カテゴリーエントリーポイント(CEP)とは?増やすメリットやポイント、注意点など解説
企業が効果的なブランディング(マーケティング)戦略を考えるうえで、「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」は欠かせない要素です。特に「売上を拡大したい」 「幅広い顧客層にリーチしたい」と考える企業にとって、カテゴリーエントリーポイントの理解と活用は重要となります。
この記事では、カテゴリーエントリーポイントの概要や活用するメリット、注意点などを解説します。カテゴリーエントリーポイントについての理解を深めたいマーケティング担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
カテゴリーエントリーポイント(CEP)とは
カテゴリーエントリーポイントとは、消費者が商品やサービスを購入しようと思ったときに、カテゴリーを想起するきっかけのことです。(カテゴリーエントリーポイントは英語で「Category Entry Point」であり、略して「CEP」と呼ぶこともあります。)
カテゴリーを想起するきっかけについて、缶コーヒーを例に考えてみます。缶コーヒーを買いたいと思ったとき、「朝の出勤前に手軽に飲みたいからA社の缶コーヒーを買おう」 「作業中の眠気覚ましにB社の缶コーヒーを買おう」などと思い浮かべるでしょう。このように、その商品を思い出すきっかけとなるものこそが、カテゴリーエントリーポイントです。
つまり、カテゴリーエントリーポイントは消費者の購買意思決定に大きく影響するため、企業がマーケティング戦略を考えるうえで非常に重要な考え方となります。カテゴリーエントリーポイントを適切に分析して活用することで、競合との差別化が図れ、自社製品を選んでもらえる可能性が高まるといえます。
カテゴリーエントリーポイントを増やすメリット
カテゴリーエントリーポイント(CEP)を増やすことは、企業の成長において重要な施策です。次から、カテゴリーエントリーポイントを増やす主なメリットを3つ紹介します。
幅広い顧客層にアプローチできる
カテゴリーエントリーポイントを増やすことで、多様な顧客層にリーチできるようになります。
手帳を例に考えてみます。「コンパクトなサイズの手帳」という1つのカテゴリーエントリーポイントだけでは、小さな鞄に入る手帳を求める特定の顧客層にしか訴求できません。
しかし、「カバーの色が豊富」という新たなカテゴリーエントリーポイントを加えると、デザイン性や嗜好性を重視する顧客層にも手帳を想起してもらえるようになります。結果として、男性中心の顧客層から女性にも広がり、ターゲット市場が拡大します。
このように、カテゴリーエントリーポイントを増やすことで幅広い顧客層にアプローチでき、売上の向上が期待できます。
顧客との接触の増加
カテゴリーエントリーポイントが増えると、顧客が商品やサービスを日常的に想起する機会が増えて、結果として売上拡大が期待できます。
スターバックスコーヒーを例にしてみます。日本進出当初、スターバックスコーヒーは「コーヒーを提供するカフェ」として認識されていました。しかし、時代の変遷とともに店舗やメニューの改良を重ねた結果、現在では以下のような多様なカテゴリーエントリーポイントを持つブランドへと進化しています。
- 仕事や勉強ができる場所
- フラペチーノなどスイーツ感覚の飲み物を楽しむ場所
- ギフトカードを購入できるお店
これにより来店のきっかけが多様化し、顧客層や客数が大幅に拡大しました。 このように、カテゴリーエントリーポイントを増やすことで、顧客との接点が広がり、購入機会の拡大につながるメリットがあります。
競争優位性を確保できる
カテゴリーエントリーポイントを増やすことは、競争優位性の確保にもつながります。新たなカテゴリーエントリーポイントを確立することで、カテゴリー内での差別化を図り、競合他社に対して優位なポジションを築くことができます。
シャンプー市場を例に考えてみます。「髪の清潔さを保つ」という基本的なカテゴリーエントリーポイントでは、多くのブランドが競合しているため、差別化は難しいと考えられます。
ここで「地肌のニオイケア」という新しいカテゴリーエントリーポイントを打ち出し、従来の「髪の清潔さを保つ」以外の価値を提供することで、独自の市場ポジションを確立できます。このような差別化は、顧客にとって新たな選択肢として認識され、競合との差を明確にします。
このように、カテゴリーエントリーポイントを増やすことで競合内での差別化につながり、また独自のポジショニングを生むことで、競争優位性を確保することにつながります。
カテゴリーエントリーポイントを考えるうえでのポイント
カテゴリーエントリーポイントは、ただ増やせばよいわけではありません。次から、カテゴリーエントリーポイントを効果的に活用するために押さえておくべき重要なポイントを3つ解説します。
カテゴリーは上位を目指す
カテゴリーは原則、上位を目指して設定するものです。これは、顧客が商品やサービスを選ぶ際、上位のカテゴリーを想起する傾向があるためです。
例えば、駅前に小規模事業者が「くつろげる空間」を提供するカフェを出店した場合、大手カフェチェーンが同じカテゴリーで市場を押さえていると、差別化が難しくなるでしょう。
