大手企業も!『お菓子のサブスク』参入する理由とは
サブスクリプションサービスと言えば、アマゾンプライムやネットフリックスなどの動画配信サービスがよく知られていますが、最近では「お菓子のサブスク」も登場しています。しかも、お菓子の販売を専業とした企業だけでなく、森永製菓やカルビーといった大手企業、ゴディバなど高級お菓子メーカーも参入しているのです。
ではなぜお菓子メーカーもサブスクを導入しているのでしょうか。そこには企業に求められる提供価値やおやつに対する意識の変化も関係しているのです。この記事ではお菓子のサブスクでの提供事例の紹介と生活者に求められている理由について説明します。
目次
「仕事中のおやつ事情について」のアンケート
サブスクリプションサービスについて、触れる前に・・・
弊社で”仕事中のおやつ事情”(男性)について調べたデータがありますので、社会人のお菓子を食べる状況について少し触れてみたいと思います。
【概要】
・調査方法:インターネット調査
・調査対象:有職者男性20代~70代466名
*パート・アルバイトは除く
・実施期間:2022年3月
仕事中におやつを食べているか。出社する人はどこで購入しているか。
「食べる」(毎日食べる~時々食べる)と回答は48%であり、「食べる人」と「食べない人」は約半々であった。
仕事場に出勤する人が、仕事中にオフィスグリコやコンビニにて購入する割合よりも「おやつ用に事前に購入している人」が多いことがわかりました。
仕事中にどのようなおやつを食べているか
*「毎日/時々おやつを食べる」と回答した人
仕事中に食べるおやつの種類は「チョコレート/チョコレート菓子」が最も高く、次いで「米菓」、「スナック菓子」の順でした。
POINT
有職者の男性の約5割程度がおやつを食べており、出勤者は事前に用意している人が多い。食べるものとしては、「チョコレート/チョコレート菓子」が最も高い傾向であった。
つまり、大人も普段からお菓子を食べている傾向があり、これからお話するお菓子メーカーがサブスクを取り入れる要因の一つになっていると考えられる。
お菓子のサブスクとは
サブスクリプションサービスとは、料金を支払うと一定期間のサービスを受けられる仕組みです。そして『お菓子のサブスク』は、料金を支払うことで、決まった期間、お菓子が届くサービスです。
多くの場合、自分でお菓子の種類を選ぶのではなく、事業者の選んだお菓子が送られてくるため、今まで食べたことがないお菓子に出会うことができたり、何が届くかわからないというワクワク感などの体験が得られるという魅力があります。
定期購入とサブスクの違いは?
お菓子を定期的に購入する方法はサブスクだけではありません。定期購入という方法も以前からあります。では定期購入とサブスクは何が違うのでしょうか。
定期購入は同じ商品を購入し続けること、サブスクは「サービスを使う・体験する権利」を購入している
定期購入は同じ商品を購入し続ける方法です。それに対し、サブスクは事業者側がユーザーが支払う金額に応じたサービスの利用や体験を提供するものと位置づけられます。お菓子のサブスクで言うと、先述の通り、事業者側が企画したラインナップのお菓子を提供することが多く、それによってお菓子との新たな出会いや楽しみを享受するという価値を提供しています。
ニーズに合わせた料金・提供プランを提供
サブスクはプランのバリエーションが特長です。定期購入の場合も契約期間に応じて料金体系が変わる場合はありますが、多くのサブスクでは、ニーズに合わせてさまざまな料金・提供プランが設定されています。トライアルユーザーには試しやすいプラン、コアユーザーには付加価値が付いたプランなど、個々のサービスへのニーズに合わせてプランを設定することで、多様なユーザを囲い込むことができます。
お菓子のサブスク提供事例
お菓子のサブスクに参入する企業について、3つのタイプ(業態)があり、それぞれの企業が参入した背景や目的、さらには実際の効果などについて説明します。
D2Cで展開する専門企業
snaq.me(スナックミー)
一般流通には乗らない形で、こだわりの商品をインターネット上でのみ販売(D2C)するスタートアップ企業が食の領域でも展開されています。
そのなかで、お菓子のサブスクの新興サービスとして真っ先に名前の上がるのが、「snaq.me(スナックミー)」。
スナックミーは「おやつの時間を価値あるものに。」をコンセプトに、単におやつを「モノ」として消費するのではなく、おやつ時間を楽しんでほしいという目的で、サービスを提供しています。
人工添加物を用いず、自然素材で作られたシンプルな味付けが特徴で、ドライフルーツやクッキーなど約130種類のラインナップの中から8種類が送付されます。
サービス設計においては兼ねてよりネットフリックスを参考にしていると公言しており、膨大なデータの活用とユーザーテストを通して顧客満足度の維持向上に取り組んでいます。
2016年のサービス提供開始以降、売上は月次で5~10%ずつ伸び、2020年には1年の売上規模が倍になるなど順調にユーザーを獲得しています。「菓子業界における国内No.1のサブスクリプションサービス」を目指す、として大規模な資金調達も進めており、躍進が続いているサービスです。
大手お菓子メーカー
大手メーカーもお菓子のサブスクに参入しています。スーパーやコンビニなど既存の販路に加えて生まれる大手ならではのメリットをご紹介します。
森永製菓【天使のお菓子箱】
