口コミを商品開発に活かすには?収集・分析のやり方や事例を解説!
モノ・サービスが溢れる現代社会において、消費者は自由に商品・サービスを選択できるようになり、その際に口コミが購入の判断材料の一つとして重要視されるようになりました。
このため、口コミをマーケティングに活用する企業が増え、それに伴い商品開発においても口コミを有効活用する事例が増えています。
この記事では、商品開発に口コミを活用する方法や、具体的な収集・分析の手法について解説します。口コミを商品開発に活かしたいと考えている企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
そもそも口コミとは?
口コミとは、商品やサービスを利用した消費者の感想または、利用を検討している人の声を指します。会話やSNS、口コミサイトなどを通じて共有・拡散されます。人の口づてに共有される情報であることから「マスコミ」をもじって「口コミ」と名付けられました。
企業視点で見ると、口コミには広告効果としてのコストパフォーマンスがよいというメリットがあります。広告費を投じずに消費者間で共有されるものであり、よい口コミを拡散してもらうことは今や企業の責任ともいえます。
反対に、消費者視点で見ると、口コミは商品やサービスの信頼性を評価する際の重要な指標となります。インターネットの普及によって、WebサイトやSNSから商品・サービスの口コミを簡単に得ることができるようになりました。そのため、現代の消費者はこれを購入の際の判断材料として積極的に活用しています。
レビューとの違い
口コミとよく混同する用語が「レビュー」です。レビューは「実際に商品・サービスを利用した消費者の声」であるのに対し、口コミは「商品・サービスを利用していない人の噂話」も含まれます。
よって、口コミよりもレビューのほうが情報の信憑性に優れています。そのため、商品開発においては、第三者の伝聞が含まれる口コミを慎重に取捨選択することが不可欠です。
口コミが商品開発に欠かせない理由
商品開発において、顕在ニーズの把握は言うまでもなく必要ですが、商品・サービスが溢れる現代社会では、顧客にも自覚がない「潜在ニーズ」を汲み取ることも求められます。
顕在ニーズに応える商品よりも、潜在ニーズを汲み取った商品を開発するほうが難易度は高いです。そのため、口コミ分析を通じて潜在ニーズを把握し、それに応えた商品・サービスを提供することは、競合との差別化につながり、顧客からの支持を得ることにつながります。
潜在ニーズは、欲求は存在するものの、それが具体的に表れていない状態です。SNS分析手段の一つである「ソーシャルリスニングツール」を利用することで、商品名と一緒に使用される「かっこよくない」「痩せたい」といった言葉から、潜在ニーズを示す共起ワードを抽出することができます。
商品開発を意識した口コミの収集方法
商品開発のための口コミ収集として、有効なやり方を5つ紹介します。
①SNSで収集する
X(旧Twitter)やInstagram、FacebookなどのSNSは、主に若年層の口コミの宝庫です。
Xであれば、検索画面に自社名や商品・サービス名を入力すると、自社に関する投稿が一覧で表示されます。Instagramでも、自社名や商品・サービス名を入れて「#〇〇」というハッシュタグ検索を使うと、関連する投稿を簡単に確認できます。
匿名性が高いからこそ、SNSではより本音に近い口コミを収集することが可能です。リアルな消費者の声を収集・分析することで、よりニーズに応えられる商品の開発につながります。
ただし、SNS上では、インフルエンサーが仕事やアフィリエイト報酬目的で、誇張した表現を用いて商品の口コミを掲載するケースがあります。そのため、インフルエンサーの口コミを参考にする際は、その情報が本当に正しいか精査することが必要です。
②ECサイト等のレビューから収集する
EC展開がされている商品であれば、ECサイトなどのレビューが役立ちます。一般的に、ECサイトのレビューには商品・サービスを利用した顧客のみが投稿するため、純度の高い口コミを収集できます。
特に、商品・サービスに対するネガティブな意見は、商品開発に欠かせない情報です。ECサイトのレビューは長期間残り、購入を妨げる要因となることがあります。一方で、その弱点を克服した商品開発が可能であれば、顧客の満足度向上に寄与し、売上に直結させやすいといえます。
③Googleビジネスプロフィール(旧:Googleマイビジネス)
Googleビジネスプロフィールは、Googleが無償で提供している口コミや会社住所の管理ツールです。例えば、「渋谷 ラーメン」などとGoogleやGoogleマップで検索した際に表示される店舗情報が、Googleビジネスプロフィールです。
Googleビジネスプロフィールでは、店舗情報に加えて口コミも表示されます。SNSと同様に匿名性が高いため、より本音に近い消費者の声を得ることができます。
