ふるさと納税の仕組みと5つのメリットや現状を解説

ふるさと納税は、好きな自治体に寄附して税控除や還付を受け、お礼として返礼品を受け取れる仕組みです。利用者にメリットが多い仕組みですが、1年中寄附できるなど、あまり知られていないメリットもあります。ふるさと納税の良さを最大限活用するには、使い方を理解しておくことが欠かせません。本記事では、ふるさと納税の仕組みや魅力、人気の返礼品について紹介します。

ふるさと納税の仕組みとは

ふるさと納税とは、自分が応援したい自治体に寄附をする仕組みです。寄附をすると、実質負担額2,000円で所得税や住民税などの税金が控除されたり、還付されたりといったメリットがあります。さらに、寄附をした自治体から特産品などの返礼品を受け取れる点も魅力です。

また、ふるさと納税は、1年中申し込むことができます。ふるさと納税では、1月1日から12月31日の1年間に寄附した分が、翌年の控除・還付対象です。寄附を証明するための申請手続きは時期が決まっていますが、寄附そのものはいつでも行えるため、1年中寄附して返礼品を楽しむことができます。おうち時間が増えている中で、普段ならあまり購入しないような高級食材を得て、巣ごもり生活を充実させている方もいらっしゃるようです。

納税者がふるさと納税を行うメリット

ふるさと納税を利用すると、さまざまなメリットがあります。ここでは5つのポイントを紹介します。

税金が控除・還付される(ワンストップ特例制度)

所得税と住民税が還付される点もメリットでしょう。ふるさと納税では、寄附金額の2,000円を超える金額分が、所得税と住民税から控除・還付されます。

適用下限額の2,000円は控除外となり、残りが控除額となります。所得税からの控除額は「(ふるさと納税額 -2,000円)×所得税率」、住民税からの控除額(基本分)は「(ふるさと納税額-2,000円)×住民税率(10%)」、住民税からの控除額(特例分)は住民税所得割額の2割を限度とした残り全額になります。
(総務省『ふるさと納税ポータルサイト』より)

つまり、本来支払わなければならない所得税と住民税の金額を、寄附する形で支払うことができる制度なのです。例えば1万円を寄附した場合、実質的に負担するのは2,000円で、所得税・住民税から8,000円分が控除されます。

また、控除を受けるためには、自分で確定申告をしなくても寄附金の控除を受けることができる「ワンストップ特例制度」があります。「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入し、寄附した自治体に送れるだけで受け付け完了となります。申請書は申し込みをした自治体から送付される場合もありますし、自治体のホームページや各ふるさと納税のポータルサイトから入手することも可能です。

返礼品がもらえる

ふるさと納税では、各自治体が寄附を受けたお礼として、さまざまな返礼品を提供しています。例えば、北海道のように食材が豊かな地域では海鮮食品を、伝統工芸の盛んな岩手県では南部鉄瓶を用意するなど、返礼品の種類はさまざまです。(後ほど、返礼品の一部をご紹介します。)

1年中申し込みができる

ふるさと納税を行う際は、1年中申し込みができる点も知っておくと便利です。先述の通り、ふるさと納税では1月から12月までの1年間に寄附した分が、翌年に支払う所得税・住民税から控除・還付されます。控除・還付を受けるためには、翌年の期限までに「確定申告」または前述した「ワンストップ特例申請」を行うことで、寄附金額を証明すれば良いことになっています。

つまり、控除・還付を受けるための申請期限は決まっているものの、ふるさと納税そのものは1月に行っても12月に行っても変わりありません。ふるさと納税の申し込みは年末に集中する傾向がありますが、実際は1年中この制度を利用して、寄附先を選んだり返礼品を楽しんだりすることができるのです。

使い道を選ぶことができる

寄附金の使い道を選べる点も魅力です。普通、所得税や住民税を納めても、それがどのような目的に使われるのか選ぶことはできません。

しかし、ふるさと納税は、2020年度時点で95%以上の自治体が使途を決めており(総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和2年度実施)」より)、中には具体的な事業を選択できるケースもあります。「まちづくり・市民活動」や「子ども・子育て」など、興味のある分野に寄附をすることも可能です。

寄附先を選ぶことができる

寄附する自治体を選べる点もメリットの1つです。そもそも、ふるさと納税は進学や就職で人が都市部に流入して税収が都会に偏っている中、納税者が自分の生まれ育ったふるさとなどに自由に納税できる制度を作るというコンセプトで始まりました。

ふるさと納税では、自分の生まれ育った故郷の他、お世話になった地域や応援したい自治体に寄附ができる点が大きな特徴です。

自治体がふるさと納税を募集する目的

納税者にとってメリットの大きいふるさと納税について、ここでは自治体側の目的を説明します。

収入を補える

1つ目が、自治体の収入を補えるという点です。自治体は住民や企業からの税収や国からの地方交付税などが主な財源ですが、慢性的な財政不足に悩まされている自治体も少なくありません。

