写真で観察!キッチンシンクの食器用洗剤、どのように置いていますか?
アンケート調査やインタビュー調査の設計で、現状に対する仮説を考える際、ちょっと実際の現場を見てみたいと思うケースは多いかと思います。そのような軽く実態を把握したいといった場合に、対象者に写真を撮ってもらい、それを観察するという簡易的なフォトエスノグラフィーのような方法が使えるのではないでしょうか。
そこで今回は、実際に写真の観察調査をやってみて、実態把握の方法としてどのように使うことができるのかを検証してみました。
今回観察する事例は「キッチンのシンク周り」で、観察テーマは「食器用洗剤の容器をどのように置いているか」です。
主婦の方37人に、「食器用洗剤やスポンジなどの道具が写るように、シンクの写真を撮ってください」とお願いし、ご自宅のキッチンのシンク周りの写真を送っていただきました。その写真をもとに「どのような容器を使っているのか」「どのように置いているのか」「他の道具や食器類はどのように置いているのか」といった観点で気づいたことや、疑問点などを挙げてみます。
【調査の概要】
調査手法:webアンケート上で写真をアップロード
調査対象:20~59歳の既婚女性(インターネットモニター)
調査期間:2023年6月23日~6月30日
サンプル数:37名
調査主体:弊社(株式会社マーケティング・リサーチ・サービス)
目次
キッチンシンク 写真観察の例
送っていただいた37枚のキッチンのシンク周りの写真から、特徴的なものをいくつかピックアップして見てみます。
Case1:20代・正社員勤務・旦那さんと2人暮らし・一軒家(持ち家)住み
写真から見られる特徴
- シンクの上にラックを設置して、食器や調理道具などをシンクから浮かせて保管している。
- たわしはシンク内の網かごの中に入れていて、スポンジはラックに設置した網かごに置いている。
- シンク内の網かごはサイズが小さく、たわし2個を入れた状態でスペースがなさそうに見える。スポンジを入れている網かごはスペースに余裕がある。
- 食器用洗剤はシンクのフチ(右奥)に、浮かせずに直置きしている。
- 洗剤の容器はボトルタイプの本体容器を使っているが、パッケージがはがれて無地のボトルになっている。
Case2:20代・正社員勤務・旦那さんと2人暮らし・集合住宅(賃貸)住み
写真から見られる特徴
- スポンジを2種類使っていて、シンク内の網かごの中に入れて、浮かせて保管している。
- 食器用洗剤はシンクのフチの、蛇口の右隣に直置きしている。
- シンクのフチの左側にポンプタイプのハンドソープと、スプレータイプの洗剤を直置きしている。
- 食器用洗剤の容器は、ボトルタイプの本体容器を使っている。
Case3:20代、専業主婦、旦那さんと2人暮らし、集合住宅(賃貸)住み
写真から見られる特徴
- シンク内に備え付けの網かごがない。
- スポンジを3つ使っていて、1つはシンク内に吸盤で貼り付けるタイプのスポンジ置きに、2つはシンクのフチの蛇口の右隣にかごを設置して、その中に入れている。
- スポンジ入れの隣に雑巾を置いている。
- 食器用洗剤とハンドソープはシンクのフチの左側に直置きしている。
- 食器用洗剤の容器は本体容器を使っているが、パッケージがはがれている。
Case4:50代、パート勤務、旦那さんと中学生、高校生のお子さんの4人暮らし、一戸建て(持ち家)住み
写真から見られる特徴
- 食器用洗剤、台所用漂白剤、スポンジをすべてシンク内の網かごに入れて浮かせて保管している。
- キッチンスポンジとアクリルたわし、柄付きスポンジの3種類を使っている。
- 柄付きスポンジはシンクのフチの右側に立てて置いている。
- 食器用洗剤はポンプタイプの透明な別売りの容器に詰め替えて使っている。
以上、送っていただいた写真の中からいくつか取り上げて、それぞれの写真から見られる特徴を挙げてみました。
次にいただいた写真を、写真の観察から得られた傾向をまとめてみます。
食器用洗剤の置き方は「浮かせずに直置き」が多い
37名のシンクの写真を観察したところ、37名中21名が、食器用洗剤を網かごやフックなどを使って浮かせたりせずに、直接シンクの上に置いていました。置き方としては、蛇口の隣などシンクのフチに置いている置き方がほとんどでした。
