ミステリーショッパー(覆面調査)とは?調査する目的や手法、費用など解説

「ミステリーショッパー(覆面調査)」は、店舗の接客やサービス向上を目的に実施される調査です。店舗の運営改善やマーケティング施策の立案に役立ちます。
本記事では、ミステリーショッパーの概要や実施目的、費用の目安、注意点について解説します。ミステリーショッパーについて理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ミステリーショッパー(覆面調査)とは
ミステリーショッパー(覆面調査)は、覆面調査員が一般の顧客を装い、店舗などを訪れて接客態度や品揃え、商品・サービスの質などを確認する調査のことです。現場の状況を把握し、サービスの質を評価して改善につなげるための手法です。
覆面調査員は、事前に指定された項目や基準に沿って店舗のサービスをチェックし、その結果を調査依頼者に報告します。
一般的に、この調査は企業の本社が依頼し、結果を現場にフィードバックすることで、サービス向上やマーケティング施策の改善に役立てられます。
ミステリーショッパーの主な対象業界
ミステリーショッパーが実施される業種は、主に以下のとおりです。
- 飲食業
- 小売業
- 宿泊業
- サービス業
- 金融業
- 製品業 など
特に、レストランやカフェといった飲食業、カーディーラーや衣料品店などの小売業で実施されることが多いです。例えば、レストランでは覆面調査員が実際に来店し、料理の内容や接客の質、店内の清潔さなどをチェックします。
また、店舗を持たない業種でもミステリーショッパーが活用されることもあります。例えば、製品メーカーが販売店における自社商品の取り扱い状況を確認するために、販売店を対象に調査を行うケースもあります。
ミステリーショッパーを実施する主な目的
ミステリーショッパーを実施する主な目的を4つ紹介します。
商品やサービスの品質(顧客満足)の保持
ミステリーショッパーを活用することで、企業は顧客視点で自社の状況を正しく把握できます。
本社の社員が店舗を訪れ、接客や品揃えを確認することもありますが、長年企業に属していると、社内の常識が一般消費者の感覚とずれやすくなります。そのため、社内の人間だけで顧客目線の評価を行うのは難しいのが実情です。
ミステリーショッパーでは、第三者の調査員が客として訪れるため、客観的で率直な意見を得られます。「自社では気づかなかった視点からの指摘を受けた」というケースも多く、売上低迷の改善策が見つかったり、マーケティング施策の精度を高めたりすることが可能です。
また、顧客体験の質を高めるために、改善点を見つけ出し改良することで高い顧客満足度の保持につながります。
見えない部分が多い「接客」を評価できる
ミステリーショッパーは、不透明になりがちな接客評価に客観的な視点をもたらし、現場改善に大いに役立ちます。
接客はお客様からはよく見えますが、従業員間では確認しづらく、評価が曖昧になりがちです。そこで、第三者が実際に店舗を訪れ、客観的な視点で評価を行うのがミステリーショッパーです。
例えば、ミステリーショッパーによって「こちらから伝える前に取り皿を持ってきてくれたのがよかった」という評価が得られれば、そのスタッフのみならず、全員に共有することで店舗全体の接客力向上につなげられます。
反対に、現場が気づいていないマイナス点が浮き彫りになれば、スタッフ全員で改善に取り組むことができます。
このように、ミステリーショッパーは不透明になりがちな接客の評価を明確にすることができます。
従業員のパフォーマンス向上
ミステリーショッパーは、従業員が日常的にどのように仕事をしているのか監視する目的もあります。
一般的に、本社は調査結果を現場にフィードバックします。その際、改善点だけでなく、優れた点も共有されます。
創意工夫が正当に評価されることで、従業員の意欲向上につながります。また、優れた店舗の事例を社内で共有すれば、会社全体の成長を促すだけでなく、評価された店舗のさらなる意欲向上も期待できます。
さらに、ミステリーショッパーの結果を従業員の業務評価項目に加えることで、店舗運営への積極的な姿勢を引き出すことも可能です。このように、ミステリーショッパーは現場の評価やマーケティング施策の改善にとどまらず、従業員のモチベーション向上にも貢献する有効な手法です。
ミステリーショッパーの手法