ただし、この口コミは商品・サービスを利用していないユーザーでも投稿でき、そのうえオーナー側で削除ができません。そのため、荒らし行為も多く、情報の信憑性に欠ける側面もあるため、Googleビジネスプロフィールから口コミを収集する際は情報の取捨選択が必須です。
④個人ブログから収集する
個人ブロガーが自社製品に関する感想や批評をブログ記事に掲載することも多いです。GoogleやYahoo!などで「〇〇(製品名) 感想」「〇〇 レビュー」などと検索すると、ブログを見つけられることがあります。
個人ブログのメリットは、商品・サービスに関する詳細な感想や意見を得られる点です。プラットフォームや投稿内容にもよりますが、SNSや口コミサイトに掲載される口コミは通常、数十文字〜数百文字程度に制約されています。
一方でブログは、数千文字単位で商品・サービスをレビューすることが一般的で、短文では伝わりきらない細かな点まで情報として得られます。個人ブログの詳細なレビューは、企業に新たな発見をもたらし、商品開発にも大いに役立ちます。
ただし、アフィリエイトのように報酬を目的として商品の特長を誇張したり、ネガティブな内容を意図的に隠したりすることがあるため、個人ブログを口コミとして参考にする際は、慎重な取捨選択が必要です。
⑤レビューサイト(口コミサイト)
レビューサイト(口コミサイト)とは、商品・サービスに関する評価・批評を、ユーザーが自由に投稿できるWebサイトです。実際に商品・サービスを利用した消費者のレビューを確認できるので、商品開発や既存製品の改善に役立てることができます。
レビューサイトの事例として、次のようなWebサイトが挙げられます。
- モノシル…美容系の口コミサイト
- Caloo(カルー)…病院の口コミサイト
- みんなの幼稚園・保育園情報…幼稚園・保育園の口コミサイト
自社や自社製品に関する口コミが掲載されていることが条件ではありますが、上記のレビューサイトには検索機能もあるので、1度自社名や製品名で調べてみることをおすすめします。
商品開発を目的とした口コミ分析の手順
次から、商品開発のための口コミ分析の手順を解説します。
①口コミを収集する
商品開発の目的のもと、先述した「来店時に顧客に書いてもらう」「SNSで収集する」などの手段を用いて、口コミを収集します。
ただし、一つのプラットフォームのみから口コミを収集すると、インフラによって情報が左右され、情報が偏りがちです。できる限り多くのプラットフォームから口コミを収集し、客観的な意見を集めるよう心がけます。
②口コミを分析する
次に、収集した口コミを分析します。
収集した口コミは、「好意的な意見」や「商品・サービスに対する要望」、「苦情意見」などに分類できます。このうち、商品開発に活かされるのは、一般的に「商品・サービスに対する要望」と「苦情意見」です。
分類した苦情意見などは、数が多い順に分類します。例えば「使い方がわかりにくい」「容器が開けづらい」といった口コミを分類して、さらに個々の意見を詳細に分析します。
そうすることにより、「使い方がわかりにくい原因は、取扱説明書の内容が不十分であることが考えられそう」「容器が開けづらいという意見が多いので、別の形を検討してサンプルを複数作って試すのがよさそう」といったように、さらに深掘りしながら分析することが可能です。
③分析した口コミを社内で共有してアイディア等を募る
商品開発部門が口コミを分析する際、部署内に情報が留まりがちです。これでは現場の意見が適切に反映されない可能性があります。
口コミを分析した後の手順として、商品開発に進む前に、その成果物を社内で共有することが重要です。例えば、営業に口コミの分析結果を共有することで、「新しい商品には、〇〇の機能に関する資料を追加すればわかりやすい」といった、多角的な意見を得られます。
これにより、異なる視点からのフィードバックを受けることができ、商品の開発や改善においてより包括的なアプローチを取ることが可能です。
④分析した口コミを商品開発に活かす
収集した口コミの分析を完了したら、商品開発に移行します。商品開発の手順は、主に次の通りです。
- 市場分析
- 新製品コンセプトの開発
- 戦略の検討
- 製品の開発・テストマーケティング
- 製品投入
1の市場分析では、必ず新製品のターゲットとなる顧客を設定します。この際、口コミの分析が重要な役割を果たします。口コミによって明らかになった顧客ニーズを新製品に取り入れることで、特定のニーズに応えられる新製品が生み出されます。
口コミの分析を通じて得られた情報を適切に組み込むことで、市場においてより優れた製品が誕生するのです。
口コミ分析の方法
口コミ分析で主に使われる手法を3つ紹介します。
①ソーシャルリスニングツールを使う
ソーシャルリスニングツールは、主にSNSやレビューサイト、個人ブログなどのソーシャルメディアで発信された情報を収集・分析し、商品開発などに活用するためのツールです。
ソーシャルリスニングツールには、主に次のような機能があります。
- SNSでの自社や商品・サービスに関する投稿数
- 口コミを投稿したユーザーの属性(性別や年齢など)
- 投稿内容のポジティブ/ネガティブ分析
