「手軽な腸活」を求めるニーズに定番商品が応え、生み出す新たな価値とは?
「腸活」というキーワードは、便秘や下痢などの悩みを持つ人や美容に関心のある女性に向けたものでしたが、近年では健康志向やコロナ禍の後押しもあり、生活習慣として取り入れる人も増えているのではないでしょうか。
そうしたニーズが高まる反面、腸活の継続に課題を持っている人も多いこともわかっています。食物繊維や乳酸菌などの善玉菌を日々の生活の中で効率よく摂取できる「手軽な腸活」が求められる中、定番商品がそのニーズに応える動きが出ています。
この記事では腸活の現状と、各社の商品・戦略をご紹介します。
目次
高まる「腸活」への関心
乳酸菌シロタ株を1000億個配合し、ストレス緩和、睡眠の質向上を実現する働きのある「ヤクルト1000」が在庫品薄になるほどの大人気となったように、健康意識の高まりやコロナ禍におけるあるべき生活習慣の在り方として、腸内環境を整えることで体本来の健康を取り戻す「腸活」への関心は高まっていることが伺えます。
「ヤクルト1000」はSNSが後押しした一種のブームとしての側面も大きいですが、腸活に関するアンケート(株式会社オレンジページ)や緊急事態宣言下での食生活や腸活に関する調査(万田発酵株式会社)の調査結果から、ヨーグルトや納豆などの善玉菌が含まれる発酵食品、野菜など食物繊維の多い食品など、普段の食生活においても腸内環境をよくすることを意識して食品を取り入れる機会は増えてきていると考えられます。
腸活の日常生活への浸透を実現するには?
反面、習慣としての「腸活」を自身の生活に浸透させる・落とし込むことを実践できている人はまだまだ多くはないこともわかっています。
先ほどのオレンジページの調査によると、腸内環境を整えたいと考えている人は93.3%おり、また腸内環境に自信のない人も約7割いるものの、その中で実際に腸活をしたことがある人は35%です。
加えてビオフェルミン製薬が行った「腸活に関する意識調査」によると、64.8%の人が腸活は「継続することが大事」であると考えています。
実践方法としては「乳酸菌などの善玉菌を摂取している(74.7%)」が最も多く、次いで「栄養バランスの取れた食事を行っている(50.2%)」「食物繊維やオリゴ糖が含まれる食品を取り入れている(46.5%)」と、食事など日常生活の中に腸活を取り入れることが、継続のポイントであることがうかがえます。
しかしその反面、腸活を実践する上での課題として39.0%の人が「続けるのが大変」と回答しています。
こうした調査からも、忙しい現代の食生活においては習慣的に腸活につながる食品を取り入れることに大きな課題があり、かつ継続がしたくても実践ができていない現状があることがわかります。
こうしたニーズを受け、食品メーカー各社も、腸活をフックにした商品の開発に取り組む動きが多くみられるようになっています。
開発の傾向・ポイントとしては、やはり生活者が課題に感じている継続と実践の障壁を乗り越えるための「手軽さ」があるでしょう。
なかでも既にユーザーに幅広く認知されているブランドが、日々の生活で無理なく腸活を実現するための商品を発売している傾向があります。
手軽な腸活を!各企業の商品と戦略
ここからは具体的な3つの商品から、各社の腸活に関連した商品開発や戦略を紹介していきます。
片岡物産「バンホーテンの腸活ココア」
お腹の不調に悩みを持っていた開発担当者が、ココアが本来持つ整腸効果に注目し、水溶性食物繊維イヌリンを配合してさらにその効果を高めた商品。
「健康をおいしくサポートした商品を、シャープに届けたい」という想いから、成分はピュアココア・砂糖・イヌリンというシンプルな原材料の機能性表示食品となっており、商品名もシンプルに便益を訴求する「腸活ココア」。
「便益をストレートに商品名やコンセプトに反映する」ということに対しては社内の懸念もあったようですが、開発者の実体験を元にしたユーザーニーズの仮説・勝算もあり、この形でのリリースとなりました。
2021年9月の発売開始以降売り上げは好調で、商品名のわかりやすさもあり働く女性の支持を集めているようです。
また、ストレートなキーワードによって店舗での販売促進施策も組みやすく、従来のココア商品では見られない販促事例も多く見られているといいます。
訴求ポイントをシンプルかつシャープにアウトプットすることで、ユーザーのニーズに合致し人気商品となった好事例と言えるでしょう。
味の素AGF「〈ブレンディ〉毎日の腸活コーヒー」
「〈ブレンディ〉毎日の腸活コーヒー」は整腸効果のある「コーヒー豆マンノオリゴ糖」を配合したコーヒーです。1日2杯を2週間飲むだけで腸内環境の改善が見られます。
その結果、お通じがよくなるだけでなく、「ブレンディ」のコーヒーとしてのおいしさも味わいながら腸活を継続できる商品。
味の素AGFが調査した結果によれば、腸活は毎日継続することが難しく、お金がかかりそうという理由で実践していない人が約6割いました。
そうした中で、飲用が習慣化しているユーザーが多いコーヒーと、継続することに課題のある腸活の相性は非常によく、発酵食品とは別の腸活の選択肢を提示することができます。
また、整腸成分である“コーヒー豆マンノオリゴ糖“はコーヒー豆由来の成分のため、コーヒーの味わいとの相性が良く、おいしさを損なうことなく健康効果を付与することができるという点も大きなポイントです。
ブレンディという大きなブレンドでこうした商品を売り出すことで、腸活への効果によるトライアルユーザーの呼び込みの他、インスタントコーヒーを日頃飲んでいる人のブランドスイッチ・指名買いの契機として高い効果を期待できる商品です。
キリン「キリン 午後の紅茶 アップルティープラス」
「キリン 午後の紅茶 アップルティープラス」はキリンビバレッジ株式会社ファンケルと共同で開発した商品。こちらも多くの支持を集めるブランドの新商品で、「ビフィズス菌を増やして腸内環境を改善」する紅茶としてリリースされました。
「おいしく腸内ケアし、心も体もすっきり前向きにさせてくれるアップルティー」がコンセプトで、機能性表示食品として届出公表された日本初のペットボトル入り紅茶です。
先述の通り、「腸活」の商品はヨーグルトや納豆が一般的であり、嗜好性の高い食べ物は少なく嗜好の高い食品で腸活を実践することは難しい状況でした。「午後の紅茶」のような根強い人気と習慣性の高いユーザーを持つブランドが機能性表示食品として新たな領域での開発に取り組むことは、ユーザー課題と積み上げてきたブランド価値をうまくリンクさせた商品開発と言えるでしょう。
「腸活」が商品開発の大きなフックに
新商品として腸活の要素を組み合わせた人気ブランドの戦略について紹介しました。
日々の生活で乳酸菌などの善玉菌や食物繊維を摂ることを求めながら、継続していくことに課題を感じている層は一定おり、新たな市場として顕在化しているようです。
この他にもスーパー大麦などの主食系やスイーツなどでも腸活をフックにした同様の動きがあり、定番商品のマンネリ化を防ぎ、新たなユーザー獲得にも寄与できるキーワードとして有用なものであることが伺えます。
自社の強みと市場のニーズをいかに掛け合わせて商品を作っていくかを考えていく上で、今後も注目されていく領域と言えるでしょう。
(digmar編集部)