ミステリーショッパーには、主に4つの手法があります。 それぞれの特徴について詳しく解説します。
- 被接客調査
- 観察調査
- 電話調査
- オンライン調査
被接客調査
被接客調査は、覆面調査員が一般客を装い、店舗で商品やサービスを受けながら調査を行う方法です。ミステリーショッパーの中でも最も一般的な手法とされています。
この調査では、調査員が実際の店舗に訪問し、スタッフと積極的にコミュニケーションを取りながら、提供される商品やサービスの質、接客態度、さらには設備の状態までを詳細にチェックします。ときにはスタッフに質問を投げかけ、その回答内容や対応力を評価することもあります。
「実際の顧客が現場で何を感じているのか?」というリアルな意見を収集できるため、接客の質を細かく分析するのに有効な手法です。
観察調査
観察調査とは、店頭の様子を確認し、販促物やPOPの設置状況、スタッフの服装や立ち居振る舞いなどをチェックする方法です。
具体的には、店舗の外観やディスプレイ、入口周辺の清潔さ、従業員の身だしなみ、店内のレイアウトや商品陳列の状態などを評価します。
また、必要に応じて該当箇所の写真を撮影し、販促物やPOPの設置状況を記録することも可能です。そのため、本社の指示どおりに現場が運営されているかを確認する手法としても効果的といえます。
電話調査
電話調査は、調査員が顧客を装って店舗やコールセンターに電話をかけ、電話対応の質を評価する方法です。特に、予約受付や問い合わせ対応など、電話でのコミュニケーションが重要な業態で活用されています。
この調査では、挨拶や声のトーン、言葉遣いなどの基本的な応対スキルに加え、回答の正確さも評価します。得られたフィードバックは、電話対応の品質向上に役立てられます。
オンライン調査
オンライン調査は、カスタマーサポートの品質を評価する方法です。内容的には電話調査と同様、実際にカスタマーサポートに問い合わせを行い、マニュアルどおりに回答しているか、返答内容が適正かを確認し、改善していきます。
ミステリーショッパーの主な調査項目
実際にミステリーショッパーではどのような項目を調査しているのでしょうか。業界や規模などにもよりますが、よく利用される3つの側面について、調査内容を紹介します。
- 販促面
- 店舗・売場面
- 従業員・サービス面
販促面
販促面の調査では、本部の施策が現場で適切に実行されているかを確認します。具体的には、キャンペーン商品の展開場所、販促物の設置状況、POPの内容や表示価格の正確性などを評価します。
店舗・売場面
店舗・売場の調査では、商品の品揃え、売場の清潔さ、陳列方法など、店舗運営の基本を評価します。顧客の視点に立ち、ニーズに合った店舗・売場になっているかを確認することが目的です。
従業員・サービス面
従業員・サービスの調査では、接客の質、専門知識、問題解決能力などを評価します。特に、顧客に寄り添った対応ができているかが重要なポイントです。
また、お手洗い、フィッティングルーム、休憩スペースなどの設備も評価対象となります。管理状況やアクセスのしやすさがチェックされ、快適な環境が整っているかが問われます。
ミステリーショッパーの費用目安
ミステリーショッパー調査の費用は、調査の規模や内容によって異なります。
一般的な店舗調査においても1店舗あたり換算で10,000円以上はかかり、対象店舗数、人数、調査時間、場所等によって、料金が変動し、数百万円規模になります。
さらに、事前研修の実施、調査結果の活用方法など別途費用も発生する場合もあるため、早めに調査会社へ相談し、目的と予算を照らし合わせながら進めることをお勧めします
ミステリーショッパーを実施する際の注意点
ミステリーショッパーは、企業の強みを伸ばし、改善点を明確にする有効な手法です。しかし、調査方法を誤ると、現場の反感を招く可能性があります。
次に、ミステリーショッパーを実施する際に特に注意すべき3つのポイントを紹介します。
現場に犯人捜しをさせない
ミステリーショッパーの調査では、現場で「犯人捜し」が起こらないよう十分に配慮することが重要です。
店舗にフィードバックを伝えた際、「誰が対応したのか」といった詮索が始まると、トラブルや混乱を招く可能性があります。
調査結果を現場に共有する際は、日時や担当者が特定されないよう内容を調整し、報告することが大切です。 特に、個人を特定できる情報は修正するか、店舗責任者のみに共有するなど、慎重な対応が求められます。
