MRSメニューセンサスで見るメニューの変化 「炊き込みごはん」

皆さんは、炊き込みご飯はお好きでしょうか。今は便利な調味料がたくさんあり気軽に炊き込みご飯が作れますが、むかしは、そうではなかったかもしれません。今回は、昭和の炊き込みご飯と令和の炊き込みご飯を比較して、その特徴を分析してみます。

まずは、最近調査を行った令和2年冬の「40代の主婦がいる世帯の夕食」に登場した各家庭の炊き込みご飯の材料を見てみましょう。

※材料数が多い順に掲載

次に、昭和54年冬の「40代の主婦がいる世帯の夕食」に登場した炊き込みご飯を同様に見てみましょう。

※材料数が多い順に掲載

昭和の炊き込みご飯は、令和のそれとどう違う?

まず、昭和には、炊き込みご飯の登場回数が多く、使用材料数も多かったことが一目瞭然です。

調味料は?

令和にはほぼ登場しない「砂糖」や「食塩」が、昭和の炊き込みご飯には登場していました。同様に「日本酒」や「みりん」の使用も多かったようです。令和では「白だし」や「麺そば用液体調味料」が登場していますが、昭和では「しょうゆ」が、炊き込みご飯には欠かせない調味料でした。

具は?

令和の炊き込みご飯には登場していない「しいたけ」が、昭和の炊き込みご飯の具の定番でした。また、令和には見られない「鶏肉」や「魚」、「ごぼう」がよく登場していました。令和でもそこそこ登場している「にんじん」は昭和にはもっとよく登場していました。令和ではほとんど見られない「海苔」や「こんにゃく」が、昭和には使われていました。

令和でも昭和でも変わらないのは、「油揚げ」がよく登場している点です。 昭和の定番具材の「しいたけ」の代わりに、令和では「舞茸」や「しめじ」が登場しています。具として「缶詰」や「レトルト」や「冷食」が見られるのが令和の特徴だといえます。

以上から解釈

複合調味料やレトルトなどで味付けをするのが当たり前になっている令和から見ると、昭和では「砂糖」「塩」「しょうゆ」「酒」「みりん」などがしっかり使われていたことが確認できます。
昭和の炊き込みご飯は、具の種類も豊富で、鶏肉など動物性の食材を具として入れることが多かったようです。野菜の種類も多いことから、昭和では、炊き込みご飯は「ごちそう」だった、ということがわかります。令和の炊き込みご飯は、レトルトの内容はわかりませんが、少しの野菜を中心にあっさりとした具で作られており、ごちそうという面構えではありません。もしかすると、現在では、炊き込みご飯が白いご飯のバラエティ的存在で、他の惣菜が同時に出るのに対し、昭和では「炊き込みご飯」と「汁物」で夕食が完結していたかもしれません。

「油揚げ」の使用が昭和から令和まで脈々と受け継がれていたのは驚きです。炊き込みご飯の味を決める調味料の役割を果たし、その認識が浸透しているのかもしれません。
もどす、切るという手間がかかる「しいたけ」に対し、より簡便に使えるキノコである「舞茸」や「しめじ」が登場しているのは、生産者や流通のマーケティング努力によるものだと想像できます。

今や、家庭での炊き込みご飯は、昭和の定番具材から解放されています。「油揚げ」のようにメニューと結びついた具材はありますが、白いご飯のバラエティとしての炊き込みご飯は、少ない具材の組み合わせで多様に発展しそうです。
「しょうゆ」の使用頻度が少なくなっていることを考えると、今後はしょうゆ味でない炊き込みご飯も増えていくことが予想されます。調味料を見ると、もしかすると、味も色も徐々に薄くなっているのかもしれないという仮説も立ちます。
だしの役割を兼ねる油揚げ(ベーコンなどもそうか)などの具材と組み合わせの良い野菜を考え、あっさりとした仕上がりが好まれるようになるかもしれません。

一方で、家庭での炊き込みご飯が、ごちそうご飯でなくなると、定番具材がしっかり入った「昭和のごちそう炊き込みご飯」には、ご飯単体で完結するおにぎりや、たまには懐かしい定番の炊き込みご飯が食べたい、ということで、外食、中食メニューとしての商機があるのではないでしょうか。

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(digmar編集部)