ファンマーケティングには”入口”と”出口”が重要!つまずきがちなポイントと成功のカギ・事例を紹介

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「ファンマーケティング」は、近年ビジネスにおいて重要な戦略のひとつとして、toB、toC問わずさまざまな業界で取り入れられている考え方です。

イメージしやすいキーワードであり、始めやすいものではありますが、効果を最大化するためには、気をつけなければならないポイントをしっかり押さえ、適切な道筋を引いていく必要があります。
この記事ではファンマーケティングの概要や具体的な手法、成功に導くためのポイントを紹介します。施策を検討する際の参考にしてください。

ファンマーケティングとは?

ファンマーケティングとは、自社の商品・サービスに対して強い愛着を持ったファンを増やしたり、そうした層を対象に施策を行うことで、中長期的に安定した売上の維持・拡大を図るマーケティング手法のことです。

優良顧客を増やすことでファンによる売り上げを拡大する効果だけでなく、ファン化した顧客の口コミ効果などによる新規顧客の獲得の点でも効果的な施策として、toB、toC問わず重要度が増している手法です。

口コミの重要性が拡大。ファンマーケティングが広まっている背景とメリット

ファンマーケティングが広まっている背景には以下のような要因があります。

費用対効果が高い

前述の通りファンマーケティングによって既存顧客にアプローチし、自社商品・サービスを何度も購入、利用してくれる「ファン化」を促すことで、長期的に売上が安定します。

また、マーケティングの世界では「1:5の法則」として、新規顧客の獲得には既存顧客に販売する場合と比べて5倍のコストがかかると言われています。
つまり、既存顧客を増やしていくことは費用対効果が高いということです。また、ファンマーケティングとして行う施策はSNSの活用やファンサイトの運用など、一般的なマス施策や広告出稿に比べてコストがかからないところも特長です。

情報収集、意思決定におけるSNSの重要性の向上

現代では生活者の購買に向けた情報収集や購買意思決定において、SNSが非常に重要な要素となっています。また、『SNSのクチコミが購入・来店に与える影響調査』(アジャイルメディア・ネットワーク株式会社:2022年5月実施)によると、購買に寄与したクチコミとして、「たまたま見つけたSNS投稿」が有名人やインフルエンサーの投稿に比べて最もポイントが高く、SNSの情報収集が一般化していること、商品体験に関するクチコミの有無や評判形成の重要性が明らかになっています。

ファンマーケティングを強化することでSNSへのクチコミ効果の上昇が期待でき、そうした面で現代の潮流とも非常に相性の良い施策と言えます。

ファンの声がブランド力向上、新規顧客獲得につながる

育成された熱心なファンは自分の好きなもの・よいものを広めるため自主的に宣伝してくれます。第三者の意見であるため、潜在顧客に響きやすく、大きな効果に繋がることが期待できます。特にSNSの特性上、反響の大きい投稿はさらに拡散されるため、自社でのマーケティングでは実現できない結果が生まれることもあります。

ファンからの良質なフィードバックが得やすくなる

熱心なファンは、自社の商品・サービスを何度も利用しているからこそ、改善すべき点をよく把握しています。その良質なフィードバックは、商品・サービスをよりよいものにするうえで貴重な情報となります。

よくグループインタビューなどで消費者の意見を聞くことはよく行われていますが、”熱心なファン”に対して、何を評価して商品・サービスを使ってくれているのか、しっかりとリサーチすることで貴重なアイディアが生まれることが期待できます。

ファンマーケティングの成功のために必要な3つのポイント

ファンマーケティングを成功させるためには何が必要なのでしょうか?まとめると3つのポイントがあります。

ファンをきちんと捉える

まずは商品・サービスのファンがどのような層で、どのような生活習慣の人が多く、主な利用SNSは何か、などのプロファイル情報を把握することが非常に重要です。その結果を元に、展開する施策やコミュニケーションの戦略を立てていくことで、効果的な取り組みを生み出すことができます。

ファンが活発に行動できる土壌を構築する

ファンが口コミや他者への推奨など、行動を生み出しやすい「場」を作り出すことが重要です。「場」とは例えばファンサイトやファン同士が交流できるオンラインコミュニティを作ることが浮かびますが、拡散されやすいキャッチーなハッシュタグを作ったり、話題になりやすいコンテンツを作ることも重要な取り組みの1つです。

ファンの声を受け、アウトプットにつなげたり改善・改良する仕組みを作る

ファンの声を取り入れ、プロモーションや商品・サービスの改善活動につなげていく仕組みを作っておくこともファンマーケティングの効果を最大化するための大きなポイントです。商品・サービスの評価ポイントのコメントを店頭の販促POPに反映したり、顧客ニーズに沿った改良を施すことで商品・サービスのイメージも良くなります。

