eスポーツ観戦についてのアンケート調査|ゲームをプレイする観客とプレイしない観客の特徴の違いは?
eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)」の略で、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った競技をスポーツとして捉えたものです。今年6月に国際オリンピック委員会(IOC)がeスポーツの国際大会(オリンピックeスポーツシリーズ)を開催したり、9月に開催される第19回アジア競技大会の種目としてeスポーツが選ばれていたりと、近年注目されてきています。
日本でもプロゲーマーという職業やプロゲーミングチームが生まれてきており、プロの選手の試合をイベント会場やネット配信などで観戦するというスポーツ興行としての市場も広がっており、eスポーツマーケティングにも注目が集まってきています。
「ゲームを観戦する」という点がeスポーツ興行の新しい点であると感じますが、観戦をしている人は、野球やサッカー等と同じようにゲームをプレイしている人だけではなく、「プレイせずに観戦のみの人」もいるのではないかと考えられます。
そこでまず、「プレイせずに観戦のみの人」がどの程度いるのかについて、アンケートで調査してみました。
【事前調査 調査概要】
調査対象:・18~39歳の男女(インターネットモニター)
・普段eスポーツの大会・イベントを観戦する人
有効回収数:396名
アンケート結果を見ると、「ゲームをプレイせずに観戦のみの人」は18%いました。
では、この「自分でもゲームをプレイする人(以下、プレイヤー観戦者と呼びます)」と「観戦のみの人(以下、非プレイヤー観戦者と呼びます)」をマーケティングのターゲットとして、eスポーツ観戦の楽しみ方や観戦ニーズの傾向に違いがあるかを、アンケートでさらに深掘りしてみました。
【本調査 調査概要】
調査手法:インターネットリサーチ
調査対象:18~39歳の男女(インターネットモニター)
調査期間:2023年8月4日~8月7日
有効回収数:474名
プレイヤー観戦者:246名
非プレイヤー観戦者:228名
調査主体:弊社(株式会社マーケティング・リサーチ・サービス)
目次
eスポーツの大会・イベントをどこで観戦したか
設問1
あなたは今までに、eスポーツの大会・イベントをどちらで観戦したことがありますか。(複数回答)
プレイヤー観戦者と非プレイヤー観戦者それぞれに、eスポーツの大会やイベントを観戦したことがある場所を質問したところ、プレイヤー観戦者、非プレイヤー観戦者ともに「大会公式のネット配信」が最も高くなっていました。結果を比較したところ「大会・イベント会場」と「パブリックビューイング会場」で、プレイヤー観戦者が非プレイヤー観戦者に比べて20%以上高くなっていました。
会場での観戦を一緒に見に行った人
設問2
大会・イベント会場、パブリックビューイング会場でeスポーツを観戦した際、どなたと観戦しましたか。(複数回答)
前問の「観戦したことがある場所」で「大会・イベント会場」または「パブリックビューイング会場」と回答した人に、一緒に観戦した人を質問しました。
結果としては、「自分一人で」が最も高くなっており、「プライベートの友人・知人」が次に高く、「ゲームのコミュニティ内の友人・知人」が3番目に高くなっていました。
大会の配信をリアルタイムで見ることが多いか、アーカイブで見ることが多いか
設問3
eスポーツの大会・イベントの配信はどのように観戦することが多いですか。(複数回答)
大会やイベントの配信をリアルタイムで見ることが多いか、アーカイブ(録画)で見ることが多いかを質問しました。プレイヤー観戦者と非プレイヤー観戦者の回答を比較したところ、非プレイヤー観戦者がプレイヤー観戦者に比べて「アーカイブで観戦することが多い」という割合が約20%高くなっていました。一方でプレイヤー観戦者は「リアルタイムで観戦することが多い」という割合が非プレイヤー観戦者に比べてやや高くなっていました。
大会・イベント配信の観戦時の投げ銭(ギフティング)金額
設問4
eスポーツの大会・イベント配信を観戦する際、スーパーチャットやビッツ等の「投げ銭」をすることはありますか。「投げ銭」をする時の、大会・イベント1回あたりの合計金額をお答えください。(単一回答)
大会・イベント配信を観戦する時に、1イベントあたり何円くらい投げ銭(スーパーチャット・ビッツ等)をするかを質問しました。
1円以上投げ銭をすることがある人の割合が、プレイヤー観戦者は68%、非プレイヤー観戦者は27%と大きく差がついていました。また、プレイヤー観戦者の投げ銭金額を見ると、金額が上がるにつれて割合が高くなっており、「5000円以上」が23%でもっとも高くなっていました。
>>関連記事|ゲーム実況視聴者における「投げ銭」実態調査
eスポーツの大会・イベント配信を観戦する魅力
設問5
eスポーツの大会・イベント配信を観戦する魅力は何だと思いますか。(複数回答)
