チルアウトを求める若い世代が急増。チルするって何?
近ごろ、よく目にするようになった「チルアウト」というワード。「チルする」といった表現にも変化し、若い世代の間では、会話の中でもよく使われるようになりました。最近では、チルアウトをコンセプトとする食品も登場し、チルアウト市場拡大の可能性も見えてきました。今回は、チルアウトの意味と商品展開について詳しく解説します。
チルアウトの意味とは
そもそも、「チルアウト」とはどんな意味があるのでしょうか。
チルアウトの由来は、英語の「chill out」で、欧米では友だち同士の間で良く使われている言葉です。日本語では「冷静になる、落ち着く」といった意味に訳されます。
これまで欧米を中心として使われていた表現から、「心を落ち着かせる」といった意味で「チルアウト」という単語が急速に広がりました。若い世代を中心に、「チルする」=「ゆったりする」「まったりする」といった意味で活用されており、活動的なエネルギーの発散ではなく、よりゆったりした時間を過ごしながら、リラックスすることや休むことを重視するという考え方も表しています。
チルアウトという言葉が好まれるようになった背景のひとつに、現在のストレスフルな社会情勢が影響していることが考えられます。「映える」を意識し、「いいね!」の数に一喜一憂するSNSへの対応や、オンライン上でも気を使わなければならない人間関係へのストレスなどから、解放される場所や心安らぐ場を求める人が増えているのかもしれません。
また、具体的なストレスを感じていなくても、情報があふれ、スピード時代といわれる昨今において、もう少しゆっくり過ごしたいと考える人もいるでしょう。
近年ブームになっているアウトドアのたき火やサウナ、カフェなども、チルアウトが提供される場のひとつと言えます。ゆったりと自分らしく過ごせる時間として、多くの人がチルアウトにお金を使いたいと考える傾向にあることがわかります。
チルアウト×食
チルアウトの考え方は、市場にも新しい動きを与えています。エナジードリンクのような活力を得る商品ではなく、今後は逆に、リラクゼーションを与え、心を落ち着かせることのできる商品が求められるようになるでしょう。
既存の商品を例に挙げてみると、「おかゆ」「ホットミルク」「スープ」「ハーブティー」などは、チルアウトに通じる商品と言えます。これまでも「ホッとする」「安らぐ」といったコンセプトで展開される商品は数多くありました。
しかし、チルアウトに特化した商品はまだそう多くはありません。これから、チルアウトという概念や言葉が広がるにつれて、関連する商品も増えていくことでしょう。特に、気軽に手に取りやすい食関連の商品であれば、毎日の生活の中に自然と入り込みやすいのではないでしょうか。
CHILL OUT(チルアウト)ドリンクが登場
国内でチルアウトという表現が徐々に広がっていた2016年11月。「CHILL OUT(チルアウト)」という商品名のドリンクが、大阪に本社を持つI-ne社のもとで誕生しました。
“ストレス社会にチルでクリエイティブなライフスタイルを”をコンセプトとし、リラクゼーションサポートドリンクとして展開されています。2019年秋には、「CHILL OUT」の販売をI-ne社から合同会社Endian(エンディアン)に引き継ぎ、日本コカ・コーラ社が事業に参画。オンラインショップやナチュラルローソンなどで販売され、現在は、自動販売機で提供されているところもあります。
「CHILL OUT」は、現代人に必要な安らぎを与え、パフォーマンス向上へのサポートをすることを目的としたドリンクで、従来のエナジードリンクとは対をなすものです。活力を高めることを目的とした「エナジードリンク」がブームになった時期もありますが、今の時代の人々にとって本当に必要なのはリラクゼーションではないかという考えから開発されました。眠気を覚ます、テンションを上げるといったこれまでのエナジードリンクとは異なる発想から生まれた「リラクゼーションドリンク」です。
「CHILL OUT」は、AIによって導き出されたという、柑橘系・ハーブ系に清涼感をプラスしたリラクゼーション効果の高いフレーバーが使用されているのが大きな特徴です。カフェインフリーで、GABA、L-テアニン、ヘンプシード抽出物、ホップ抽出物といった4つのリラクゼーションサポート成分を配合することで、リラックス効果とポジティブさの向上が期待されるとしています。
ストレス下にあるときはもちろん、ゆっくり、まったり過ごしたいと感じるときに、「CHILL OUT」を飲むことで、無理なく気分転換ができるといいます。実際の効果への期待はもちろんですが、このドリンクを飲む時間こそが「チルする」環境にあるとイメージを喚起させるのかもしれません。
若い世代に浸透中、チルしよう!
「CHILL OUT」は、近年若い世代が使用していた「チルしよう(チルアウトしよう)」という言葉をプロダクトに起用し、戦略的ブランディングを成功させました。「CHILL OUT」を都内の銭湯で無料配布し、癒やしの相乗効果を体感してもらう試みをおこなうといったように、マーケティングでも新たな動きを見せています。入浴後というシーンターゲティングをおこなうことで、日常のなかに「CHILL OUT」を定着させるのが狙いです。
先述のように「CHILL OUT」は、現代人に必要な“安らぎ”と“パフォーマンス”をサポートするもの。商品ターゲットは、ライフスタイルを自由に選択する現代的な生き方をする人や、クリエイティブな仕事をする人、さらにストレスをコントロールして「チル」することが必要なすべての人としています。
「CHILL OUT」はエナジードリンクとは一線を画した商品ですが、現在エナジードリンクを愛飲している人にも市場を広げる可能性もあります。販売元であるEndianが実施した調査によると、「エナジードリンク」を飲んでいる人の約3割に、「リラクゼーションドリンクがあれば飲みたい」との回答が見られました。
エナジードリンクは覚醒や刺激といった効果によってやる気を高める、元気づけることを目的とします。一時的には活力が湧きますが、効果が切れるとかえって疲労感を招く可能性もあります。「CHILL OUT」はリラックスを促すことによって心身の緊張をほぐし、ポジティブな感情を自然に引き出すことを目的とするものです。無理なく前向きになれる点が、エナジードリンクとは大きく違います。
今後はストレスを感じる社会人をはじめ、ゆったりした時間を楽しみたいという幅広い世代から、チルアウトへの人気が集まるかもしれません。今は一部の若い世代で使われている「チルする」という表現も、やがて広い年代層へと浸透していくことでしょう。チルアウトが新たな市場の流れを作っていくことも考えられます。
今後すべての人が求めるであろうチルアウト
社会全体が上昇を目指した時代には、「エネルギーイン」することが重視されていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大のように、社会的に不安な状況が続き、多くの人がストレスにさらされています。
チルアウトは、今後すべての人が求めていくであろうキーワードです。チルアウトをコンセプトとした市場が展開され、関連商品の需要が伸びる可能性も考えられます。既存の商品においても、新たなコンセプトを打ち立てることで、商機が高まる可能性もあるでしょう。今後のチルアウト市場に関心が集まりそうです。
※この記事はクックパッド株式会社が運営する「FoodClip」からの転載記事です。