そこで、ふるさと納税では収入を下支えする役割が期待されています。例えば、財政難が理由で、医療介護など優先度の高い分野にしか予算を割けないような場合でも、自然災害による復旧・復興や子育て支援などの事業を訴求し、その分野への寄附を募ることも可能です。

地元の産業を活性化できる

2つ目は、地元の産業の活性化です。ふるさと納税では、寄附のお礼として食品や工芸品、旅行券、雑貨・日用品などが多く選ばれています。こういった返礼品に地元の品物を選べば、リピートの可能性もあり、地元企業の売上や雇用に貢献する効果も期待できるのです。

地名度が高まる

3つ目は、知名度アップです。ふるさと納税をきっかけとして注目度が高まることで、寄附やその他の支援が増えていけば、それがさらに評判を呼び寄附・支援の増加という好循環になる可能性もあります。将来的には、観光客や移住者の増加につながる期待が持てます。

ふるさと納税の現状

現在、ふるさと納税はどのような状況なのでしょうか。ここでは利用件数と返礼品の現状を紹介します。

利用件数は増加傾向

ふるさと納税の利用は伸びており、自治体の受入額と受入件数ともに増加傾向にあります。2019年度のふるさと納税の受入額は4,875億円で、これは5年前の2014年度が388億円だったのに対して10倍以上に拡大しました。(総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和2年度実施)」より)

同じ時期に、受入件数も191万件から2,333万件に拡大しており、こちらも10倍以上に伸びている状況です。なお、件数の伸び率よりも受入額の伸び率の方が大きいため、寄附1件当たりの金額が大きくなっていることが分かります。

人気の自治体は返礼品に魅力

ふるさと納税の大きな魅力の1つが返礼品ですが、ふるさと納税で多くの寄附を集める自治体は食品や商品券などさまざまな物を用意しています。

出典:紋別市「ふるさと納税特設サイト」(https://furusato-mombetsu.jp/)より

ふるさと納税サイト「さとふる」で扱っている返礼品のうち、2020年で最も人気があったのは北海道紋別市のホタテでした。北海道には紋別市の他にも根室市や白糠町など漁業が盛んな地域が多く、カニやホタテなどの海鮮食品を提供し、多くの寄附を集めている自治体もあります。

出典:ふるさとチョイス「お礼の品詳細」(https://www.furusato-tax.jp/product/detail/19201/4841126)

ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」(https://www.furusato-tax.jp/)で、2021年3月時点の月間ランキングの中で、1位は根室市のホタテでした。続いて2位が岩手県花巻市の牛タンで、3位には山梨県甲州市のシャインマスカットがランクインしています。

出典:泉佐野市ふるさと納税特設サイト「さのちょく」(https://furusato-izumisano.jp/)

ふるさと納税サイト「ふるなび」(https://furunavi.jp/)で、2021年3月時点の月間ランキング1位は大阪府泉佐野市の牛肉でした。かつて返礼品としてAmazonギフト券を提供することで話題となっており、2017年から2019年まで寄附金額は全国1位でした。返礼品として商品券が認められなくなってからは、特設サイト「さのちょく」にて熟成牛やタオルを紹介するなど、さまざまな返礼品をアピールしています。

今からふるさと納税に申し込んでも、ここで紹介したような数々の魅力的な返礼品を受け取ることができるのです。
各サイトでは返礼品の人気ランキングをまとめていますので、興味がある方はぜひご覧ください。

ふるさと納税の今後の展望

利用件数も金額も増え、自治体の工夫も多様化しているふるさと納税ですが、今後はどのような展開が期待されるのでしょうか。ここでは3つのポイントを紹介します。

地元産業のマーケティング手段としての活用

ふるさと納税は、地元の特産品をアピールする絶好の場です。地元産業と自治体が協力して、全国の利用者に地元産品や自治体の魅力を訴求するための、マーケティング手段としての活用が期待されます。

継続的に関係を維持する仕組み作り

ふるさと納税は、利用者にとって自分のふるさとや応援したい自治体との接点の1つです。寄附して返礼品を受け取って終わりではなく、その後も利用者と自治体が交流することで、継続的に関係を維持することが期待されます。

事業支援や移住交流の促進

総務省は、ふるさと納税を通じた起業家支援や移住交流を促進するプロジェクトを立ち上げており、まちづくりの起爆剤としての役割になる可能性があります。

まとめ

ふるさと納税は、自分が選ぶ自治体に寄附をして税控除・還付が受けられ、さらに返礼品まで受け取れる、メリットの大きな仕組みです。各自治体とも返礼品に工夫を凝らしており、寄附金の使い道も指定できるなどの魅力もあり、件数・寄附金額ともに増えています。

さらに、年末だけでなく1年を通して申し込みが可能です。興味がある方は、今すぐに利用してみてはいかがでしょうか。

(digmar編集部)