの活用方法までわかりやすく書かれており、理解しやすいと思います。

(digmar編集部)