直置きしている人のシンクを見てみると、網かごが備え付けられていないシンクを使っている人、もしくは、網かごが備え付けられていても、かごのサイズが小さいため食器用洗剤が入らなさそうなシンクの人が多かったです。そういったシンクの方は食器用洗剤やハンドソープの置き場所に困っていて、仕方なく直置きしているのかもしれません。
スポンジはシンク内で「浮かせて保管」が多い
食器用洗剤はシンクの上に直置きしている人が多くいましたが、スポンジについてはシンクから浮かせて保管している人がほとんどでした。保管の仕方としては、備え付けの網かごの中に入れている人が多かったですが、網かごがないシンクの人は、蛇口に取り付けるタイプのスポンジ置きや、シンクの壁面に取り付けるタイプのスポンジ置きなど、別売りのスポンジ置きを使っていました。
食器用洗剤を直置きしている人でも、スポンジは全員浮かせて保管していたので、スポンジは直接シンクに置きたくないという意識を持っている人が多いのかもしれません。
食器用洗剤の容器は「商品の本体容器」を使っている人が多い
使っている食器用洗剤の容器については、商品の本体容器をそのまま使っている人が大半でした。本体容器のタイプとしては、通常のボトルタイプのものがほとんどで、ポンプタイプのものを使っている人は少数でした。
別売り容器に詰め替えている人については、容器はポンプタイプやスポンジを押し当てるタイプのポンプなど、容器タイプは様々でした。容器デザインは無地やシンプルなものが多く使われていました。シンプルな見た目にこだわる人が別売り容器に詰め替えているのかもしれません。
食器用洗剤の本体容器の「パッケージがはがれている」人が一定数いた
商品の本体容器を使っている人のうち、何名かは容器のパッケージがはがれて無地のボトルになっていました。使っているうちにパッケージがはがれてしまったのでしょうか。あるいは、パッケージが汚れてきたのではがしたのでしょうか。それか、無地のボトルにするために、最初からあえてはがして使っているのかもしれません。
パッケージがついている人の写真を見ると、中にはパッケージにシワがついているものがあったので、使っていくうちに汚れてくるのかもしれません。無地のボトルではブランドが分からなくなってしまう可能性があるので、はがれやすいのだとしたらパッケージの強度を改良する必要があるのかもしれません。パッケージをはがしている理由を確認する必要がありそうです。
まとめ
今回は37名の主婦の方にキッチンのシンク周りの写真を送っていただき、写真を観察することで、食器用洗剤などの道具の置き方や容器などの実態について傾向を分析し、そこから仮説を抽出してみました。写真からだけでも様々な特徴や傾向などを見ることができました。
今回の写真の観察からの気付きや疑問点は以下の通りです。
- シンクに網かごがない、網かごが小さい人は、食器用洗剤の置き場所に困っているのではないか。
- スポンジは直接シンクの上に置きたくないと思う人が多いのではないか。
- 見た目のシンプルさを重視する人が別売り容器を使っているのではないか。
- 食器用洗剤のパッケージは、使っていくと汚れてきてはがしてしまう人がいるのではないか。
- 無地のボトルにしたくてあえてパッケージをはがす人もいるのではないか。
「食器用洗剤の置き方」といったことをアンケートで聴取する場合、「シンクの上に置いている」や「網かごの中に入れている」といった選択肢のレベルでしか確認をすることができませんが、フォトエスノグラフィーといった写真観察をおこなうと、「食器用洗剤をシンクのどの部分に置いているのか」「どのような形状の網かごの中に入れているのか」「容器の汚れ具合はどのくらいか」といった詳細な特徴や違いを見ることができるため、消費者の実態についてより具体的なイメージを持つことができます。
次回は自宅の「洗面台」と「浴室」の写真の事例を用いて、同様に観察調査をおこないます。ハンドソープやハブラシ、歯磨き粉などの洗面台周りの道具、シャンプーや洗顔料などの浴室周りの道具について、置き方や容器などの特徴や傾向を分析していきます。
(digmar編集部)