また、改善点を指摘する際は、個人の責任を追及するのではなく、組織全体の課題として捉え、前向きな改善につなげることが重要です。なお、他店が見習うべき点などの前向きな内容に関しては、店舗内で公表しても問題ありません。
調査の母数が少ないので結果が偏りがち
ミステリーショッパーは、その特性上、多数の調査員を確保するのが難しく、基本的に1人の調査員の意見が大きく反映されます。 そのため、調査員の主観や経験、嗜好によって結果が左右され、偏りが生じる可能性があります。
例えば、接客の良し悪しや設備の管理状況に対する評価基準や寛容度は、人によって異なります。 特に、調査員の教育が不十分な場合、個々の主観に大きく影響された調査結果になることが懸念されます。
そのため、ミステリーショッパーの結果はあくまで参考情報の一つとして捉え、過度に依存しないよう注意が必要です。
社内調整を怠らない
ミステリーショッパーの調査は、現場に無断で実施すべきではありません。事前通知なしの調査は、スタッフに不信感や不安を与え、クレームにつながる恐れがあります。
何も知らされないまま調査されることで、現場のスタッフは「監視されている」「信用されていない」と感じ、不安や精神的負担につながる可能性があります。
従業員のモチベーション向上を目的とするミステリーショッパーの調査が、かえって不信感を募らせてしまっては本末転倒です。
そのため、ミステリーショッパーを実施する際は、事前に「〇月頃に調査を行う可能性がある」と現場へ伝えておくことが重要です。 これにより、過度な緊張を避けつつ、普段どおりの接客を維持できるだけでなく、「いつ来るかわからない」という意識が生まれ、日常的なサービス向上にもつながります。
ミステリーショッパーに関してよくある質問
最後に、ミステリーショッパーに関してよくある質問とその回答についても紹介します。
調査員はどのような人なのか
ミステリーショッパーの調査では、現場で「犯人捜し」が起こらないよう十分に配慮することが重要です。
店舗にフィードバックを伝えた際、「誰が対応したのか」といった詮索が始まると、トラブルや混乱を招く可能性があります。
調査結果を現場に共有する際は、日時や担当者が特定されないよう内容を調整し、報告することが大切です。 特に、個人を特定できる情報は修正するか、店舗責任者のみに共有するなど、慎重な対応が求められます。
また、改善点を指摘する際は、個人の責任を追及するのではなく、組織全体の課題として捉え、前向きな改善につなげることが重要です。なお、他店が見習うべき点などの前向きな内容に関しては、店舗内で公表しても問題ありません。
どのような調査会社が良いか
ミステリーショッパーを実施する際は、教育体制が充実している調査会社を選ぶのがおすすめです。 調査会社によって覆面調査員の教育方法が異なるため、自社に適した調査員を確保できるかを見極めることが重要です。
また、調査会社によっては、調査前に研修を実施する場合があります。 教育資料を提供し、事前学習を促したうえで、理解度を測るテストを行うこともあります。
さらに、調査会社ごとに得意とする業界が異なるため、依頼前に教育方法や研修内容を確認すると良いです。
期間はどれくらいかかるのか。また、全体の流れはどのようになっているのか
調査内容によりますが、契約から調査報告までの期間は最低でも1か月はかかります。なお、実施人数や場所によって調査期間は変わるので、事前に調査会社に確認するのがおすすめです。
主な流れは以下のとおりです。
- 初期相談・調査設計
- 調査員の募集・決定
- 調査員の教育
- 店舗の調査
- 調査レポートの受領
ミステリーショッパーは依頼後すぐに結果を得られるものではないため、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。特に、定期的に実施する場合は、年間スケジュールを策定し、計画的に進めることをおすすめします。
まとめ
本記事ではミステリーショッパー(覆面調査)について、解説しました。
ミステリーショッパー(覆面調査)は、サービスの品質向上や顧客満足度の向上に役立つ重要な手法ですが、本編でも述べたように事業会社で実施することは難しいと考えます。
もしミステリーショッパー(覆面調査)について、ご興味やご不明な点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。
(digmar編集部)