人気店も参入!冷凍ラーメンの進化と人気の背景とは?

国民食とも言えるラーメン。どこに行ってもラーメン店がない地域はないと思えるほど、ラーメンは身近になっており、各地域には名店が存在しています。
そんなラーメン店も今回の新型コロナウイルスによる休業や営業時間短縮等により売上に影響の出ている店舗も多く、閉店するところも出てきています。

そのような中で、新しい販売チャネルとして自動販売機やインターネットサイトで冷凍ラーメンを販売するラーメン店が登場しており、今後、さらに増えていくことが予想されます。ではなぜコロナ禍の新しいマーケティング戦略(新たなる販売チャネルの開拓)として冷凍ラーメンを販売するラーメン店が増えているか紐解いていきたいと思います。

本記事では、その冷凍ラーメンが発売された要因や販売チャネルの拡大されている背景について説明していきます。

冷凍ラーメン事情について

冷凍ラーメンは以前よりスーパーマーケット等で麺製品を手掛ける食品メーカーから商品が販売されています。調理方法もレンジで温めるだけで食べられるものや具やスープも含めて凍らせた麺をそのまま火にかけることでラーメンができあがるという画期的な商品も発売されています。また、人気チェーン店などの監修が入った商品(発売元はあくまでも食品メーカー)も数多くあります。

最近(コロナ禍に入ってから)では、メディアに取り上げられ人気店や名店と呼ばれるようなラーメン店が自社で冷凍ラーメンを販売するお店を目にするようになりました。味も麺もお店のものそのままで、自宅で人気店のラーメンが楽しめるということで人気が高まっているようです。

ラーメン店が冷凍ラーメンに力を入れる理由

ラーメン店が冷凍ラーメンに、力を入れるようになった理由を挙げてみました。

新型コロナウイルスによる来店客の低下

これはラーメン店に限った話ではなく飲食業界全体に言える話ですが、新型コロナウイルスの影響(外出自粛)で来店客が減っています。その上、営業時間を制限されることもあり、お店の売上が見込めないという不安定な状態になっています。実際に2021年1月13日の帝国データバンクの調査(※)によれば、2020年のラーメン店の倒産件数は46軒となり、過去最多を記録しています。

それを対し、冷凍であれば来店する必要がなく、お店を同じ商品を家で食することが可能となります。よって、売上を少しでも補完する形で、冷凍用の商品開発が進んだと考えられます。

※「ラーメン店の倒産、初の年間40件超えで過去最多 コロナ禍で客足戻らず厳しさ浮き彫りに」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000226.000043465.html

「おうち時間」の過ごし方・価値観の変容

新型コロナウイルスはライフスタイルの変化をもたらしました。外出を極力控えるようになり、仕事もリモートワークで自宅でする人が増え、家にいる時間が増えました。それにより「自宅での体験」というものへの価値観が変容していると考えられ、いつもの食事もより良い物を食べたい、好きなものを食べたいという欲求が増してきているのではないだろうか。コロナ禍に入ってから、飲食業界ではデリバリーサービスを行うお店が増えています。実際に売上が伸びた飲食店も多く、大きな収入源になっています。こうした流れはラーメンも同じです。チェーン店だけではなく、名店と言われるようなお店の金額が高いラーメン店もデリバリーサービスを取り入れ、「自宅でのちょっとした贅沢」として受け入れられるようになっているようです。

ただラーメンの場合、デリバリーだと麺が延びてしまうことがあり、味が落ちてしまう可能性が高く、他の商品よりも距離的が限定されてしまいます。しかし、冷凍ラーメンであれば、お店の味をそのまま、いつでも自宅で楽しめるわけです。そしてそれが名店なら、普段だったらお店に行き、並ばないといけないのが、好きな時にお店と同じ品質で自宅で味わうことができるのです。

このようにコロナ禍によって「おうち時間」が増えたことにより、冷凍ラーメンの需要も伸びているわけです。

冷凍加工・保存性能/味の向上

冷凍加工・保存の技術が向上と、企業努力による冷凍用向け商品開発により、味を落とすことなく家でも食することができるようになりました。

自ら簡単に冷凍加工を行うことができるような技術とともに、ラーメン店の味へのこだわりに応えられるような再現性を持つことができるようになったことは、冷凍ラーメンの販売に踏み切る大きなポイントになったと考えられます。

冷凍ラーメンの新たな販売チャネル

それでは冷凍ラーメンはどのような販売チャネルで売られているか掘り下げていきたいと思います。冷凍ラーメンは、以前よりスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで販売されていますが、ここでは特徴的なチャネルについて紹介していきます。

インターネット販売

各社インターネットでの販売に注力しているようです。インターネット販売でもいつくかの異なるサイト運営の形態があります。「自社サイトでの販売」「ECサイトへの出店(Amazonや楽天市場など)」「ラーメンの専門ショッピングサイトへの出店」などです。

具体的な例を挙げていきます。

自社サイトでの販売
 【中華蕎麦 とみ田

ECサイトへの出店(Amazonや楽天市場など)

【AFURI】

ラーメンの専門ショッピングサイトへの出店

宅麺.com

“以前から販売している”ような冷凍ラーメンも販売していますが、1品が1,000円もするような高価格帯の商品が販売されていることがわかります。お店で食べる料金とほぼ変わらない料金です。その価格帯で多くの商品が販売されているということは購入者が多くいるということです。

冷凍食品のメリットは「手軽さ」「保存」などですが、そのような要因だけでは高価格帯の商品を売るのは難しいです。コロナ禍の影響で「おいしいものを食べたい」「外食気分を味わいたい」のような需要が生まれ高価格帯でも売れるようになり、多くのラーメン店が参入したと考えられます。

冷凍ラーメンの自動販売機

最近目にするようになったのが、冷凍ラーメンの自動販売機です。具材は冷凍しておらず麺とスープのみのものも多いですが、近所の自動販売機で手軽に冷凍ラーメンを購入することができ、お店の味を自宅で楽しめるのです。その中でも株式会社丸山製麺が展開しているヌードルツアーズは、全国で50台以上展開しています。

ヌードルツアーズ ホームページより

【自動販売機で売るメリット】

・人件費をかけることなく24時間販売することができる
・場所の制約が少ない(大きな敷地が不要)
・店舗での販売の補完的役割を担う
・フードロスの削減

まとめ”消費者の意識行動パターンの変化に合わせて販売チャネルが変化している”

コロナ禍によるユーザーの価値観の変化によって消費行動が変わり、おうち時間を少しでも快適なものにしたいという欲求が生まれ、店舗で食べるときと同じような価格帯でもユーザーが購入するようになりました。大前提として冷凍ラーメンがお店の味を再現しているという条件があります。

こうして新たな販売チャネルが生まれましたが、新たな収入源となることや非出店エリアに住んでいる人たちにも供給することができるなどのメリットも多いため、コロナ収束後でも継続すると考えられます。

ラーメン以外でも、冷凍食品では注目されています。日経トレンディ(2021年12月号)の「2022年ヒット予測」では、冷凍食品専門スーパーが第2位にランキングされました。また、ローソンでは冷凍の刺身が販売されるようになりました。

今回取り上げた冷凍ラーメンは消費者の意識や行動の変化に合わせて、販売チャネルが多様化した事例です。環境とともに消費者ニーズも変わり、それに対してマーケティング戦略を練り、対応する。どの時代でもマーケティングの基本的な考え方は普遍的であると改めて感じさせられました。

(digmar編集部)