デザイン思考 実践編 ~デザイン思考のプロセスを実例で解説~

デザイン思考の概略については、過去の記事で取り上げてきました。実際の内容は、秘匿の関係で記事内でお伝えするのは難しいこともありイメージも湧きづらかったところもあるかと思います。

そこで今回は特別自主企画として、実際にテーマを決めてデザイン思考のフレームワークに沿って新商品開発のアイデア発想をワークショップを通して行いました。その内容をお伝えし、みなさまの今後ビジネスの参考にして頂ければと思います。

実施にあたっては関東学院大学人間共生学部教授 佐々牧雄先生と佐々ゼミの学生さんにご協力を頂きました。ご協力頂きましてありがとうございます。この場をお借りし改めて御礼申し上げます。

デザイン思考とはどのようなものかを知りたい方はこちらを読んで頂けますと幸いです。

【概 要】

■設定したテーマ(課題)は「新しい文房具(ペン)とその周辺のステーショナリーをデザインする」です。

■以下のデザイン思考の5つのプロセスに沿って進めました。
 Step1:ユーザーを理解する
 Step2:課題点を定義する
 Step3:アイデアを発想する
 Step4:アイデアを形にする
 Step5:検証する

■ワークショップ形式で実施

(参 考)ワークショップ運営上のポイント(※)
 ・他人のアイディアを評価するときは、否定から入らない
 ・質より量を意識する
 ・突飛なアイディアを歓迎する
 ・人のアイディアへの便乗はOK
 ・上下関係など、言いにくい雰囲気をなくす
  ※© 2021 MAKIO SASA, KANTO GAKUIN UNIVERSITY エスノグラフィック・アプローチによるデザイン思考ワークショップ資料より

【実施内容】

Step1)ユーザーの理解

フィールドワークを通して、ユーザーの利用状況の理解をします。実際にはフィールドに出て観察することろですが、今回は時間を短縮するために、先に筆記用具の利用シーンの動画を準備しました。動画撮影とともに、簡易的なインタビュー(なぜそのペンケースを利用しているのか、なぜそのペンを利用しているのか、なぜその本数が多いか、など)もヒアリングしながら、ユーザーの行動理由を合わせて把握しました。

*太さの異なるボールペン・シャープペンを複数持っている女性。全部のペンを入れるとペンケースのチャックが閉まらないが、それに対してあまり気にはしていない。

*この男性は同じ種類の黒のボールペンを複数持っている。それぞれの太さが異なる。0.5mmの太さが気に入っているようで、予備の0.5mmボールペンまで持っている。ボールペンのペン先にこだわりがあるところが発見。

*この女性は左利きです。多くの文房具が右利きにデザインされていると感じていて不満がかなりある様子。写真は開かないように止めることのできるゴムひもがついているノートであるが、そのゴムひもの外しているところを観察すると、右手を使って外すため、かなりやりにくそうにしていた。

Step2)課題を定義する

動画を見て、行動や様子をふせんに記録していきます。例えば、ペンケースに同じ黒のボールペンが太さ違いで何本も入っている。目的の太さのボールペンを選ぶのに、ガチャガチャとペンをさせて探している。

記載したふせんを大きな紙に全部貼り、根本的に似たふせん同士を少しづつまとめいきます。
その後、全体的にどのような傾向(課題点)があるのかを分析し、分析軸の設定します。

このチームでは横軸を「機能性を求める軸」「クセやこだわり軸」と設定、縦軸を「完璧主義・心配性軸」⇔「楽観的軸」と設定しました。

Step3)アイデアを発想する

Step2の課題の定義で定めた分析軸の中で、どこをターゲットエリアにするかを検討します。
このチームでは、第三象限である「楽観的軸」と「機能性を求める軸」を提案のターゲットエリアに選びました。そして具体的なプロトタイプの作成を行いました。
ターゲットエリアの選定方法は様々です。行為・行動が集中しているエリアを設定し多くの人に指示されることが期待できます。逆に全く集中していないところをを設定するとニッチな商品を狙うことができるかもしれません。

Step4)プロトタイプを作る

プロトタイプを作る意味は、頭で考えるより、手で考えるというメリットがあります。つまり、考え込むよりもまずは作ってみようという姿勢です。時間をかけることは許されません。雑なものを作り、多くのアイディアを短時間に視覚化することがポイントとなります。

写真のチームでは、ターゲットエリアから「ペンやノートに磁石を付ける」「重心を自分で決められるペン」をデザインしました。

前者は、普段、ペンを筆箱に入れるとバラバラに入っている(向きが揃っていない)ので、それを解消できるような”ノートを筆箱にように使う”ことを想定して作った作品です。筆箱を持つ必要がなくなります。また、後者はペンに重りを入れることで筆圧が均等に保つことができ、異なる太さのペンを複数持たなくて済むようになることを狙っています。

他のグループの一例

・真っ直ぐに文字がかけないことを逆手にとり、最初からノート自体を長方形にしないというアイデア

Step5)検証

作り上げたプロトタイプの立体を見たり、試しながら「技術的実現性」「経済的実現性」「有用性」を有しているか、検証します。

検証を行った結果、実現が難しい問題点などが発生した場合には、プロトタイプを作り直し、テストや改善を繰り返しブラッシュアップを図っていきます。プロトタイプが良い理由がそこにあるわけです。

まとめ

デザイン思考は、課題解決のための発想法です。多くのビジネスや生活のシーンで役立てることができます。今回の記事では製品に適用した事例でしたが、サービスに適用された事例も数多くあります。

この内容の詳細を知りたい方がいらっしゃいましたら、ご連絡ください。また、デザイン思考に関する質問や研修などのご相談などございましたら、お気軽にご相談ください。

(digmar編集部)