eスポーツの大会・イベント配信を観戦する魅力について質問しました。
プレイヤー観戦者は「上手いプレイ・試合内容を見ることができる」「そのゲームについての知識が深まる」「試合をリアルタイムで楽しめる」といった項目が高くなっていました。非プレイヤー観戦者は「上手いプレイ・試合内容を見ることができる」「アーカイブ(録画)配信をいつでも見ることができる」「自宅で大会・イベントを観戦することができる」といった項目が高くなっていました。
回答結果を比較すると、「知識が深まる」「リアルタイムで楽しめる」「迫力や興奮を味わうことができる」「選手やチームを応援できる」「緊張感を味わうことができる」「全力で盛り上がれる」「大勢の視聴者と一緒に観戦することができる」の7項目で、プレイヤー観戦者が非プレイヤー観戦者に比べて10%以上高くなっていました。
さらに、前問の「投げ銭金額の質問」の「1円以上の投げ銭をすることがある人」と「投げ銭をすることがない人」を集計軸にして結果を見てみました。
投げ銭をしない人は「プレイ・試合内容を見ること」のみが高くなっていました。投げ銭をする人は「好きな選手やチームを応援できる」や「全力で盛り上がれる」といったことに魅力を感じている人が多くなっていました。
eスポーツの大会・イベント配信で見たいもの
設問6
eスポーツの大会・イベント配信で見たいと思うものをすべてお答えください。(複数回答)
eスポーツの大会・イベント配信で見たいと思うものについて質問しました。
プレイヤー観戦者は「選手がコントローラーを操作する手元の様子」「選手の大会に臨む意気込み・ストーリー」などの「選手自身を見たい」といった内容が高くなっていました。
eスポーツの大会・イベントをどこで観戦したいか
設問7
あなたは今後eスポーツの大会・イベントをどこで観戦したいと思いますか。(単一回答)
eスポーツの大会・イベントを観戦したい場所を一つだけ回答してもらいました。
前述の「大会・イベントを観戦したことがある場所」の回答と同じ傾向となっており、プレイヤー観戦者は会場やパブリックビューイングなどのオフライン会場、非プレイヤー観戦者は自宅が高くなっていました。
非プレイヤー観戦者 自分でゲームをプレイしない理由
設問8
「eスポーツの大会・イベントを観戦するが、自分はゲームをプレイしない」とお答えになっていましたが、自分でそのゲームをプレイしないのは、どのような理由からでしょうか。(複数回答)
非プレイヤー観戦者の人に対して、自分でそのゲームをプレイしない理由を質問しました。
見るだけで十分だから」が最も高く、次に「自分でプレイするよりも観戦する方が楽しいから」、3番目に「ゲームが得意ではないから」が高くなっていました。
応援しているeスポーツチーム・プロゲーミングチーム
設問9
あなたが応援している「eスポーツチーム・プロゲーミングチーム」があればチーム名をご記入ください。(記述回答)
応援しているeスポーツのプロゲーミングチームのチーム名を記述形式で回答してもらいました。回答内容は、表記間違いなどでも判別可能なものについては該当のチーム名としてカウントしています。
「応援しているチームがある(応援しているチームを回答した)」人は、プレイヤー観戦者で14%、非プレイヤー観戦者で11%という結果になりました。
応援しているチームがある人ベースで具体的な回答内容を集計してみました。
最も回答が多かったのは「ZETA DIVISION」で、「Crazy Raccoon」「DetonatioN Focus Me」の順で高くなっていました。それ以外では「忍ism gaming」や「CYCLOPS athlete gaming」「REJECT」といったチーム名も挙がっていました。
まとめ
プレイヤー観戦者と非プレイヤー観戦者で、eスポーツの観戦の仕方や魅力に感じる点などを比較してみたところ、それぞれの傾向が異なっていることがわかりました。
具体的には、プレイヤー観戦者は「イベント会場での観戦や投げ銭をしている人が多く、選手を応援したり、大勢の観客と一緒に盛り上がったりしたい」といった傾向が見られました。
非プレイヤー観戦者は「自宅でアーカイブ(録画)観戦をしている人が多く、上手いプレイや試合内容のみを楽しんでいる。選手のファンなど、ゲーム以外の魅力に注目している人は少ない」といった傾向が見られました。
これらの調査結果の傾向から、プレイヤー観戦者の方がeスポーツのファンとしてのレベルが高く、非プレイヤー観戦者の方はライトな観客であることが見受けられます。
ただ、特定のチームを応援している人はプレイヤー観戦者、非プレイヤー観戦者ともに少なかったため、eスポーツチームに対してファンが根付いている状況ではないのかもしれません。
今後eスポーツの観客をさらに増やしていくためには、野球やサッカー、バスケットボールなどのように、eスポーツチームがファンを獲得していくことがマーケティング課題ではないかと考えられます。
(digmar編集部)