ゲーム実況視聴者における「投げ銭」実態調査

「ミレニアム世代」「Z世代」が注目されるようになって久しいが、29歳以下の若者と上の世代とは意識にギャップがあり、従来のマーケティング手法が効きづらいという話を耳にします。
その若者に支持される趣味として、「ゲーム実況の視聴」が定着してきている。2021年7月にソニー生命保険株式会社が実施した「中高生が思い描く将来についての意識調査2021」では、なりたい職業の上位に「ゲーム実況者」がランクインし、YouTubeやTwitchなどのプラットフォームの充実に伴い、「投げ銭」をする利用者が現れるなど、上の年代が経験していない憧れや消費行動が見られます。
そこで、若者を理解し、有効なアプローチを探るため、若者に定着した「ゲーム実況の視聴」と「投げ銭」の行動についてインタビューを行いました。

*本編は抜粋版となります。フルレポートを希望される方は、お問い合わせください。

【調査概要】
調査地域 :日本全国
調査対象 :18歳~29歳 ゲーム実況を視聴し、投げ銭をしている男女
調査手法 :デプスインタビュー
サンプル数 :5名

対象者のプロフィールは以下のとおりです。

 年代性別職業ゲーム実況で見るゲームゲーム実況を見始めた時期1日の視聴時間投げ銭 金額(月)
120代女性事務職ホラーゲーム12-3年前平日2-3h 休日8h5,000円
210代女性大学生Apex、Ark2年前平日2-3h 休日2-5h数千円
320代男性SEホラー、 モンスター系2年前位平日0.5-1h 休日1-2hするときは 1万円位
420代男性アルバイトシューティング、 FPSゲーム6-7年前位平日3-4h 休日4-5h1万円位
520代女性専業主婦サバゲー系1年半-2年前5hくらい 10hの時も5,000円前後

なぜゲーム実況を視聴するのか

ゲーム実況を視聴する理由

・ゲーム実況がコンテンツとしてリアル感(作られた感がしない)があること。
・視聴者が、自身に合ったゲーム実況(者)を選ぶことができること(ゲーム内容、視聴時間、視聴の仕方(ライブ・アーカイブなど))。
・オンラインならではの友人づくりができること。

ゲーム実況にハマった理由

・ハプニング続出!まさにプロ技!! が感じられるコンテンツとしての面白さ

ゲーム自体を進めていくワクワク感と、視聴中に視聴者や実況者にとっての予想外・想定外のことが起こることによるリアル感が面白さに繋がっている。
ゲーム実況者に、視聴者自身ではできない高度なゲームプレイ、ゲーム進行を求めて視聴している。

・自分の好みにあった実況者が見つかる

視聴者毎にゲーム実況視聴時に“声のトーンが落ち着いている”“強い言葉を使わない”
“結構ハイテンションで高い声”といった好みがあり、好みにあった実況者を選択して、ゲーム実況を視聴している。

・自分のライフスタイルに合った視聴ができる

ゲーム実況の視聴方法として”ライブ”と”アーカイブ”があり、今回の対象者は”アーカイブ”の視聴者が多かった。
“アーカイブ”視聴する理由は、「自分の観たいところ以外に時間を消費したくない」「自分の観たいところだけ/視聴したい」といった要望から、時間短縮できる“アーカイブ”視聴を重視することが垣間見えた。

ゲーム実況への接し方

集中視聴派!(テレビ的視聴)

集中視聴派は他の趣味等をする時間は確保した上で、ゲーム実況を視聴する時間を捻出している人。
有職者・学生で平日は30分-3時間、休日は1-5時間程度視聴している。アルバイト、自己啓発、ジム通い、他の趣味など、多忙化している中でも時間を割いた上で、ゲーム実況の時間を創出していることが確認できた。

BGM視聴派!

有職者or無職者共に平日2-4時間、休日は4-10時間程度 ゲーム実況を視聴している/映像を流している。ゲーム実況をBGMのように視聴していることが伺えた。

なぜ若者は「投げ銭」をするのか?

