最新の進化と生活者に求められる玩具とは~最近の玩具業界の解説とアンケート調査~
コロナ禍においても玩具業界の売上は堅調で、様々な玩具(おもちゃ)が販売されています。少子化によって一見すると成長しないと思われている方もいるかと思いますが、実は消費者の新たな需要も取り込んで伸びているのです。
そこでこの記事では、2022年6月に発表された「日本おもちゃ大賞」受賞作品を中心に、幼児・子ども向けの玩具動向と大賞作品の開発背景・人気の理由について解説し、併せて小学生以下の子供を持つ家庭への玩具の購入状況について行ったアンケート調査の結果をご紹介します。
目次
幼児・子供向け玩具の動向
少子化が社会的問題になる中でも、一般社団法人日本玩具協会『2021年度玩具市場規模調査』によると、2021年の日本の玩具市場は調査をはじめた2001年以来過去最高規模を記録(希望小売価格ベースで8,946億円、対前年比108.5%)しているようです。(出所:一般社団法人日本玩具協会ホームページより)
実際にどのような玩具が人気なのか、見ていきます。
2021年度に売上が伸びた玩具の主要10分野
2021年度に売上が伸びた玩具について、上からならべてみました。(出所:一般社団法人日本玩具協会『2021年度玩具市場規模調査』)
(1)カードゲーム・トレーディングカード 145.6%
(2)ハイテク系トレンドトイ 140.3%
(3)のりもの玩具 112.2%
(4)ぬいぐるみ 106.3%
(5)キャラクター 101.5%
(6)ドール、ままごと 100.8%
(7)知育・教育玩具 99.0%
季節商品 99.0%
(9)ゲーム 93.3%
(10)ジグソーパズル 85.8%
カードゲーム・トレーディングカードは、「ポケモンカードゲーム」、「遊戯王OCG」、「デュエル・マスターズTCG」という長年子供に人気のカードゲームが牽引しています。
テクノロジーを駆使したハイテク系トレンドトイは日本おもちゃ大賞2021優秀賞受賞の「ぷにるんず」、「たまごっち」のウェアラブルデバイス「Tamagotchi Smart」の人気により伸長しています。
なおジグソーパズルは昨年割れしています。これは、コロナ禍が要因で2020年度に昨対比158.7%と大きく成長し、その反動で2021年度は減少したようです。
幼児・子ども向けの玩具が伸びている背景
このように全体的に幼児・子ども向け玩具が伸びているのですが、その理由はなぜでしょうか。
「おうち時間」需要で教育的要素のある商品の売上が増加
コロナ禍により家の中で過ごすことが増え、玩具業界にとっては追い風となりました。その中でも人気を集めたのが教育的要素のある玩具でした。リモートワークにより家族が家で過ごす時間が増える中で、子供とのコミュニケーションが生まれる玩具が選ばれている傾向があります。
ハイテク系トイは継続して伸長
ハイテク系トイは高機能化が進んでいます。たとえば人気のキャラクター「すみっコぐらし」の玩具「すみっコぐらしパソコンプレミアム」は、ノートパソコン型の玩具で、プログラミングの学習が可能です。
他にも1,000種類以上の感情表現とともに成長するロボット「COZMO」など、コミュニケーションが可能な玩具も目立っており、知育的機能と玩具としての面白さを両立しているものが数多く生まれています。
最近のトレンド~2022年日本おもちゃ大賞注目作品より
毎年発表されている「日本おもちゃ大賞」。2022年度の受賞作品から、現在のトレンドを見ていきます。
エデュケーショナル・トイ部門
【大賞】coemo(コエモ)
コミュニケーション・トイ部門
コエモは家族の声を録音するとその声をAIが合成して、読み聞かせをしてくれる玩具です。読み聞かせは子どもの聞く力や想像力を養うことにつながります。家族の声で読み聞かせすることよって子どもがおとなしく聞いてくれる効果もあり、共働きや家事で子供の世話が難しい時間帯の保護者のニーズに一致した商品です。
【大賞】3D立体オセロ