- 一緒に発言されている共起ワードの抽出(例えば、〇〇社製の「ワイヤレスイヤホン」を分析すると「バッテリー」「ノイズキャンセリング」などが抽出される)
ソーシャルリスニングツールを使用することで、膨大な数の口コミを効率的に収集できるだけでなく、投稿の“質”に関する情報も分析できます。これにより、顧客の属性、感情、共起ワードなどを把握しやすくなります。
②Pythonでスクレイピングする
プログラミングの知識がある方であれば、口コミの収集・分析を自身で行うことができます。その手法の一つが、スクレイピングです。一般的に、口コミのスクレイピングには「Python(パイソン)」というプログラミング言語がよく利用されます。
Pythonを使用して、対象のレビューサイトの内部情報を解析し、特定のデータを取得します。例えば、飲食店のレビューサイトであれば「顧客の年齢」や「性別」、「スコア」、「投稿内容」などが対象となります。
口コミの収集に加え、Pythonでは分析も可能です。例えば、「スコア」を軸に取得したデータを分析することで、「高スコアを出しているユーザーの性別割合」や「低スコアの投稿内容の傾向」などを明らかにできます。
ただし、一部のレビューサイトでは、スクレイピングの利用が禁止されている場合があります(例えば、Amazonはスクレイピングを禁止しています)。そのため、事前にサイトの利用規約を確認してから、スクレイピングを行う必要があります。
③口コミ分析を外注する
口コミ分析自体を業者に外注する方法もあります。コストは高くなりますが、専門の会社に依頼することで、高品質な分析結果を得ることができます。
口コミ分析の外注先としては、リサーチ会社やコンサルティング会社などが考えられます。これにより、口コミ内容だけでなく、各企業に適した専門的なアドバイスも得ることができるのが外注のメリットです。
④AIを活用する
現代ではAIの発達により、口コミの収集や分析にAIを活用するケースも見られます。
例えば、自然言語処理によって収集した口コミの感情を分析し、ポジティブな内容とネガティブな内容に分類します。「使い勝手が悪い」などのネガティブな内容に対して、「使用方法に関する説明が不十分」といった原因の特定が可能です。
AIを活用することによって、膨大な口コミを抽出し、顧客の感情まで効率かつ的確に分析できるようになっています。
口コミ(顧客の声)を商品開発に活かした事例
口コミを商品開発に活かした成功事例を3つ紹介します。
①ドン・キホーテ
日本最大級の総合ディスカウントストアである「驚安の殿堂 ドン・キホーテ」には、ユーザーから悪い口コミを集めて商品開発に活かす「ダメ出しの殿堂 ドン・キホーテ」というWebサイトがあります。
例えば、ダメ出しの殿堂で投稿された、枕に対する「枕が高くて合わない」「もう少し高さが欲しい」といった口コミをもとに、ドン・キホーテは「4段階で高さを調整できる枕」を開発しました。
あえてユーザーからネガティブな意見を積極的に募り、それを商品開発に活かすことでニーズに応えるという、斬新な商品開発を行っています。
②ユニクロの「ヒートテック」
ユニクロの「ヒートテック」は、“薄いのに暖かい”高機能な防寒インナーです。「もっと薄くてもっと暖かいインナーが欲しい」という顧客の声をきっかけに誕生しました。
ヒートテックは、従来の概念を覆す形で「吸湿・速乾性に優れた新素材のポリエステル」と「中心が空洞化した中空綿糸」を組み合わせて開発されました。2003年から2022年までのグローバルでの累計販売枚数が15億枚を突破し(※2023年9月26日時点)、ユニクロの人気商品の一つとなっています。
参考:株式会社ファーストリテイリング『2017年ヒートテックについて』
③資生堂の「マキアージュ ドラマティックスキンセンサーベース EX」
2019年2月21日より、資生堂はメイクアップブランド「マキアージュ」から、スキンケアまでできるくずれ防止下地「マキアージュ ドラマティックスキンセンサーベース EX」を発売しました。
もともと、化粧品に「くずれ防止機能」を求める声が多く、そのカテゴリーは市場の約45%を占めていました。一方で、くずれ防止機能つきの化粧品を使う女性の7割が持つ「くずれ防止機能だけでは満足できない」という意見に、資生堂は着目します。
これに対応して、マキアージュ ドラマティックスキンセンサーベース EXはくずれ防止機能を向上させつつ、乾燥を感知すると水分を放出して肌にうるおいを与えることで、環境変化による乾燥にも対応した商品を開発しました。
参考:株式会社資生堂『皮脂や乾燥に対応して、マキアージュ史上最高の化粧もちを実現 スキンケアまでできる くずれ防止化粧下地』
まとめ:口コミを商品開発に活かそう
口コミは、顧客の顕在ニーズおよび潜在ニーズが明らかになる貴重な情報源であり、商品開発に欠かせない重要な要素です。口コミを収集し、その内容を分析して商品開発に活かすことが重要です。
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