森永製菓では「天使のお菓子箱」というサービスを提供しています。「天使のお菓子箱」は森永製菓の人気商品や新商品が詰め合わせになって送られてくるサービスで、毎月内容が変わるセットと、定番商品のみのセットを選択することができます。
その他に大手メーカーがサブスクで提供するメリットとしては、「指名買い」の増加や定番商品のファン増加という点があります。
主戦場になるスーパーやコンビニのお菓子売り場は、さまざまなメーカーの同ジャンルのお菓子が並び、新商品の入れ替わりも激しいです。「このブランドが好きだから買おう」というファンユーザーを獲得することは非常に難しいものですが、商品棚以外に定期的に商品が届く関係値を作ることは大きな価値になりますし、日常生活の中での「指名買い」を促進することにも繋がります。
また、長年販売されている商品は売上が安定している反面、新規のトライアルユーザーの獲得が難しい、という側面もあります。サブスクで多くの商品と一緒にユーザーの元に届くことで、「知っていたが実は食べたことがなかった」「このブランドは知っていたが、この味やシリーズは知らなかった」というユーザーにも商品を届けることができ、新たなユーザー獲得の機会にもなります。
高級系お菓子メーカー
デパ地下や専門店を持っているような高級系御菓子メーカーもサブスクを展開しています。
GODIVA(ゴディバ)
ゴディバはサブスク用商品メニューとして、チョコレートやクッキーなどを含む、6つのコースを用意しています。「ご褒美セット」、「ジョイフルセット バラエティアソート」など、ライフスタイルに合わせて提供されています。
バレンタインやホワイトデーなど、シーズンごとにヴィジュアルやデザインが話題になるゴディバですが、サブスクで提供される際のパッケージも、つい写真に撮ってアップしてしまいたくなるような高いデザイン性があり、SNSでも女性を中心に到着したパッケージをUPした写真を数多く見かけます。また、小袋もついており、ちょっとしたプレゼントにも利用されているようです。
チョコレートはイベントでの売上が非常に大きいジャンルの商品ですが、サブスクで提供することで安定した売上が期待できることはもちろん、価格帯の高いものは特に「ちょっとしたご褒美」のイメージとしてユーザーの日々の生活に根付くこともブランドにとって大きな価値になります。
Minimalはカカオ豆の仕入れからチョコレートづくりまでの全ての工程を自社工房で職人達が手仕事で行っており、都内に直営店を2つ持つほかは、オンラインでの販売を行っています。
そんなMinimalが「月に一度の、偏愛を。」というキャッチコピーで提供しているサブスクサービスが「Chocolate Addict Club」です。
発売後すぐ売り切れてしまうものも多い最新作や限定品が優先予約でき、送料無料、もちろん購入の手間も省けるため、ブランドを愛するコアユーザーにとっては非常にメリットがあり、ユーザーを囲い込む上では非常に有効なサービスになっています。
また同社が実施した「サブスクスイーツに関する意識調査」(3つ以上のサブスクサービスに登録している20代〜40代の男女107名に実施)では、月に1回限定スイーツが届くことで、毎月ワクワクを感じられる『上質スイーツのサブスクサービス』については、77.6%が「利用したい」との回答でした。その理由として、「大切な人とのコミュニケーションのきっかけにしたいから」が50.6%で最多、次いで「コロナでストレスが溜まる中、月に1度の楽しみを作りたいから」が49.4%、「わざわざ自分で買いに行くのは面倒だから」が43.4%という結果となりました。
コロナ禍という時代背景(家に居ながら、ちょっとした楽しみを利用したいというニーズ)が、このようなサブスク需要を後押ししていることが覗えます。
まとめ
企業や提供商品のタイプ別に実際の事例とその背景をご紹介しました。そして、なぜお菓子のサブスク化が増えてきたか。それは、企業側の『顧客との関係性の維持』というメリットと、ユーザーの需要『コト消費』という面が重なり、お菓子分野でのサブスクが進んできたということがわかりました。
ユーザーと継続した関係性
日々数多くの商品が生まれ、生活者の選択肢が増える中で、日々の生活に価値を与えるサービスとして継続的な関係性をユーザーと保つことは企業にとっては大きなメリットです。例え新規客がなかなか伸びなくても、継続客からのストック売上があるため、ある程度の売上を確保することができるのです。これには顧客ロイヤルティーの維持が前提となります。
おやつの「コト消費」に
新型コロナウイルスの流行により在宅時間が増え、おうち時間」を充実させたいと考える人が増加しました。日頃行っていた行動や習慣により価値を求める動きが生まれ、おやつの時間の充実もその一つとなりました。ただ自分で買ったおやつを食べるだけでなく、おいしいお菓子、食べたことがないお菓子を食べる、という体験を得たい、という「コト消費」の需要が生まれているわけです。
また、今までコンビニやオフィスグリコを利用していた会社員が、会社に行く回数が減ったため、会社で楽しんでいた「おやつ時間」を自宅でも味わうため、お菓子のサブスクをはじめるという需要もあるようです。
お菓子のサブスクは、コロナ禍でさらに高まったのおうち時間の充実とコト消費への意識の高まりから注目されました。そしてコロナ禍だからという一過性ではなく、コト消費へのニーズは増えていくと考えられますし、企業も新たなユーザーとのコミュニケーション、提供価値の創出のために、引き続き力を入れていくのではないかと思われます。
(digmar編集部)