ファンマーケティングの成功事例

ファンマーケティングに成功した事例を3つご紹介します。

アテニア

エイジングケアの化粧品メーカーであるアテニアはコミュニティサイト「アテニア ファンコミュニティ」を立ち上げています。
登録者は30~50代の女性が中心で、その規模は20 万人以上にのぼります。(2022年10月時点)
この盛り上がりの背景には、企業側の一方的な発信ということではなく、プラットフォームとなって、ユーザー同士が交流を深めている点だと思います。

このコミュニティでは、商品のお気に入りのポイントや使用感などのレビューを投稿することができます。例えば、『おしゃべりカフェ』では、透子というキャラクター(掲示板のオーナー)を設定し、ユーザーが商品や美容などを気軽に投稿できるようになっています。さらに、ユーザーが自由にテーマを設定でき、美容とは関係のないテーマも投稿することができるのです。そして、投稿や投稿に対する拍手、投票などのアクションを行うとポイントがもらえ、こういった仕組みがより交流を深めるツールとなっています。

また、コミュニティのメンバー同士でサークルも作ることができます。アイドルや子育てなど、美容に関するサークルに限りません。
こういったユーザー同士で横のつながりが持てるコミュニティは他ではあまり見ることがありません。

スターバックスコーヒー

1996年に東京・銀座に日本1号店をオープンし、2022年9月末時点では1,771店舗もの店舗を展開するコーヒーショップであるスターバックスコーヒーは、店舗体験を軸としたブランディングを作り上げ、それに共感したファンを増やしていくことで規模を広げてきました。そうした世界観を反映したSNS展開も積極的に行い、Twitter、Facebook、Instagram、LINEなど、合わせて実に1500万人以上のタッチポイントを有しています。
加えて、2021年の日本上陸25周年のタイミングで新オウンドメディア「Starbucks Stories Japan(スターバックス ストーリーズ ジャパン)」を立ち上げ、積極的な情報発信と世界観の構築を行っています。

Web、アプリ、オウンドメディア、SNSと、顧客のブランドとの距離感や立ち位置に合わせたコミュニケーション戦略を確立しているブランドです。

ヤッホーブルーイング

大手メーカー数社が長年市場を独占する中、独自路線でファン育成とマーケティングを行い、現在のクラフトビールブームの先駆者となっているのが「よなよなエール」を始めとしたビール製造メーカーのヤッホーブルーイングです。

ファン向けのイベントを継続的に開催したり、時代の流れ、消費者ニーズに応じた独自の施策によって認知度を広げ、新規顧客の獲得とファン育成を続けてきました。商品開発においても、想定ペルソナを詳細に設定し、そこに該当する少数のモニターにヒアリングしながら、「インドの青鬼」「水曜日のネコ」など独自色の強いビールの開発を進めてきました。

こだわりのブランドを息長く育てることで圧倒的な差別化に成功し、熱心な支持を獲得、そうした製品は市場で際立ち、結果として、ターゲット層の周辺まで含めた幅広い支持を獲得することができます。

ファンマーケティングおけるリサーチの重要性

ファンマーケティングにおいて、リサーチが重要な役割を果たすことになります。

「ファン」の分析

前述の通り、どのような人が自社の商品・サービスの「ファン」と規定できるのか、さまざまな項目から分析し、把握することが非常に重要です。ここが誤ってしまうと、ターゲットがズレ、思ったような効果が得られない恐れがあります。

定点的なニーズのトラッキング

自社商品・サービスに対して顧客がどのように価値を感じ、購買に至っているか(もしくは購買をやめているか)、そうした変化を継続的にトラッキングすることは非常に重要です。変化に応じた柔軟な顧客とのコミュニケーションが求められる中で、疎かにしてはいけない要素です。

「顧客」の深掘り(定性調査)

ファンの解像度をさらに上げるため、顧客に徹底的にヒアリングすることも非常に重要な要素です。インタビューなどの定性調査をコアターゲットの実際のユーザーに行うことで、商品・サービスの強みや、逆に新規顧客獲得のための課題も浮き彫りになり、商品開発など生かすことができます。

より効果的なファンマーケティングを実現するには?

ここまで、ファンマーケティングの概要やメリット、成功のためのポイントや具体的な成功事例をご紹介してきました。
ファンマーケティングの効果を最大化するには、「ファン」の定義をしっかりと行い、対象に向けた施策で生まれたアウトプットを自社の施策に活かし、またファンに届けるという「入口」と「出口」の循環をしっかりと作り上げることが重要です。
そのためには常に顧客志向に立ち、リサーチから抽出したファクトに沿ってできるだけ正しい判断を行う必要があります。

最適な施策や仕組みの構築のお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

(digmar編集部)