ひと月当たりの投げ銭金額は「3千円」~「1万円」程度

投げ銭を行う心理的パターン

実況者を応援したという意識(ファン心理)

ゲーム実況を視聴するうちに、配信者への好感度が高まり「面白い試合を見せてくれた」「ゲームに勝っておめでとう」「(声の調子が悪かったら)のど飴を買って」等、“応援する”気持ちが“投げ銭”へと繋がる。

実況者に気持ちを伝えるための手段(私に気づいて)

「自分の存在に気付いて欲しい」「存在を認めて(認識して)欲しい」と実況者に“近づきたい”という意識が“投げ銭”へと繋がる。また、存在に気づいてもらうことで“ゲーム実況”をより楽しめると考えていた。

実況の労力への報酬(感謝)として

実況には機材を揃えたり、撮影した動画を編集する等の労力や面白く話す技術が必要であることを知っており(自分ではできない・リスペクト)、その労力へのお礼(対価)として、また、いつまでも配信を続けて欲しいという気持ちが“投げ銭”へと繋がる。

POINT

③実況の労力への報酬(感謝)は“対価”を支払うという市場経済に沿ったものだが、
ゲーム実況自体はお金を支払わなくても楽しめるものであることから、①(ファン心理)または②(私に気づいて)の心理状態が生む行動であるといえる。


インタビューで確認された若者の意識・行動

若者と情報

効率よく情報を収集したい

効率よく情報を収集したい、ハズレの情報に時間を割くのを避けたいという意識が強い。このため、読むことが必要な攻略サイトよりも動画、見所が凝縮された動画、見たい情報が集中している情報源が支持されている。また、再生数が多いもの、レコメンドであがってくる動画が最初の接点となることが多い。

「創られた情報」を見抜く

芸能人の配信は、スポンサーに配慮されたものになっていると感じていたり、人を惹きつける実況が簡単ではないことを知っており、動画コンテンツへの審美眼は高い。

若者と他者

自分が良いと思ったものでも(リアルの)友達に押し付けない

話題を振ってみて関心がなさそうならばそれ以降は話を振らないという行動がみられ、自分の興味・趣味を人に押し付けないという意識が確認できた。動画配信のコミュニティやSNSで興味が同じ人と共有・共感(自己実現欲求の充足)ができることから、リアルでは無理をして仲間を作ることをしない(リアルで趣味を共有する仲間を作る必要がない)。

暗黙のルールを察する能力が高い!

実況者を中心としたコミュニティは、場の盛り上がりを楽しんだり、自己実現欲求を満たす重要な場であることから、場が乱れる極端に高額な投げ銭や、反則に近い裏技を使うことはせず、悪目立ちしないように配慮している。自分は沢山いる視聴者の中の一人、ゲームという興味対象があっての繋がりという意識は持たれている。

若者とお金

一般的に価値があるかは気にしない。自身が価値だと思えばお金を払う

実況をするためには機材を揃えるなどコストがかかること、またコストをかけないと視聴者を満足させる実況ができないことへの理解がある。また、機材を揃えたとしても、トークスキルが必要であることも理解しており、投げ銭には「ありがとう」「お疲れ様」の気持ちが込められている。(これに加えて、ファン心理・実況者への存在アピールが原動力となっている)

投げ銭は衝動的ではない!

投げ銭は、自分が出せる予算の範囲で、将来のための貯蓄とは別に支出されており、刹那的でムダな支出とは意識されていない。

若者を取り込むために有効だと思われるアプローチ

・効率よく情報を収集したい

・「創られた情報」は見抜く

・自分がよいと思ったものでも(リアルな)友だちに押し付けない

・(コミュニティ上の暗黙のルールを)察する能力が高い

・一般的に価値があるかは気にしない。自分にとって価値があると思えばお金を払う

・投げ銭は衝動的ではない(懐事情に照らし計画的に)

*本編は抜粋版となります。フルレポートを希望される方は、お問い合わせください。

参考:eスポーツ観戦についてのアンケート|ゲームをプレイする観客とプレイしない観客の特徴の違いは?

(digmar編集部)