クラブハウスが人気の理由と今後の展開をマーケティング視点で解説(後編)

本編はクラブハウスについて、後編になります。前編では使い方を中心に解説しました。(前編はこちら)本編では、クラブハウスがなぜ広がっているか、また今後はどうなっていくかなどを中心に解説します。

クラブハウスが人気を集める4つの理由

クラブハウスは、なぜここまで人気のアプリとして注目されているのでしょうか。ここでは考えられる4つの理由を紹介します。

招待制の特別感が感じられる

まず、招待制なので誰でも参加できるわけではないという仕組みが、ユーザーに特別感を与えていると言えそうです。

クラブハウスでは1人のユーザーが招待できるのは2人までに制限されています。招待する側からすれば、「数ある友人の中で、特にこの人と楽しみたい」と思える人物を選ぶでしょう。

一方、参加しているユーザーは、「一緒に楽しめる人として認められた」という証明ができます。あえて招待された人だけが利用できるようにすることで、クラブハウスの魅力を高めているのです。

招待制ならではの安心感がある

招待制なので安心して利用できるという点も使い続けたくなる理由の1つでしょう。

ユーザーは2人しか招待できないため、悪意ある人物が参加しにくい仕組みになっています。さらに、ユーザーが問題を起こした場合、招待したユーザーも連帯責任としてアカウントを停止されることがあるのです。このことで、モラルやマナーが保たれやすくなっています。

トークルームに気軽に参加できる

トークルームに気軽に参加できることも魅力の1つです。

その時開設されているトークルームを探して、興味のあるものが見つかれば、入室ボタンをタップするだけで参加できます。スピーカーの話をただ聞いたり、あるいは申請して会話に加わるのも自由です。近年増えているオンラインセミナー(ウェビナー)とは異なり、予約する手間もありません。

有益な情報収集の手段になる

情報収集の手段として活用できる点もメリットです。

クラブハウスは、芸能人や音楽アーティスト、スポーツ選手などさまざまな分野の人物がスピーカーとして音声配信や会話を行っていることもあります。大きなメディアではあまりできないような深い話を聞けるのに加えて、普段会話できない著名人と気軽に交流できる点はクラブハウスの特徴です。

クラブハウスの今後の展開

ユーザーの獲得という点ではここまで成功を収めているクラブハウスですが、アプリの利用は無料で広告も配信されておらず、2021年1月にチップ(投げ銭)、チケット、サブスクリプション(定期購買)などのマネタイズの仕組みを試験的に導入するというアナウンスがあったばかりです。ここでは、今後クラブハウスにどのような動きがあるのか、予想される展開を紹介します。

音声エンターテインメントの拡充

1つ目の展開は、音声エンターテインメントの拡充です。

現在、YouTubeやInstagramなど視覚で楽しむサービスはレッドオーシャンで、SpotifyやApple Musicのように音楽に特化したサービス同士でも激しい競争が行われています。しかし、クラブハウスのようにスピーカーの話や参加者同士の会話を気軽に音声だけで、しかもリアルタイムで楽しめるサービスはまだ普及していません。そこでビジネス・趣味などさまざまなテーマの音声コンテンツを充実させれば、独自市場の開拓余地があります。

また、近年はスマートスピーカーや、AirPodsなどのbluetoothイヤホンが普及しており、クラブハウスのような「耳ビジネス」には追い風です。

音声コミュニティの提供

2つ目は、音声コミュニティの提供です。

先述の通り、クラブハウスの運営側はチップ(投げ銭)やチケットを導入することを表明しています。「聞くこともできるし会話に参加もできる」という特性を生かして、例えば対セレブや対専門家など、普段は接することができないパーソナリティに気軽にアクセスできる機会を提供することでマネタイズする展開は十分に考えられます。

現在、採用イベントやウェビナーなど、企業が活用しているケースも見られ始めています。今後、タレントや企業がファンコミュニティを作りやすい環境を整備して、クリエイターとユーザーを囲い込む「音声プラットフォーム」への成長を狙う可能性もあります。

まとめ

クラブハウスはユーザー数が急速に伸び、評価額が1,000億円を超えるなど広く関心を集めています。招待制で特別感と安心感を生み出していることと、音声SNSでサービスの拡張性が高いということは、ユーザーを囲い込む上での強みになると考えられます。

2021年1月に運営側はマネタイズの施策を発表し、それによってさらに新しい活用方法が生まれる可能性があります。今後クラブハウスがどのようにビジネスを展開していくのかが注目されます。

(digmar編集部)