オセロと言えば平面で行うものが一般的でした。そのオセロを進化させたのが3D立体オセロです。立体にすることで今まで以上に頭を使うゲームに進化しており、頭のトレーニングにもなります。
また、チーム戦もできるため、家族でいっしょに楽しめるゲームです。「おうち時間」需要が増える中で、頭を鍛えながら家族でコミュニケーションをとって遊べることが、コロナ禍での需要とマッチしたと考えられます。
ヒット・セールス賞
【大賞】すみっコぐらしパソコンプレミアムプラス
先ほどもご紹介したこの商品は2020年度から大ヒットしています。プログラミング教育の広がりやパソコンが子供たちにとってより身近になったことが背景にあります。
「すみっコぐらしパソコンプレミアムプラス」はプログラミングだけでなく、英語や算数も学べ、もちろんゲームも入っているため、遊びと学習の両方ができるコンテンツとして大ヒットしています。。前述の通り教育的要素への需要をうまく取り込んでヒットに結び付けた商品だと言えます。
コロナ禍で購入した玩具についてのアンケート調査
現在の生活者のニーズをつかむべく、小学生以下の子供を持つ親世代の男女に対して、「コロナ禍で購入した玩具」と「その理由」、及び「今後購入したい玩具」について聞きました。
ポイント
・知育系玩具が「今後購入したい玩具」でTOPに。
・「おうち時間」の増加で玩具に期待される役割が多様化。
【調査概要】
調査期間:2022年7月15日(金)~18日(月)
調査主体:弊社
調査対象:20歳~59歳の男女(全国)
※未就学児・小学生の子供を持つ親
有効回答数:658名
調査方法:インターネット調査
実施機関:弊社
*小数点以下を四捨五入
【内容】
コロナ禍において、未就学児や小学生の子供に玩具を購入したか
コロナ禍で購入した玩具した人は、全体の66%でした。購入したトップは「ゲーム機/ソフト」、次いで「ぬいぐるみ・人形・フィギュア」、そして「キャラクターグッズ」と「知育・教育系玩具」が並ぶ結果となりました。また、「カードゲーム」よりも「ボードゲームやパズル」の方が多い結果となりました。
玩具を購入した理由について
玩具の購入理由(玩具の購入者に対して)を聞いたところ、「子供の要望」が最も高く、次いで「家にいる時間が増えたため」の順でした。そして、ほぼ同数で「教育や発達に良いと思ったから」「家族のコミュニケーションを図るため」「安全・安心に遊べるため」が高く、コロナ禍での時間の過ごし方のほか、子供の発育やコミュニケーションの手段として明確な目的を持った購買が起こっていたことが見て取れる結果になりました。
今後購入したいと思う玩具について
「今後購入したい玩具」を聞いたところ、「ゲーム機・ソフト」を抑え「知育・教育系玩具」がトップになりました。
プログラミング教育や語学教育などの親世代には経験のない新たな領域の存在や、おもちゃ大賞受賞作品からもわかるように、教育的効果とゲーム性を両立したハイテク系玩具が増えことで、より子供の関心を引くことができ、購入を検討しやすい玩具が増えていることもこのジャンルの伸長の理由だと考えられます。
玩具のニーズの多様化がこうしたところからもわかります。
<まとめ>
遊びだけでなくコミュニケーション・教育に好影響を与える玩具が注目されていると見て取れました。玩具市場は少子化にもかかわらず、今後も成長する市場だと考えられます。その理由は、前述したように、コミュニケーションの強化や教育的要素など、子供の成長における新たな手段として数多くのシーンで利用されているからです。
また近年、プログラミング教育の導入により、プログラミング領域での玩具も増えています。たとえばロボットを動かすことでプログラミング的思考が学べたり、プログラミングコードを書かなくてもプログラミングを直感的に学べるものも出ています。
知育玩具という分野だけでなく、玩具全般に教育的要素や知育要素が入ってくると予想され、少子化と言えども市場拡大が伸長していくのではないかと考えられます。
(digmar編集部)