一方、「仕事専用カフェ」という新たなカテゴリーを設定し、全席電源やWi-Fi完備、オンライン会議可能な個室を提供すれば、大手との差別化が可能になり、上位を目指せる余地が生まれます。
このように、カテゴリーエントリーポイントを設定する際は、競合との差別化を意識し、上位を狙う戦略を取ることが重要です。
ブランド想起が消費者行動に影響を与える
カテゴリーエントリーポイントを考える際、ブランド想起が消費者行動に与える影響を理解することも重要です。
消費者は商品やサービスを購入する際、まずニーズに合ったカテゴリーを思い浮かべ、その後、具体的なブランドを想起します。このとき、最初に思い浮かんだブランドが、高いカテゴリーエントリーポイントを持つブランドです。
例えば、コーラといえば「コカ・コーラ」、ハンバーガーといえば「マクドナルド」を思い浮かべるように、特定のブランドがカテゴリーの代名詞となっている状態がその例です。
このような強いブランド想起は、消費者の購買行動に直接的な影響を与えます。さらに、購買した際に良い印象があれば、次回以降も同じブランドを想起しやすくなるという好循環が生まれます。
そのため企業にとっては、強いカテゴリーエントリーポイントを構築し、ブランドが最初に想起される状態を目指すことが非常に重要です。
顧客ニーズからカテゴリーエントリーポイントを考える
カテゴリーエントリーポイントは、自社の都合ではなく、顧客のニーズから導き出すことが重要です。
例えば、パソコンを例に考えてみましょう。自社視点で「高性能CPU搭載」 「大容量メモリ」といったスペックを強調しても、一般消費者にはその価値が伝わりにくい場合があります。
一方で、「在宅ワークで快適に使える」 「動画編集がスムーズ」といった具体的な使用シーンに基づくカテゴリーエントリーポイントを設定すれば、より多くの顧客に共感されやすくなります。
企業は自社都合のカテゴリーエントリーポイントを設定しがちですが、顧客ニーズをしっかりと掴むことが重要です。市場の声を反映したカテゴリーエントリーポイントを設定することで、顧客との接点を強化し、ブランドの競争力を高めることができます。
カテゴリーエントリーポイントを増やす際の注意点
カテゴリーエントリーポイントは、むやみに増やすと既存の強みを損なうリスクがあります。次から、カテゴリーエントリーポイントを増やす際に気を付けたい注意点3つについて解説します。
ブランドを毀損する恐れがある
カテゴリーエントリーポイントを増やしすぎると、既存の強みと矛盾してしまい、ブランドの一貫性や信頼性を損なう可能性があります。
例えば「職人技と伝統」を強みとする高級時計ブランドが、新規顧客を獲得するために、最先端で便利なスマートウォッチを発売したとします。この場合、職人技や伝統というブランドの核となる価値が薄れ、「高級」というブランドイメージの毀損につながるリスクがあります。
このように、カテゴリーエントリーポイントは単に増やせばよいものではありません。新たなカテゴリーを検討する際には、顧客ニーズと自社の強みを慎重に見極め、ブランド価値を守ることが大切です。
コスト損になる恐れがある
カテゴリーエントリーポイントを増やすことは、新たに販促活動や販路拡大などの費用をかけることになります。
結果的に売上が伸びれば問題ありませんが、想定よりもコストがかかると、収益性が悪化するおそれがあります。さらに、無計画なカテゴリーエントリーポイントの拡大は、既存のブランドイメージを損なうリスクも伴い、企業にとって大きなダメージとなりかねません。
カテゴリーエントリーポイントを増やす際は、しっかりとリサーチを行い顧客の購買行動に直結する効果的なカテゴリーに絞って訴求することが重要です。
専門性を失うことがある
カテゴリーエントリーポイントを増やしすぎると、各領域での存在感が薄まり、専門性が低下する恐れがあります。
例えば「濃厚とんこつラーメン」で行列ができる人気店が、売上拡大のために「油そば」や「カレーライス」を追加したとします。これまで「この店のとんこつラーメンが食べたい」と来店していた顧客は、「メニューが増えすぎて、もはやとんこつラーメンの専門店なのかわからない」と感じるかもしれません。その結果、「濃厚とんこつラーメン」という特徴が失われる可能性があります。
専門性を突き詰めたカテゴリーエントリーポイントは、それ自体が強い差別化要素です。その差別化が失われないよう注意しなければなりません。
まとめ
本記事ではカテゴリーエントリーポイントについて、解説しました。
カテゴリーエントリーポイントは、顧客が特定のカテゴリーの商品やサービスを選ぶ際に、最初に接触する場面や要素です。カテゴリー内で上位になることで販売促進やブランド価値向上に大きな効果を生み出します。ただし、単にカテゴリーエントリーポイントを増やせば売り上げにつながるというわけではなく、消費者のニーズをしっかりと把握することを忘れてはなりません。
「カテゴリーエントリーポイントにおける顧客理解を調査したい」など、ご相談がございましたら、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。