コロナで変わった「ゆとり時間」
~今こそ自宅で資産形成?~
三井住友信託銀行株式会社が設置している「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」(所長:丸岡 知夫)(以下、ミライ研)は、男女1万人(20歳~64歳)を対象とした独自アンケート調査を3月に実施しました。
この調査で、コロナ禍のもとでの「ゆとり時間」の変化と「資産形成への取り組み」についての特徴があらわれてきました。
【調査概要】
(1)調査名:「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2021年)
(2)調査対象:全国の20~64歳の男女 ただし関連業種(金融、調査、マスコミ、広告)従事者を除く
(3)調査方法:WEBアンケート調査
(4)調査時期:2021年3月
(5)サンプル数:10,920サンプル
■「ゆとり時間」と「会社時間」
日本においては、今、国民全体での感染拡大防止策への取り組みや、ワクチンの積極的な接種など、コロナ禍を乗り越えていくため行動が続けられています。
中でも、感染防止策の一環としてのテレワーク、リモート授業の導入・活用や外出自粛などは、自分のためにつかう時間(本稿では「ゆとり時間」)の増加という形で、私たちの生活に大きな変化をもたらしたと言われています。
内閣府が行った調査(2021年4~5月実施)によると、新型コロナの感染拡大前(2019年12月)と比較して、労働時間が「増加した」人が12.7%、「減少した」人が33.4%、「あまり変わらない」人が53.9%となっており、3人に1人が労働時間(いわゆる「会社時間」)が減ったという意識を持っていることがわかりました。
こうした「会社時間」の減少で、暮らしの中の「ゆとり時間」はどのように変化したでしょうか。
ミライ研が今回実施した1万人アンケート調査において、「コロナ禍の前と比べて、時間的なゆとりがどう変化したか」を尋ねたところ、時間的なゆとりが「増加した」人が2割強(22.1%)、「減少した」人が1割弱(7.1%)、「変わらない」人が7割(70.7%)という結果になりました。【図表1】
【図表1】コロナ禍による時間的なゆとりの変化(1日あたり) (n=10,920)
<出所:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2021年)>
■「ゆとり時間」が生んだ資産形成意識の高まり
では、コロナ禍のもとで生じた「ゆとり時間」は、資産形成に対する意識や取り組みにどのように結びついているのでしょうか。
アンケート調査で、「コロナ禍の前と比べて、時間的なゆとりが増えた」と回答した方に対し、「時間的なゆとりが増えたことで、資産形成について考える機会(時間)は、どの程度変わりましたか」と追加で尋ねたところ、「資産形成について考える機会(時間)が増加」という回答が約4割に上りました【図表2】。
「コロナ禍でゆとり時間が増えた」層(全体の2割)と「増えた時間で資産形成について考えた」層(増えたうちの4割)を掛け合わせた「全体の約1割」が、コロナ禍により資産形成意識が高まったと考えられます。
【図表2】増えたゆとり時間で資産形成について考える機会(時間)が変化したか (n=2,423)
<出所:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2021年)>
■意識の高まりはアクションへ
実際の資産形成に向けたアクションについてはどうだったでしょうか。
アンケート調査の結果によると、コロナ禍をきっかけに3人に1人以上が節約やポイ活(ポイント・マイルの活用)といった家計面の工夫・努力を始め、6人に1人が預貯金や投信購入といった資産形成を行い、12人に1人がNISAやiDeCoなどの優遇制度の利用を開始していました。
そして、こうしたアクションを起こした人の比率は、「時間的なゆとりが増えた人」や「資産形成について考える機会が増えた人」においては一層高くなっていました。
アンケートでは資産形成額についても調査しており、1年間の資産形成額(平均)は約112万円、コロナ禍前と比べて年間資産形成額が「増えた」人は12.4%、「減った」人は25.1%、「変わらない」人は62.6%という結果でした。
現在は、時間的なゆとりの増加や資産形成意識の高まりによって、資産形成に向けたアクションが活発化し、「資産形成の種まき」が進行している段階にあるといえるでしょう。今後は、年間資産形成額の増加という実も伴った「資産形成の加速」を期待したいところです。
(『三井住友トラスト・資産のミライ研究所』 調べ)